ペーパーレス化が進む現代。印鑑に触れる機会が減りましたが、部屋の賃貸で使う重要な書類などで印鑑を押したり、ビジネスの場で電子印鑑を使用する場面もあったたりすると思います。そこで、よく見聞きし、印鑑の基本でもある「押印」と「捺印」がどのように異なるのか、日ごろから法的な書類などを扱う佐藤みのり法律事務所の弁護士・佐藤みのりさんに解説してもらいました。
■「捺印」は署名捺印、「押印」は記名押印の略語
Q.まず、「捺印」について教えてください。
佐藤さん「『捺印』とは、一般的な日本語の意味としては、『印を押すこと』を意味します。これは『押印』と同義であり、『捺印』と『押印』は区別せずに、同じ意味として使われています。デジタル大辞泉(小学館)によると、当用漢字の制定などにより、『捺印』に代わり、『押印』が用いられるようになったと説明されています。
この他、『捺印』は『署名捺印』の略語であり、自筆での署名に加えて印を押す行為で
あるとの見解もあるようです」
Q.次に、「押印」について教えてください。
佐藤さん「先述したように、『押印』は『捺印』と同義であり、『印を押すこと』を意味します。民事訴訟法228条4項は、『私文書は、本人またはその代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定する』と定めており、ここでいう『押印』とは、『本人の意思に基づき押された印』と解釈されています。
この他、『押印』は『記名押印』の略語であり、自筆以外の方法で、あらかじめ名前が
記載されている書面に印を押す行為であるとの見解もあるようです」
Q.印鑑に関して「実印」と「認印」という言葉も見聞きします。「実印」と「認印」の違いについても教えてもらえますか。
佐藤さん「『実印』とは、慣習上、重要な取引などを行うにあたり使用する印鑑であり、住民登録がある役所にあらかじめ届け出て登録するものです。実印は1人1個に限られ、必要に応じて、印鑑証明書の交付を受けられます。実印として登録できる印鑑には一定のルールがあり、例えば、ゴム印、その他の印鑑で変形しやすい物は認められていません。登録の際は、あらかじめ自治体のホームページなどで確認するようにしましょう。
『認印』とは、個人の『実印』以外の印鑑です。1人で何個も持つことができ、重要な取引以外で使われる傾向があります」
オトナンサー編集部