スーパーやコンビニエンスストアでは、弁当や総菜が売れ残ることがあります。ただ、多くの店では、従業員が売れ残りの食品を持ち帰るのを禁止しているようで、こうした食品は廃棄されるケースが多いようです。
もし従業員が「もったいない」「どうせ捨てるから」と考え、廃棄予定の食品を無断で持ち帰ってしまった場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士が解説します。
■窃盗罪に当たる可能性も
スーパーやコンビニの従業員が売れ残った弁当や総菜などの食品を軽い気持ちで持ち帰ると犯罪に該当する可能性があるため、注意してください。売れ残った弁当や総菜などの食品は、廃棄処理された物であっても、法的には立派な「財物」で、占有権は依然として店にあるからです。
もしスーパーやコンビニの従業員が売れ残った弁当や総菜などの食品を店の許可なく黙って持ち帰ったり、食べたりした場合、他人の財物の窃取(占有を奪うこと)となり、「窃盗罪」が成立する可能性があります。窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。実際には、よほどの悪質なケース以外は、窃盗罪で刑事事件とされることはないでしょう。
ただし、店に無断で大量に食品を持ち帰り、他人に転売して対価を得るような行為を長期間にわたって続けた場合は、悪質であるとして窃盗罪が成立する可能性が高くなるでしょう。また持ち帰った食品を他人に提供後、食中毒が発生した場合、腐っていることに注意すれば気付けたのに気付けなかったという過失があれば、民事では、食中毒の被害者に対して、発生した損害を賠償する責任が生じる可能性があります。
この場合、食中毒になった人に対して治療費や慰謝料を支払う必要があるほか、販売元の店舗が、それが原因で一定期間の休業を余儀なくされた場合、営業していれば確実に売り上げていた金額を支払わなければならなくなる可能性があります。
どうしても売れ残った食品を持ち帰りたい場合は、事前に店の責任者の許可を取りましょう。
オトナンサー編集部