1日3食取るのが望ましいといわれていますが、仕事が忙しくてつい朝食や昼食を欠かしてしまうことはありませんか。この場合、太りやすくなる可能性はあるのでしょうか。健康的に体重を維持する方法について、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック(大阪市北区)外科部長で、消化器外科専門医の所為然さんが解説します。
■食事回数が少ない人は太りやすい
「1日1食」や「1日2食」の生活を送る人にとって気になるのが、体重への影響です。結論を言うと、食事回数が少ない人は太りやすい傾向にあります。これは私たちの体が持つ生存のための賢い仕組みによるものです。
食事の間隔が長くなると、体は「飢餓モード」と呼ばれる状態に入ります。これは、次にいつ食事が取れるか分からない状況に備えて、基礎代謝を下げ、エネルギーを温存しようとする反応です。
その結果、次の食事で摂取した栄養が、脂肪として蓄積されやすくなってしまいます。また、長時間の空腹は過食を招きやすく、1回の食事量が増えることで血糖値が急激に上昇するため、脂肪の蓄積を促進する要因となります。
■一定時間断食する方法も
一方、健康管理の方法として、意図的に一定時間、断食をする「インターミッテントファスティング」と呼ばれるものがあります。この方法については、科学的な根拠に基づく効果が報告されています。
代表的な方法である16時間絶食では、夕食から翌日の朝食まで16時間の間隔を設けます。例えば、夕食を午後6時に済ませ、翌日の朝食を10時に取る、というような形です。
この方法が注目される理由は、体内での代謝の変化にあります。食後8~12時間が経過すると、肝臓や筋肉に貯蔵されていたグリコーゲン(糖の貯蔵形態)が減少し始めます。すると体は代わりのエネルギー源として脂肪を利用し始め、脂肪がケトン体に変換されます。
また、空腹時には成長ホルモンの分泌が促進され、脂肪分解と筋肉量の維持に寄与します。さらに、細胞の自己分解、再生過程(オートファジー)も活性化されます。
では、多忙な現代社会で、どのように食生活を整えればよいのでしょうか。
まず重要なのは、自分の生活リズムに無理なく取り入れられる方法を選ぶことです。1日3食が難しい場合や、インターミッテントファスティングを試してみたい場合でも、次のポイントを意識することで、健康的な食生活を維持することができます。
(1)食事の質を重視する
食事回数が少ない場合こそ、1回当たりの食事の質が重要になります。たんぱく質が豊富な肉類、魚類、卵、大豆製品は、腹持ちが良く、筋肉量の維持に欠かせません。野菜や全粒穀物などの食物繊維が豊富な食品は、満腹感を持続させ、血糖値の急激な上昇を防ぎます。また、アボカドやナッツ類、オリーブオイルなどの良質な脂質も、持続的なエネルギー供給源として重要です。
(2)食事のタイミングを意識する
体が活動的な時間帯に合わせて食事を取ることで、より効率的にエネルギーを利用することができます。特に夜遅い食事は避け、少なくとも就寝の2~3時間前からは食事をしないのをお勧めします。インターミッテントファスティングを行う場合は、自分の生活リズムに合わせて絶食時間を設定しましょう。
(3)水分補給を忘れない
食事の回数に関わらず、適切な水分補給は非常に重要です。特に食事の間隔が長くなる場合や、インターミッテントファスティングを実施する場合は、小まめな水分補給を心掛けましょう。
なお次のケースに該当する場合は、食事回数の制限やインターミッテントファスティングを始める前に、必ず医師に相談してください。
・糖尿病やその他の持病がある場合
・妊娠中や授乳中の場合
・成長期の若年者
・高齢者
・過去に摂食障害の既往がある場合
私たちの生活スタイルが多様化する中で、従来の食事スタイルにこだわる必要はありません。大切なのは、自分の生活リズムに合った、無理のない食生活を見つけることです。食事の回数や時間帯を工夫することで、健康的な体重管理は十分に可能です。
ただし、極端な食事制限は健康上のリスクを高める可能性があります。体調の変化に気付いた場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。また、新しい食事方法を始める際は、徐々に取り入れていくことが望ましいでしょう。
オトナンサー編集部