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小池百合子氏vs蓮舫氏「似た者同士の東京都知事選」 元都知事、元副知事、元側近ら“蹴落とされた男たち”が語る2人の「怖さ」と「権力欲」

NEWSポストセブン 2024年6月17日 7時15分

 7月7日投開票の東京都知事選は、「女帝」こと小池百合子・現都知事(71)と「仕分けの女王」と呼ばれた蓮舫・参院議員(56)の事実上の一騎打ちとなっている。2人に共通するのは、並々ならぬ上昇志向でここまでのし上がってきた点。“蹴落とされた者たち”が、2人の「怖さ」と「弱み」を語った。

仕返しを無慈悲でできる特異な能力

 小池氏を古くから知る人物は、「いつ表明するのか」と周囲を焦らし「東京大改革3.0」とぶち上げた出場宣言のやり方を「いかにも彼女らしい」とこう評した。

「小池は自分が出馬表明しないでいれば、メディアが蓮舫を叩くだろうと、ジーッと待っていた。先にやったら叩かれるから、自分が有利になった時にやる。蓮舫は蓮舫で、今後の東京をどうするという公約を小池が出してから、『私はこうです』と違った政策を出すつもりでしょう」

 そう語るのは石原慎太郎・都知事のもとで副知事を務めた浜渦武生氏だ。

 浜渦氏は小池氏の父・勇二郎氏が衆院選に出馬(落選)した際に選挙を手伝った縁で、小池家と古くから親交があった。以前は「百合ちゃん」と呼んでいたが、今では「小池」だ。

 元側近が学歴詐称問題を告発するなど、周囲から人が次々に離れていく体質をこう指摘する。

「小池の手法は利用できる者は利用する、騙された奴が悪い。常に過去を否定し、今がどうあるか、どうすべきかだけを考える人。それを親父さんから徹底的に教え込まれた。親父さんと同じだと思ったのは最初の16年の都知事選の時、彼女は街頭演説で対立候補の鳥越俊太郎氏(がんサバイバー)を『病み上がりの人』と言ったのに、『言っていない』とシラを切り通した。あれはすごかった。親父さんも中曽根康弘さんや石原慎太郎さんを利用し、『嘘も百回言えば本当になる』と言っていた」

 浜渦氏自身、小池氏に蹴落とされた一人だ。

 小池氏は都知事に就任すると、石原都政の「築地市場移設問題」を批判し、浜渦氏は都議会の百条委員会で厳しい追及を受けた。

「前任者の活動を否定するのが新しい人の在り方ではありますが、小池家の教えは、過去の全否定です。まず石原さんがターゲットにされ、次に私が標的に選ばれた。実は、小池が都知事選に出る前、私に電話があったんです。選挙を手伝ってほしいというお願いだったようですが、私は電話に出なかった。その意趣返しもあったのかもしれない。都民ファーストの当時のメンバーは、『百条委員会で浜渦をやっつけろ』と指示を受けたと言っていました。そういう仕返しを無慈悲でできるところも彼女の特異な能力の一つでしょう」

 そして今回の選挙戦をこう見る。

「自民党は立憲や共産と組むわけにはいかないから選択肢は小池しかないですが、彼女自身は国政に転じたいと思えば東京でなくとも、神奈川でも千葉でも当選できる。自民党と全面的に手を組むのか組まないのか──それが彼女の運命の分かれ道となるでしょう」

大物を抱き込む能力

 前都知事の舛添要一氏も小池氏と因縁がある。

 彼女のキャスター時代に知り合い、各国大使館のパーティに2人で出席したことから“恋人説”が流れたこともあった。

 その舛添氏が公私混同批判で都知事を辞任すると、小池氏は「舛添批判」を展開して当選。いわば“踏み台”にした格好だ。

 舛添氏は小池氏が政治家として「特殊な能力」を持つと指摘する。

「小池都政には、都市計画という視点が欠けている。防災対策もやってない。公約した『7つのゼロ』も実現していない。小池さんは平気で嘘をつくが、それでも大丈夫だという特殊な能力を持っている。ある意味、政治家に相応しいのかもしれない。

 それから、小池さんはジジ殺しというか、権力のある人にすり寄ってきた。細川護煕、小沢一郎、小泉純一郎、二階俊博と権力者を乗り換えながらここまでやってきた」

 一方の蓮舫氏については、小池氏と比較しながらこう評する。

「蓮舫さんは好き嫌いがはっきりしていて、岡田克也氏のことを『本当につまらない男だと思った』と会見で言ったこともある。だが、政治家としては好き嫌いなど度外視した鉄面皮のほうがいい。マキャヴェリズムは小池さんのほうがはるかに上。

 私は、学歴詐称問題はエジプトに弱みを握られることにもなり、外交的にもよくないから小池さんは出馬しないほうがいいと言ってきたが、政治家としての裏工作とか大物を抱き込む力は、小池さんのほうが一枚も二枚も上手。その才能が今回の選挙戦でも勝敗に関わってくるでしょう」

 元東京地検特捜部検事の若狭勝・元代議士も因縁を持つ一人だ。小池氏とともに「希望の党」を立ち上げて2017年の総選挙に臨みながら、小池氏の「排除発言」【※注】の逆風で落選、政界を引退した。

【※注/2017年9月、「希望の党」の設立直後に小池氏は、合流を目指した旧民進党の一部について「排除いたします」と発言。それをきっかけに支持が離れ、翌月の総選挙では都内小選挙区で1勝22敗の惨敗となった】

 若狭氏には政治家としての小池氏がこう見えた。

「女帝とか呼ばれていますが、近くにいてすごい資質の人だという印象は受けなかった。カリスマ性もあまり感じない。小池さんの家に行った時、愛犬のソウちゃんと遊んでいたことがあった。ジャージ姿で追っかけてウンチを拭いている姿は普通の人にしか見えなかった。政治家だから戦略家なのは間違いないんでしょうけど、やっぱり二面性があるんでしょうね。

 小池さんはアピール力があり、『ステイホーム』などキャッチフレーズを多用する。あれは彼女が考えているのではなく、小池さんを支える周りのスタッフの意見を聞いて決めていたんです。それをあたかも自分の手柄のように見せる部分とかは本当に長けていますね」

いつも喧嘩を売られる

 他方、蓮舫氏の出馬には、野党からも“冷や水”が浴びせられている。

 5月27日の静岡県知事選の翌日、蓮舫氏が出馬会見で「静岡県民は野党候補を選んだ」と発言すると、国民民主党の榛葉賀津也・幹事長(静岡選出の参院議員)が、「(静岡知事選に当選した)鈴木(康友)さんは自民党推薦候補とも競ったが、共産党公認候補とも戦った」と反論。さらに、「鈴木さんは『人生最後の勝負』だと言って退路を断った。蓮舫さんも退路を断ってやるのかなと。負けたら『衆院選に出ます』なんてことはないと思うが」と皮肉ったのだ。

「蓮舫氏と榛葉氏は旧民進党時代から対立し、民進党分裂後の2019年参院選では榛葉氏の静岡選挙区に立憲民主党が徳川宗家当主を擁立。蓮舫氏は“榛葉を落とせ”と応援を展開した。蓮舫氏に落とされそうになった榛葉氏が、そのことを忘れるはずがない」(立憲民主のベテラン議員)

 さらに蓮舫氏の出馬に複雑な視線を送るのが、元立憲民主党の松原仁・代議士だ。松原氏は次の総選挙で東京新26区からの出馬を希望していたが、公認が得られずに離党した。「東京26区は蓮舫が参院からの鞍替えを目指していた。だから、都連は蓮舫に選挙区を空けるために松原氏の公認を認めなかった」(同前)と見られている。

 松原氏にすれば、蓮舫氏が衆院選ではなく一転、都知事選に出馬したことに、“だったらなぜ”という気持ちではないか。松原氏が語る。

「前の参院選では支援者を紹介したり地元での宣伝カーの運行を管理したりするなど蓮舫さんを支援しました。私の選挙区の東京3区は区割り変更で新3区と新26区に分割される。自宅は26区にあり、都議時代の選挙区も26区側になる。そこで立憲民主の東京都連に26区からの出馬を頼みに頼んだが、理由も明らかにされないまま決まらなかった。だから離党したのです。蓮舫さんは、筋は通す。信念の人です。今は都知事選勝利に集中している。負けたら衆院選、ましてや新26区のことなどは考えていないはずです」

 蓮舫氏とブログを通じてバトルを演じているのが、元自民党代議士で政治評論家の金子恵美氏だ。金子氏の夫で元自民党代議士の宮崎謙介氏は、妻の相談を受けて「蓮舫氏の炎上商法に利用されているので注意すべき」とアドバイスを送る日々だという。宮崎氏が言う。

「蓮舫さんは以前から金子のブログに対し、ことあるごとにX(旧・ツイッター)などで突っかかってくるんです。反応すると、また突っかかってくる。こちらから喧嘩を売ったことは一度もありませんでしたが、たまりかねて金子が蓮舫さんの出馬会見の『小池都政をリセット』という言葉に疑問を呈すると、また反論の応酬です。

 蓮舫さんという政治家は指揮官としての力は疑問が残りますが、現場での戦闘能力は高い。出馬会見での『反自民、非小池』のアピールも、本来は都政とは関係ない国政の政局の話を持ち出して、攻撃の材料にしているわけです」

「利用できる者は何でも利用する」というしたたかさでは蓮舫氏も小池氏に負けていないようだ。人並み外れた上昇志向と権力欲で政界をのし上がってきた2人の対決、どちらに軍配が上がるのか。

※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号

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