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《懲役18年判決・横浜女子大生ストーカー殺人》「お腹をグーで…」元恋人が伊藤龍稀被告を断ち切れなかった背景に“暴力”と“脅し”「別れたらどうなるか知らないよ」「破局後もバイト先までつきまとい」

NEWSポストセブン 2024年6月21日 21時0分

「理解し難い彼の娘への執着 度を越す愛情表現 監視し制限することにさえ そうしてしまう気持ちに 寄り添う努力をしながら何度も話し合ったことは無駄だった」(昨年7月公表された冨永さんの遺族コメントより一部抜粋)──あの痛ましい事件からまもなく1年が経とうとしている。2023年6月、大学生の冨永紗菜さん(当時18歳)を横浜市鶴見区の自宅マンションに不法侵入のうえ殺害した罪などに問われた、元交際相手の伊藤龍稀被告(23)。この事件をめぐり横浜地裁は6月21日、「強固な殺意に基づく犯行との非難を免れない」として伊藤被告に懲役18年の実刑判決を言い渡した。全国紙社会部記者が解説する。

「初公判の冒頭陳述で検察側は、犯行に使われた凶器を購入しようと量販店に車で向かう際、伊東被告が『必ず刺さないと。未遂で終わったら紗菜がハッピーなだけ』と話す様子が残されたドライブレコーダーの記録について説明。

 その後17日に開かれた裁判では『いきなり首、胸、腹部を4回刺すなど強い殺意と計画性があった』とも指摘しており、検察側は被告に対し懲役20年を求刑していました。

 一方の弁護側は、犯行が突発的なものであったのは自閉症スペクトラム症の影響があったとも主張。今回の判決を受けて遺族は『求刑通りの20年でも18年でも納得はできないです』とコメントしました」

伊藤被告の執着愛「どこへ行くにも許可が……」「別れるなら殺す」

 10日に行われた初公判では冨永さんの両親も証言台に立ち、その中で父親は「どこに行くにも男の許可がないと怒られていた。私と食事に行くときも事前に確認をとっていた」と涙ながらに話している。

 県警人身安全対策課の説明では、2021年10月から事件が起きた2023年6月にかけて、冨永さん本人や友人らから、伊藤被告のDV行為などに関する相談や通報が計4件ほど、寄せられていたという。前出・全国紙社会部記者が振り返る。

「2022年12月には伊藤被告の自宅アパートの住民から『男女の争う声がする』と110番通報されることもあった。この際に駆けつけた警察に冨永さんは『別れるなら殺すと言われ、首を絞められた』などと被害を訴えたそうです。

 県警はこうした通報がくるたびに2人から事情を聞いたり、伊藤被告を注意していましたが、冨永さんから『仲直りした』と申告があったことで、ストーカー規制法に基づく禁止命令を出すなどの対応はとらなかったのです」

 自宅アパートで110番通報があったときの様子について、住民はこのように語っていた。

「隣の部屋から激しい口論が聞こえて、それからパリーンと、何かが割れるような音がしていました。女の子とは口論をしている様子で、暴力をふるっているような音はしませんでした。女の子が大きな声を出すと男性が『隣に聞こえるだろ!』という感じでなだめていました」

過度な束縛と暴力性「彼は浮き沈みの激しい性格」

 計4回の通報があったにもかかわらず起きてしまった悲劇。当時、NEWSポストセブンは取材で冨永さんと伊藤被告の関係を心配していた知人からも話を聞いている。冨永さんの小学校の同級生だという男性は、2021年に出会ったふたりの関係についてこう話していた。

「紗菜は彼氏(被告)から暴力を振るわれたことが3〜4回あって、2022年あたりからずっと『もう別れたい』と言っていました。でも『俺と別れたらどうなるか知らないよ』と脅されていることもあって、関係をなかなか終わらせられずに悩んでいました。束縛も激しかったようで、彼と付き合ってからは直接会って遊ぶこともできず……。結局はたまに連絡をとるくらいで会えずじまいになってしまいました」

 被告からの暴力に悩み、なんとか関係を終わらせることを望んでいたのだろう。事件の直前まで冨永さんとやり取りをしていた友人も伊藤被告の“本性”を語っていた。

「紗菜が蒲田の飲食店でアルバイトしている時の店長が彼で、そこから仲良くなり付き合い始めたと聞きました。『浮気とか絶対にしない、一途な人』と本人も惚気ていたこともありますし、お互いに大切にしあっていたことは間違いないと思います。ただ彼氏の方は精神的に浮き沈みが激しいタイプでした。

 いい時は紗菜にアクセサリーをプレゼントしたり、車で送り迎えなんてこともしてくれる彼氏なんですが、病んでいるときなんかは彼女に手をあげることもあったそうで……。私が知っている範囲でも『お腹をグーで殴られた』『腕を強く掴まれてアザになった』と相談されたことが少なくとも2回はありました。束縛もいきすぎなくらいで、男友達と会ったり電話したりすることは当然ダメで、ネット上で男性とコミュニケーションをとることも監視されていました。『俺の写真をSNS』にあげろ、と強要され大喧嘩したこともあったそうです」

 こうしたなか、ふたりは破局を迎える。紗菜さんは心機一転、新たなバイト先で仕事を始めていたが、伊藤被告の”執着”は止まなかった。

「別れたと聞いて、私もホッとしていたんですが、紗菜が新たなバイト先として選んだ焼肉店に『彼が付きまとってくる』と相談してきて、ゾッとした記憶があります」(前出・冨永さんの同級生)

 奪われてしまった未来ある18歳の命。愛情と言うには程遠い、歪んだ執着心がもたらした悲惨な事件である。

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