急に強い腰の痛みに襲われる、「ぎっくり腰」と呼ばれる症状があります。重い物を持ち上げたときに発症する人がいる一方、立ち上がろうとしたときに発症してしまう人もいるようです。
そもそも、なぜぎっくり腰になるのでしょうか。もし、ぎっくり腰とみられる症状が出た場合、どのように対処したらよいのでしょうか。ぎっくり腰の原因や対処法、予防策について、なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック(京都市右京区)院長で整形外科医の樋口直彦さんが解説します。
■寒い時期は発症リスクが高くなる
「ぎっくり腰」は、急に発生する強い腰の痛みを指す通称で、正式な病名ではありません。医学的には「急性腰痛症」と呼ばれ、腰部の筋肉や靱帯(じんたい)に急激な負担がかかることが原因で、炎症や筋肉のけいれんが生じます。
ぎっくり腰は、特に日常的な動作や運動中に起こりやすく、次の3つの行為が引き金となって発症することが多いです。
・重い物を無理に持ち上げる
・急に体をひねる
・長時間同じ姿勢を続けていた後に体を動かす
また、寒い時期は筋肉が硬くなりやすいため、発症リスクが高くなります。冷えによって血流が悪くなると、筋肉や関節が柔軟性を失い、急な負担に対して抵抗力が低下するからです。
ぎっくり腰の症状として、次のような特徴があります。
・突然、激しい腰の痛みに襲われる
・動けなくなる、あるいは立ち上がれなくなる
・腰の動きに制限がかかる
・日常動作が困難になる
ぎっくり腰は急性の症状であり、慢性的な腰痛とは異なります。慢性腰痛は、長期間にわたる無理な姿勢や動作が原因で徐々に悪化していくもので、ぎっくり腰のような突然の痛みではなく、継続的な違和感や鈍痛を伴います。
また、椎間板ヘルニアの場合は、椎間板が神経を圧迫することが主な原因で、腰痛だけでなく足のしびれや痛みも引き起こすことがあります。
■患部を冷やすのが効果的
ぎっくり腰を発症した場合、まずは無理に動かさないことが重要です。安静にし、できるだけ体を横向きにしたり、膝を軽く曲げたりするなど、痛みが少ない姿勢を取りましょう。発症直後は患部を冷やすことが効果的で、冷湿布やアイスパックを使用して炎症を抑えてください。
周囲に人がいる場合は、無理に体を動かさずにサポートしてもらい、少しでも楽な体勢にしてもらうのが良いです。
一方で、周囲に誰もいない場合は、まず自分が楽に感じる姿勢を見つけ、無理に動かないように心掛けましょう。
ぎっくり腰の治療は、まず痛みの管理を中心に行います。痛みが激しい場合は、鎮痛剤や消炎剤を使用するのが一般的です。
また、理学療法やストレッチを行うことで回復を早めることができます。適切な治療を受けなかった場合、ぎっくり腰が慢性腰痛に移行する可能性があるほか、日常生活に影響を与えるリスクがあるため、早めの対応が重要です。
■どうやって予防する?
ぎっくり腰を予防するためには、腰に負担をかけない生活習慣を身に付けることが不可欠です。例えば、重い物を持つ際は、膝を曲げて腰に負担をかけないように持ち上げてください。
また、日常的な運動やストレッチを通じて、腰部の筋肉の柔軟性を維持することがぎっくり腰の予防につながります。
特にデスクワークや長時間の立ち仕事をしている人は、定期的にストレッチを行い、腰への負担を減らすことが大切です。適切な姿勢を保ち、日々の筋力トレーニングを続けることで、ぎっくり腰の発症リスクを大幅に低減することができます。
ぎっくり腰は日常生活の中で年齢を問わず、誰でも発症する可能性がありますが、適切な対策を講じることで予防できます。ぎっくり腰にならないか不安な場合は、専門医に相談することをお勧めします。
オトナンサー編集部