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【青森密閉殺人】「携帯からSDカードが抜き取られていた」「遺体はすでに死後硬直が始まり……」 “空白の3時間”に何が 一年前の社員事故死で遺族が訴える「事故ではない」という主張の根拠とは

NEWSポストセブン 2024年6月18日 16時59分

 2023年5月6日早朝、青森県七戸町の町道で高級車を運転中に“単独事故”を起こし死亡した運送会社「十枝内運輸」社員の田中健一さん(当時50)。それから約1年、同運送会社の社長・十枝内伸一郎容疑者(47)は元社員の谷名幸児さん(54)を殺害した疑いが持たれており、今年3月以降、共犯者らとともに青森県警に逮捕され、捜査が進められている。県警は、田中さんの死亡した事故についても再度、捜査をしているようだ。

 当時、田中さんの身に何があったのか。2人の元社員が1年足らずの間に死亡していることになるが、何か関係はあるのだろうか。NEWSポストセブンは、田中さんの妻と娘のD子さんに取材。D子さんは田中さんの事故の直前に、今回逮捕されたうちのひとり、Eと金銭をめぐるトラブルになっていたことを明かした。【前後編の後編。前編を読む】

「父は2021年8月に、十枝内社長からレクサスの高級セダンを中古で買ったんです。車自体の金額は分かりませんが、その時にEさんから現金45万円を借りたんです。そして給料日に5万円ずつ返済していったんです。でも一年以上返してもなぜか返済が終わらない。Eさんから脅迫のようなラインも来たため、父は警察に相談に行きました。その1週間後に事故で死亡しました」(D子さん)

 田中さんの妻が話す。

「私も旦那がEさんにお金は借りて返していたのは知っていました。Eさんは、(旦那の)葬式後に“借金がある”と自宅に来ました。金額は旦那から借りたと聞いていた45万円まるまる残っていたということで、あり得ないことでした。旦那が亡くなった月のうちに私が給料を会社に取りに行った時も、Eさんは私のところに来ました。

 警察に相談すると、『もしEが家に来たら直ぐに連絡を下さい』と言われました。その後は警察が言ってくれたのか来なくはなりましたが……」

 生前の田中さんが家族には言わずに返していなかったのか、新たに借りていた可能性もある。しかし、D子さんが事故ではないと主張する根拠はほかにあるという。

「事故でひっくり返ってしまった車から少し離れた溝の中に携帯電話が落ちていたんです。その携帯カードからSDカードとSIMカードが抜かれていたんです。父の携帯の名義は別の親族のものだったんですが、その親族はSDカードとSIMカードが入っているのを購入時に確認しています。画面がバキバキで電源も入りませんでした。いかに事故の衝撃がすごくてもカードだけ抜けるのは不自然です。誰かに意図的に抜かれたと考えています。

 あと、車内にはまとまった金額の現金があったはずなんです。この高級セダンを誰かに売るということが決まって、その頭金をすでに受け取って車内に置いていると、父から連絡があったんです。しかし事故後の車の中から見つかった現金は財布の中には5万円ほどしか見つかりませんでした」(D子さん)

事故現場は「いつも父が通らない道」

 さらに事故現場にもいくつもの違和感を感じたという。

「事故現場は家の近くなのですが、いつも父が通らない道なんです。警察の捜査などから聞いているのは、父は飲食店を午前2時前に出ています。そして近くのコンビニを出たのが2時過ぎです。ここから、自宅までは車で15分ほどなのですが、事故が起きたのは5時ごろだというんです。2時から5時までの3時間、何をしていたんでしょうか。空白の時間があるんです」(同)

 確かに飲食店から事故現場までは6.5km、事故現場から自宅までは1.3kmほどしか離れていない。

「そして、通行人が父の事故現場を発見したのが午前6時です。事故からは1時間ほどしか経っておらず車はすごく暖かかったといいます。しかし警察によると、すでに父の遺体は死後硬直していたんです」(同)

 田中さんの妻もこう話す。

「朝8時頃病院に行って、遺体と対面しました。私は介護の仕事をしているのですが、旦那の遺体は死後4、5時間以上経っている死後硬直でした。事故があった5時からたった3時間で、こんな硬くはならないとは思いました」

 そして最後に、こう話した。

「私と子供達を一番に考えてくれていた旦那でした。運動会とか子供の行事には必ず来てくれて。どうしても仕事で休めないって時以外は全て子供と私優先で動いてくれる人でした。旦那が好きだった、ダイドーの缶コーヒーをいつも仏壇にあげています。缶コーヒーはこれしか飲まなかったから。旦那の身に何があったのか知りたいです」(田中さんの妻)

 田中さんの死亡について、青森県警に問い合わせると「令和5年5月6日、七戸警察署において普通乗用自動車の単独死亡事故として事案対応しております。ただ、色々なご質問をして頂いたんですけど、どの内容も個別案件でありますので、お答えを差し控えさせて頂きます」との回答だった。

 田中さんは単に事故で亡くなったのか、それとも遺族が言うように事故ではないのか。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏に話を聞いた。

「当初事故として処理していたのだと思いますが、警察は“不審死”として扱うべきでしょう。

携帯電話の中からSD、SIMカードが無くなっていても発信着信記録を警察は持っていますし、メールや無料通信アプリも復元できると思います。ただ、破棄処分してしまった自動車については、誰かが乗っていたかそうでないかということを調べるのはもはや難しいと思います。しかし、事故現場に来るまでに、どこから車がスタートして、最初から1人だったのか途中で2人になったのかなど、防犯カメラのリレー捜査を行うことで調べることもできます。

 今後、事件だったと見直し容疑者が判明する可能性もあると思います」

 その真相が注目される。

(了。前編から読む)

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