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【青森密閉殺人】“交通単独事故”で去年も十枝内運輸の社員が一人死んでいた 殺人容疑で逮捕の容疑者と借金トラブル 娘は「事故ではなかったのではないか」と訴え 青森県警も関係者再聴取か

NEWSポストセブン 2024年6月18日 16時58分

 2023年のゴールデンウィーク最終日の早朝。青森県七戸町では前夜から雨が降り続いていた。住宅地から離れた町道で、車道から外れて一台の高級乗用車が転覆しているのを通行人が見つけた。車体は激しく損壊し、屋根が地面と接しタイヤが上にある状態でひどい事故だったことが伺える。乗っていた運送会社「十枝内運輸」社員、田中健一さん(当時50)は胸などを強く打っており、搬送先の病院で死亡が確認された。悲惨な事故は、地元テレビ局にニュースとして取り上げられ、現場の状況から青森県警は単独事故として処理をした。

 それから約1年を経た今年4月1日、同じく七戸町の深さ約6メートル土中から、プラスチック製の容器に詰め込まれた元「十枝内運輸」の社員でトラック運転手の谷名幸児さん(54)の遺体が見つかった。遺体は成人男性がかろうじて入るほどの大きさの容器に入れられており、谷名さんは自宅から連れ出されて暴行を受けた後に窒息死させられた可能性がある。青森県警は主犯とされる「十枝内運輸」社長の十枝内伸一郎容疑者(47)らを加害目的略取、監禁、死体遺棄、殺人容疑で捜査を進めている。【前後編の前編】

 谷名さんの殺害事件は、計画されたものだった。1月7日、十枝内容疑者は共犯者の協力を得て、トラブルが続いていた谷名さんを連れ去った。暴行を加えた上、複数人で両手足を結束バンドで縛って動けなくし、高さ約1メートル、直径約50センチメートルの円筒型の容器に谷名さんを押し込めて、中から出られないようにダンプのタイヤを上に置いて蓋をした。そのまま数日間放置し、その後、別の場所に移して土中に埋めていたのだ。

 NEWSポストセブンは、谷名さんの息子Aさんや連れ去りに協力した女性被告と親しいBさん、十枝内容疑者と谷名さんの双方をよく知るCさんら関係者への取材を続けた。取材を進めていくと、同町に住む20代の女性D子さんに行き着いた。冒頭の“単独事故”で死亡した田中健一さんの娘だ。

「家族思いで優しい父でした。私が子どもの頃、学校行事には休みをとって来てくれました。誕生日とかも大事にしてくれましたし、給料日になったら家族みんなを外食に連れて行ってくれました。私の学校の友達が来たときにはバーベキューをしてくれたことも印象的です。率先して私たちにお肉を焼いてくれました。孫にも優しくて、いつも自分の携帯で写真を撮っていました。

 十枝内運輸では15年ほど働いていたのですが、父は昨年5月6日に突然、亡くなりました。警察は飲酒運転による単独の交通事故と処理しました」

 D子さんや当時の報道によると、昨年5月6日、田中さんは一人で運転中、事故を起こして死亡した。冒頭のように雨が降る日に、緩やかなカーブでの出来事だった。

「車内には、次の日に食べるつもりで買ったお弁当やカップ麺が残されていました。遺体は右側だけ傷が酷くて、右の腹部には丸いアザがありました。不審な点がいくつかあったので事故だと思えないから調べて欲しいと1〜2週間後に警察に行きました。しかし、警察からは『事件性はない』と回答されました」

 車内に別の人間がいた痕跡は見つからず、他の車などと衝突した痕もなければ、単独事故と判断するのは当然だろう。しかも、当日に田中さんは午前2時ごろまで飲食店で飲酒していたことが分かっている。雨で路面の状態も悪い中、飲酒運転で判断ミスをした──。

「もちろん飲酒運転だったので、どうかなとも思ったんですが、どうしても納得できない不審な点がいくつもあったんです。そういう状況で、モヤモヤした1年を過ごしていましたが、谷名さんが殺害されたというニュースが出ましたので、再度警察に行きました。『もう一度ちゃんと調べてください』と言いました。2回目に行った時に『警察としても動いてみます』と言ってくれたんです。今は警察からの連絡を待っている状況です」(D子さん)

 D子さんとD子さんの母親(田中さんの妻)によると、田中さんは、今回逮捕されたうちのひとり・Eと金銭トラブルを抱えていたという。
「父は2021年8月に、十枝内社長からレクサスの高級セダンを中古で買ったんです。車自体の金額は分かりませんが、その時にEさんから現金45万円を借りたんです。
 そして父は給料日に5万円ずつ返済していったんです。でも一年以上返してもなぜか返済が終わらない。『払い終わった』と言っていたんですけど、給料をもらったらEさんに『お金は?』と言われて、言い返せずに払い続けていました。利子がついているみたいな事を言われて。そしてお父さんとEさんがトラブルになっていた。

 亡くなる2、3週間前にはEさんから『お前の娘や娘の旦那、お前の家族の車全部取りに行くから』と脅迫のようなラインも来ていたんです。そして父は『返しても借金がなくならない』と警察に相談に行った。その1週間後に死亡しました」(D子さん)

 D子さんらは田中さんが金銭トラブルを警察に相談してすぐに亡くなったことと、事故について不審な点が見つかったことから「事故ではない」と1年以上訴え続けていたのだ。七戸町で取材を進めると、青森県警の捜査員が当時の事故について関係者に聴取していることも分かった。後編では事故の“不審な点”についてD子さんと母親の主張を詳しく聞いた。

(後編に続く)

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