健康維持のために必要不可欠である、さまざまな「栄養素」。どの栄養素にも適切な摂取量が定められており、不足時はもちろんのこと、過剰に摂取しても体に悪影響を及ぼすことが知られています。そんな身近な栄養素の摂取量について注意すべきことを、管理栄養士の岸百合恵さんに教えていただきました。今回は「ビタミンB6の過剰摂取」です。
■普段の食事で「過剰摂取」はほとんどないが…
ビタミンB6は、約100種類の酵素に対する「補酵素」としての役割を担っており、主に「タンパク質や脂質、炭水化物の代謝をサポートする」「脳の神経機能の維持を助ける」「赤血球に含まれる『ヘモグロビン』を形成する」「免疫機能の働きを正常に保つ」などといった働きをします。
ビタミンB6は、主に肉や魚介などの動物性食品に多く含まれますが、野菜やナッツ類などにも含まれているので、比較的摂取しやすいビタミンです。肉類ではレバーのほかに、鶏むね肉やヒレ肉など脂質の少ない赤身の肉、魚介ではカツオやマグロの赤身、サツマイモなどのイモ類、ブロッコリーやモロヘイヤなどの野菜類、バナナやかんきつ類の果物などに含まれます。
ただし、1食当たりの摂取量を考えると、摂取源としてはそこまで効率的でないものもあるため、1つの摂取源に頼らずバランスよく取ることが大切な栄養素です。
「日本人の食事摂取基準」(2020年版、厚生労働省)によると、ビタミンB6の1日摂取量は成人男性で1日あたり1.4ミリグラム、成人女性で1.1ミリグラムが推奨されています。妊娠中や授乳中では必要量が増すため、妊娠中では1日あたり+0.2ミリグラム、授乳中は+0.3ミリグラムを推奨しています。ビンチョウマグロの刺し身100グラムとバナナ1本(100グラム)で1.32ミリグラムとなり、ほぼクリアできる量です。
また、ビタミンB6の必要量はタンパク質1グラムあたり0.019ミリグラムとされ、タンパク質の摂取量によって変わるのが特徴です。これは、ビタミンB6の働きが主にタンパク質の代謝であるためです。肉や魚には、タンパク質に加えてビタミンB6も含まれるため、動物性の食品をしっかり摂取できる人はそこまで意識する必要はありませんが、タンパク質の必要量が多い人は、ビタミンB6の摂取量も増えることを覚えておきましょう。
では、ビタミンB6を摂取しすぎた場合に考えられる弊害、悪影響とはどのようなものかご存知でしょうか。
本来、ビタミンB6は水溶性ビタミンで余剰分は尿中に排出されるため、普段の食事で過剰摂取となることはほとんどありません。ただし、「日本人の食事摂取基準」では上限量が設けられています。サプリメントや医薬品によりビタミンB6を補給する場合は過剰摂取のリスクがあるため、適正量を守るようにしましょう。
サプリメントなどでビタミンB6を長期間にわたって過剰摂取した場合、力が弱くなる・感覚が鈍るなどの神経障害、手足のしびれや痛み、悪心、胸焼け、精巣の萎縮といった症状を引き起こす恐れがあります。
ビタミンB6は加熱や光に弱く、水に溶ける性質です。そのため、加熱済み・調理済みの加工品や冷凍食品よりも、生で新鮮な食材を選択しましょう。調理での損失を防ぐためには、ゆでる調理法でなく、レンジを活用したり、蒸し料理で摂取したりするのがおすすめです。
また、植物性よりも動物性の食品の方が、利用効率は高いといわれているので、献立でのメインのおかずは肉や魚を選ぶとよいでしょう。野菜や果物は植物性ですが、生で食べることで栄養価の損失はないため、足りない分を補う食材としてぴったりですよ。
オトナンサー編集部