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【ケーキ店】売れ残りを、なぜ“安売り”しないのか? 物価高騰がもたらした新たな“販売戦略”とは

オトナンサー 2024年12月21日 7時10分

 夕方以降に百貨店のデパ地下や駅ナカなどにある総菜店に行くと、総菜が安売りされているのを見掛けることがあります。一方、ケーキ店では閉店前にケーキが売れ残っていても、安売りをしないケースが多く、不思議に思ったことはありませんか。

 なぜケーキ店は安売りをしないのでしょうか。近年の物価高騰の影響で、ケーキ店の経営にどのような影響が生じているのでしょうか。飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

■安売りでブランド価値が低下

Q.近年の物価高騰の影響で、ケーキ店の経営にどのような影響が生じているのでしょうか。

成田さん「一部のケーキ店では、材料費や人件費の高騰などの影響で製造数を減らしています。特に中小企業ではロスを減らすために製造数を減らし、フードロスのリスクを回避する傾向があるでしょう。

今年のクリスマスケーキの販売予約に関する調査データを見ると、物価高により自宅で過ごす家庭が増え、ケーキの予約数は増加しています。一方、ケーキの客単価は下がっており、ケーキ店も需要や利益率に応じて、慎重かつ柔軟に製造数を調整する傾向にあります。ただ、経営方針もさまざまなため、状況は企業ごとに異なるでしょう」

Q.ケーキ店の場合、閉店前になっても、売れ残っているケーキを安売りしないことが多いですが、なぜですか。

成田さん「閉店前に安売りをしていないケーキ店が多いように思いがちですが、個人経営など小規模なケーキ店の中には安売りをしている店もあります。一方、著名なパティシエがいるケーキ店や、ブランディングされた洋菓子専門店の多くは閉店前にケーキが残っていても、安売りはしません。安売りをすると値崩れが起きて、ブランド価値が下がるためです。

小規模なケーキ店でも値崩れを防ぎたい気持ちはありますが、どうしても、原材料費分くらいは売り上げないと経営の維持が困難なため、安売りするのです。

ただ、近年は物価高騰の影響で、ケーキ店におけるケーキの安売りの状況に変化が出ていますね。特に利益確保とフードロスのバランスを模索する動きが顕著になっています。

例えば、物価高騰を機に売れ残ったケーキの安売りをしなくなった店の場合、利益の優先やブランディングの構築などを重視するようになった一方、物価高騰を機に売れ残ったケーキの安売りを始めた店の場合は売上高の確保を重視するようになりました」

Q.製造したその日に売れ残ったケーキはどうなるのでしょうか。

成田さん「売れ残ったケーキを毎日廃棄する店もあれば、手直しして、翌日に販売する店もあります。賞味期限切れのケーキの多くは業者に依頼して廃棄処理します。中には、ケーキ店で働くスタッフや関係者に配る店もありますね」

Q.売れ残ったケーキを安売りせずに廃棄すると、利益はもちろん、材料費や人件費も全く回収できないと思います。それでも、安売りしない方がメリットがあるのでしょうか。

成田さん「ケーキは誕生日やクリスマスに食べたり、贈り物にしたりするなど特別感があり、多少、価格が高くても売れる商品です。売れ残った日に安売りすると、ケーキの特別感がなくなると同時に値崩れしてしまいます。また、客が安売りを狙って買いに来るようになれば、結果的に売り上げも落ち込んでいきます。

ケーキ店としては『ケーキは特別な食べ物なので、少々値段が高くても買う』という顧客イメージがよいのです」

Q.ケーキ店の中には12月25日の閉店前に、クリスマスケーキを安売りしている店を見たことがあります。なぜなのでしょうか。

成田さん「一般的にクリスマスケーキは12月25日まで、おいしく食べられるように製造されています。また、クリスマスが終わると、世の中は正月ムードに一気に切り替わるため、ケーキの需要が落ち込みます。仮に、スポンジなどを再利用して、別のケーキをつくり、再販売したとしても、なかなか消費期限までに売れにくいので安売りをするのだと考えられます」

Q.ちなみに、近年、売れ残ったケーキの安売りについて、ケーキ店からの相談件数は増えているのでしょうか。

成田さん「物価高による経営の難しさが増している影響で、売れ残ったケーキの安売りについての相談件数は、増加傾向にあるでしょう。当社を含む多くの飲食店コンサルティング会社に対し、値引き販売の相談はもちろん、安売りに代わる『冷凍ケーキの販売』や『セット売り販売』の相談なども増えているようですね」

オトナンサー編集部

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