友人や職場の同僚などから私生活や仕事に関する悩みを相談されたときに、「それは考えすぎだよ」と言ったことはありませんか。相手を励ます上で有効に思えるかもしれませんが、SNS上では「『考えすぎ』と言われるとしんどい」「『考えすぎ』という言葉にモヤモヤして、さらに考えることが増える」という内容の声が上がっています。
「考えすぎだよ」と言うことで、相手の心理にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。他人から相談を持ちかけられたときの適切な対応方法について、メンタルヘルスに詳しい、産業医の野崎卓朗(崎は正しくはたつざき)さんに聞きました。
■相手が「相談を受け止めてもらえなかった」と感じることも
Q.友人や職場の同僚などから私生活や仕事のことで相談されたときに「それは考えすぎだよ」と言ってしまうことがあります。この場合、相手の心理にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。
野崎さん「仲の良い間柄でも、急に相談されるとびっくりして思わず、『それは考えすぎだよ』と言ってしまうことは少なくないですね。後になって、相手はどう思ったかなと不安になることもあると思います。
相手の心理にどのような影響があるのかは、あなたと相手との関係性にもよりますが、相手があなたに何を期待して相談を持ちかけたかによって変わってきます。
相手があなたにぜひ話を聞いてほしい、一緒に解決してほしいと思って相談をしたときに『考えすぎだよ』とアドバイスした場合、相手は自分の相談を受け止めてもらえなかったと感じ、心理的に距離が離れてしまう可能性があります。
一方、相談してきた相手が『ただ話がしたかった』『悩んでいることから一旦離れたい』と思っているときにあなたが『考えすぎだよ』と言うことで、相手はほっとした気持ちになるかもしれません。
もし、相手に思わず『それは考えすぎだよ』と言ってしまったときは、『でも、もし一緒に考えさせてくれるなら一緒に考えるよ』などと付け加えると、相手があなたに大きな期待を抱いていたとしても、心理的な距離を保つことができると思います」
Q.他人から相談されたときにやってはいけない行為はあるのでしょうか。
野崎さん「相手があなたに相談を持ちかけてくるということは、あなたを信頼して、何かしらの期待をもって相談してくれているはずです。相談をされたときに避けた方がよいのは、相手を理解する前に、自分の話をしてしまうことです。
先述の『考えすぎだよ』もそうですが、相手の話を最後まで聞かずに自分の意見を述べてしまったり、『私(僕)は忙しい』などと自分の都合を伝えたり、自分が話したい話をしてしまったりすると、相手の期待に沿うことができず、相手の気持ちが離れていってしまいます。
あなたがどんなに相手のことを考えていたとしても、相手の話を理解せず、自分本位の話をすれば、相手の期待に応えていないため、相手をがっかりさせてしまいます。友人や同僚などがあなたに相談をした場合は、まずは相手の期待を確認して、それを理解した上で、あなたなりの意見や考えをお話しするとよいでしょう」
Q.もし友人や知人などから相談されたときに、相手がひどく落ち込んでいたり、様子がおかしかったりした場合、「心療内科や精神科に行ったらどうかな?」などと受診を促しても問題はないのでしょうか。それとも、避けた方がよいのでしょうか。
野崎さん「大切な友人や知人のことが心配で、医療機関の受診を勧めるのは全く問題ありません。ただ、精神的に調子が悪いときは、自分の状態を適切に把握できていないことがあります。
そこで、『ため息ばかりついている』『普段しないようなミスを繰り返している』など、具体的にどのような所が落ち込んでいるように見えたり、様子がおかしいように見えたりするのかを具体的に伝えた上で、医療機関や専門家に相談するよう、伝えるとよいでしょう」
オトナンサー編集部