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【吉永小百合・デビュー65周年】日活という学校で学び、青春映画の中で放たれた可憐なマドンナ 共演者・カメラマンが語るその輝き

NEWSポストセブン 2024年6月13日 7時15分

 吉永小百合は1959年に松竹作品で映画に初出演、翌年、高校入学と同時に日活と専属契約を結んだ。以降、自身と変わらぬ年頃の役を演じ、明朗な作品はもとより貧困や死を扱った作品の中でも、前を向いて希望を持つ若者の輝きを放った。

 このたび映画デビュー65周年を記念して『吉永小百合 青春時代写真集』(文藝春秋)が刊行された。同書収録の座談会で吉永は「日活が学校で、同級生がいっぱいいた。本当に充実していました」と語っている。1960年代の日活映画は当時の若者にとっても、吉永にとっても青春そのものだった。

常に全力投球。才能だけでない“努力の人”

 日活の純愛路線をともに支えた俳優の浜田光夫が、当時の吉永について語る。

「吉永さんの主演第1作の映画『ガラスの中の少女』は、私のデビュー映画でもあります。最初にお会いしたのは、そのオーディション現場。当時、私は16歳、吉永さんは15歳でした。この作品の撮影現場で迫真の演技と限界を超えての頑張りに圧倒された時から、吉永さんには頭が上がりません。『愛と死をみつめて』の現場では、演技に引き込まれた現場スタッフが感極まって大粒の涙を流す場面もありました。

 私が出演した日活映画88作品のうち、吉永さんとコンビで共演した映画は44作品。1年間で会わない日は2、3日というほど毎日撮影で一緒でした。彼女は常に全力投球。才能だけでなく、“努力の人”だと思います。吉永さんは1歳年下ですが、姉のような存在でした」

カメラの前に立つ時はいつも完璧でした

 吉永と浜田のコンビで大ヒットした『愛と死をみつめて』(1964年)など多くの作品でカメラマンをつとめた撮影監督の萩原憲治氏が、吉永との思い出を語る。

「日活の撮影所が完成した1954年に私は入社し、6年後に15歳の小百合ちゃんが入社してきました。当初から私も現場スタッフも『小百合ちゃん』と呼んでいました。人懐っこく、どのスタッフにも謙虚で皆に慕われて、本当に性格がよかった。親しみのある女優さんでした。

 私は今95歳。親子のような年齢差ですが、当時の撮影助手だった鈴木耕一さんによると、私より早く現場入りした時はいつも茶目っ気たっぷりに“Hさんはまだ?”と聞いていたそうです(笑)。『若い人』『青い山脈』など数多くの吉永作品を撮影しましたが、小百合ちゃんはとにかく頭がよかった。セリフをとちることはありませんでしたね。NGも出さなかった。カメラの前に立つ時はいつも完璧でした」

いつも、とてもしっかりしていた小百合さん

 吉永小百合、和泉雅子と合わせて「日活三人娘」と呼ばれ、多くの青春映画に出演した松原智恵子が、当時の吉永について語る。

「同い年ですが、小百合さんが先に日活に入られていて、私は1960年の『日活ミス16歳コンテスト』に入賞したのをきっかけに日活に入社しました。当時は小百合さんも私も毎日のように撮影で忙しかったのを憶えています。

 小百合さんと初めて共演したのは同級生役の『いつでも夢を』。親友を演じた『青春のお通り』では小百合さんがちゃっかり、私はおっとり、という役柄でした。実際の小百合さんはいつも、とてもしっかりされている方でした。小百合さんとは今も携帯メールや年賀状で交流が続いています。私が映画に出ると必ず『観ました』とメールを送ってくださいます。コロナ禍が明けたので、近々またお会いしたいです。再び映画作品で共演もしたいですね」

【プロフィール】
浜田光夫(はまだ・みつお)/1943年生まれ。1960年、日活映画『ガラスの中の少女』で吉永とコンビを組んで以降、多数の作品で共演。

萩原憲治(はぎわら・けんじ)/1929年生まれ。大映を経て日活に入社。撮影監督として手がけた吉永作品は『愛と死をみつめて』など多数。

松原智恵子(まつばら・ちえこ)/1945年生まれ。1961年、映画『夜の挑戦者』でデビュー。吉永、和泉雅子と共に「日活3人娘」と呼ばれた。

吉永小百合(よしなが・さゆり)/1945年生まれ、東京都出身。1957年、小学5年の時にラジオドラマ『赤銅鈴之助』でデビューし、1959年、松竹『朝を呼ぶ口笛』で映画に初出演。1960年に高校進学と同時に日活と専属契約を結び、『ガラスの中の少女』で初主演、『キューポラのある街』でブルーリボン主演女優賞受賞。2023年の『こんにちは、母さん』で出演作は123本を数える。『吉永小百合 青春時代写真集』が文藝春秋より発売中。吉永小百合&浜田光夫『純愛ブルーレイボックス』発売中(発売:日活 販売:ハピネット・メディアマーケティング)。特集上映「1960年代─吉永小百合と私たちの青春」(東京・神保町シアターにて6月28日まで上映中)。

取材・文/上田千春 写真/日活

※週刊ポスト2024年6月21日号

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