「体にいい」「栄養豊富」といわれている食材も、食べ過ぎてしまうと弊害を招きかねません。食べ過ぎることで、体への何らかの悪影響が懸念される食材について、管理栄養士の岸百合恵さんに注意点を教えていただきました。今回は、秋から冬にかけて旬を迎える果物「柿」です。
■「シブオール」と胃酸が反応
Q.そもそも「柿」とはどんな果物ですか。
岸さん「柿(甘柿)は100グラムあたり63キロカロリーです。柿1個の重さは約200グラムなので、1個あたりのカロリーは126キロカロリーです。
柿にはビタミンC、カリウム、β-カロテン、タンニン、食物繊維などが含まれており、特にビタミンCの含有量は果物の中でもトップクラスです。成人の1日あたりのビタミンC推奨摂取量は100ミリグラムですが、柿は可食部100グラムあたり70ミリグラムのビタミンCが含まれているので、柿1個で推奨量をクリアできることになります。また、オレンジ色の果肉には、優れた抗酸化作用のあるβ-カロテンと同じカロテノイドの一種『β-クリプトキサンチン』も多く含まれています。どちらも抗酸化成分で、ビタミンCの相乗効果で抗酸化力がアップします。
また、渋みのもとであるタンニンには、アルコールを分解する働きがあり、二日酔い予防によいとされています」
Q.柿を食べ過ぎると、健康への影響や弊害があるのは事実でしょうか。
岸さん「事実です。柿も含めて、果物は栄養価が高いものが多いですが、当然ながら適量を超えて食べ過ぎると中性脂肪を上昇させたり、カロリーオーバーを招いたりします。
また、柿の食べ過ぎによって『柿胃石(かきいせき)』が起こることがあります。これは柿に含まれるタンニンの一種『シブオール』と胃酸が反応することなどが原因で、胃の中に石ができる病気で、柿や干し柿を連日食べたり、大量に食べ過ぎたりすると起こることがあります。ただし、ごくまれであり、柿を食べた数ではなく、ぜん動運動が落ちているなど胃の機能面の問題も関わっているため、比較的高齢者に起こりやすい可能性があるといえます。
柿は8割以上が水分で、カリウムも多く含まれていることから、食べ過ぎると利尿作用が促進されて熱が放出され、体を冷やし過ぎてしまいます。寒くなるこれからの季節、食べすぎに注意する必要がある理由の一つです。
さらに、柿の渋みのもとであるタンニンは、鉄と結びつくと、体への鉄の吸収を抑えてしまいます。そのため、柿を食べ過ぎると『鉄欠乏性貧血』の原因となることもあります。なお、タンニンは柿だけでなく、コーヒーや紅茶にも含まれるので、普段から多く摂取している人は特に注意しましょう。
これらを踏まえ、成人の場合、1日あたり1〜2個、子どもや妊婦は1個が適量といえるでしょう。
果物は日本人に足りない栄養素を補ってくれるので、毎日摂取することをおすすめしますが、柿に限らず適量の範囲を超えて食べ過ぎれば弊害が出ることがあるので、食事全体のバランスを考慮することが大切です」
オトナンサー編集部