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《ポスト岸田》地方議員から飛び出した「岸田おろし」は菅義偉氏が主導する“シナリオ通り”「小泉進次郎氏に覚悟が決まれば一気に擁立へ動く」との予測も

NEWSポストセブン 2024年6月18日 11時15分

 ついに、自民党で「岸田おろし」の号砲が鳴った。自民党の地方議員から“退陣要求”まで飛び出した背後では、党内の大物国会議員たちが、“決起”の準備を着々と進めていた──。

「岸田(文雄)内閣の状況は、支持率がどん底まで下がった森喜朗内閣の末期にそっくりです。あの時、自民党は誰からも全く相手にされなくなった。岸田総理は安全保障など重要な政策をやってきたが、裏金問題で何をやっても支持率が回復しませんから、ここがいわゆる辞め時です」

「週刊ポスト」の取材にそう語るのは、自民党横浜市支部連合会会長の佐藤茂・横浜市議だ。6月4日の同市連の定期大会で、「あえて総裁自ら責任を取り、身を引くよう、苦渋の決断をしていただきたい」と岸田首相に正面から退陣要求を突きつけた人物である。

 市連大会では「ポスト岸田」にもこう踏み込んだ発言をしている。

「自民党総裁選では、大胆な改革と政治刷新を進めることのできる強いリーダーシップのとれる新進気鋭の総裁を選び、変革の証を国民に示していかなければなりません」

 それに呼応するように、続いて挨拶に立った自民党神奈川県連会長の小泉進次郎・元環境相が、「2009年の政権交代の時に初当選した私からすれば、あの時より怖い」と自民党への逆風、岸田政権への国民の批判の強さに危機感をにじませた。

 一地方議員ながら、佐藤氏の発言をきっかけに自民党内は大きく揺れ始めた。自民党神奈川県連関係者が打ち明ける。

「佐藤市議の背後には神奈川政界の大実力者で反岸田の菅義偉・前首相の存在があるとみられている。横浜市連の大会で岸田おろしの火の手を上げることはシナリオ通りだった」

「劇的な人が出ないとダメ」

 事態はさらに動く。菅氏が6月6日に安倍派の萩生田光一・前政調会長、茂木派の加藤勝信・元官房長官、二階派の武田良太・元総務相の「HKTトリオ」と会合を持ったからだ。萩生田氏と武田氏は裏金問題で岸田首相から「役職停止」の処分を下され、いわば首相に恨み骨髄。党内では会合は「岸田おろしの策謀」とみられているが、そこに進次郎氏が加わったことで衝撃が広がった。

「役職停止処分の萩生田、武田は総裁選に出馬できない。5人組の会合は、事実上、菅さんたちが加藤か進次郎を総裁選に担ぐという意思表示に他ならない」(閣僚経験者)

 自民党内ではそう受け止められている。改めて火付け役の佐藤氏に聞いた。

「市連大会での挨拶原稿は前日に作りました。菅さんに言われて発言したわけではありません」と前置きして進次郎待望論をこう語った。

「総裁選にはいろいろな方が出てくると思いますが、手垢がついている人では本人だけが努力しても党の信頼は回復しない。劇的な人が出ないとダメ。私は市連大会に同席されていた小泉進次郎さんくらいまで世代交代したほうがいいと思います」

 自民党のホープとされる進次郎氏が「将来の総理・総裁候補」という見方は党内で一致しているが、父の純一郎・元首相は、「50歳までは総裁選に出させない」と語っており、現在43歳の進次郎氏は次の総裁選への出馬はないとみられていた。

 ところが、ここにきて本人の気持ちにも変化が起きているようだ。進次郎氏に近い議員が言う。

「これまでは総裁選絡みの話をするときっぱり出馬を否定していたが、最近は出馬するとまでは言わないものの、『自民党が下野するわけにはいかない』と危機感を露わにする。純一郎さんに言われた“50歳縛り”にしても、進次郎氏は『親父もあれよあれよと(総理に)なった』という言い方をしている。つまり、そのつもりはなくても、なる時にはなるものだと覚悟していると感じる」

 菅氏に近い反主流派の幹部もこう語る。

「菅さんは2人の総裁候補を“平時の加藤、乱世の進次郎”と考えている。菅内閣の官房長官を務めた加藤は実務能力は高く、総裁選にも出馬意欲を見せているが、国民への訴求力が弱い。今は乱世、進次郎が出馬する覚悟を決めれば、一気に擁立に動くだろう」

麻生、茂木も同調か

 一方の岸田首相は完全に追い詰められた。

 後見人の麻生太郎・副総裁や茂木敏充・幹事長が強く反対した政治資金規正法改正案の修正を押し切ったことで関係が悪化し、麻生氏は「禍根を残す改革は避けるべきだ」と公然と岸田首相を批判した。

 総裁再選の見通しは相当厳しい。麻生派関係者が明かす。

「総理はいまや総裁選出馬に必要な推薦人20人の確保にさえ苦労し、麻生さんに協力を頼んできた。麻生さんは総理に腹を立ててはいるが、破れかぶれ解散をされては困るから親しい議員に声をかけているものの、誰も泥船には乗りたくないから推薦人を尻込みしている」

 孤立を深める岸田首相は国会閉会後、大幅な内閣改造を行なって挽回を図る構えだ。

「総理は内閣改造で総裁選のライバルになりそうな小泉進次郎、石破茂、河野太郎の小石河トリオらを閣内に取り込み、出馬できないように封じ込めたい。一か八かの解散・総選挙に望みをつなぐなら、9月に3年の役員任期を迎える麻生氏と茂木氏もこの際、交代させるだろう」(官邸筋)

 当然、反主流派はそうはさせない。前述の菅氏とHKTトリオらの会合では、「菅さんは進次郎氏に入閣要請に応じないようにアドバイスした」(前出の閣僚経験者)という。

 岸田首相が改造で麻生、茂木両氏を切れば、2人は「解散阻止」のために菅氏、進次郎氏、HKTトリオらと足並みを揃えて岸田おろしに動き出す可能性がある。

 政権の命運は、いよいよ尽きることになる。

※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号

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