気分がひどく落ち込んでいるときに思い切り泣くと、気分が一時的にすっきりすることがあります。メンタルを回復させる上で、「泣く」は正しい対処法と言えるのでしょうか。より効率よく気分をリフレッシュする方法はあるのでしょうか。心理カウンセラーの平井綾乃さんに聞きました。
■泣いただけではストレスの根本は解決されない
Q.ひどく落ち込んでしまったときにメンタルを回復したい場合、思い切り泣くのは有効なのでしょうか。泣くメリット、デメリットについて、それぞれ教えてください。
平井さん「心理学的にも有効な方法です。表に出さないよう無意識に押し込めていた感情を泣いて外に出すことで、心の浄化作用である『カタルシス作用』が働き、気持ちがすっきりするメリットがあります。カタルシス作用とは、落ち込んだ気持ちや悲しい気持ちにかかわらず、感情を発散してスッキリすることです。泣くことはもちろん、本や映画を通じて感動したり、スポーツ観戦をして盛り上がったり、カラオケで思いっきり楽しんだりするなどの行動でも同様の効果が得られるとされていますよ。
一方、泣くことのデメリットとしては、泣いただけではストレスの根本は解決されないことです。泣くことで心を一旦落ち着かせた後は、ストレスの根本と向き合って原因を解決することです。ストレスの根本を見つけるには、考えを整理し、何が原因で落ち込んでしまったのかを探るのがお勧めです」
Q.では、ひどく落ち込んでしまったときに泣くのを習慣付けても意味はないということでしょうか。
平井さん「泣くのを習慣付けても、あまり意味はないでしょう。大人が落ち込んで泣くときには必ず理由がありますし、その理由をはっきりさせないと落ち込みやストレスは解決されず、最終的には健康的になりません。
後で説明しますが、健康的に解決するには、気持ちを落ち着かせた後で思ったことや考えていることを誰かに話したり、ノートなどに書いたりして整理し、落ち込んだ原因を明確にすると良いでしょう。泣くことを習慣化するよりは、気持ちや考え事を整理する習慣を身に付ける方がお勧めですね。
理由なく気分の高ぶりで涙が出るときはもっと問題で、うつを疑った方が良いでしょう。この場合でも習慣化は意味がなく、むしろ放置してしまうと症状が悪化する可能性もあります。気分の落ち込みが続く場合や症状が日常生活に影響を与える場合は、適切な治療を受けることが望ましいです」
Q.ひどく落ち込んでしまったときの対処法について、教えてください。
平井さん「可能であれば、誰かに話すことをお勧めします。話すだけで頭の中が整理されますし、共感的に聞いてもらえる場合は自信を取り戻すことができるかもしれません。話す相手は友達でもよいのですが、利害関係が生じないカウンセラーなど、第三者の方が良いですね。
今すぐに誰かを頼るのが困難な場合は、ノートや紙などに書いてアウトプットするのもお勧めです。文字に起こすだけでも、頭の中を整理できますよ。自分の気持ちや考えていることを整理してみると、落ち込んでいる原因が明確になる場合もあります。落ち込んでいる原因が明確になると、原因に対して『案外大したことじゃなかった』と思う場合もあれば、『これは仕方がない』と思って自分に優しくなれる場合もあるかもしれませんね」
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泣くことは、一時的なストレス発散になりますが、習慣化してもあまりメリットはないといいます。それよりも、悩んだり落ち込んだりしたときに気持ちを整理して原因を明確にするなど、ストレスの根本と向き合うことが大切だということです。
家族や友人に話を聞いてもらったり、必要に応じてカウンセラーなどの専門家に頼ったりするという選択肢もあります。また、理由なく落ち込んだり、涙が出る場合のほか、日常生活に支障が出る場合は、適切な治療を受けることも視野に入れてくださいね。
オトナンサー編集部