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《都知事選「ほぼ裸ポスター」問題》女性モデル“みだら写真”の迷惑防止条例違反と公職選挙法、憲法の関係は 弁護士が解説

NEWSポストセブン 2024年6月24日 7時15分

 7月7日に投開票される東京都知事選。過去最多の56人が立候補した今回の選挙は、「ポスター」が大きな問題となっている。東京都選管には、ポスターをめぐってすでに1000件以上の苦情や問い合わせが寄せられており、「電話が鳴り止まない状態」(都関係者)という。

 政治団体「NHKから国民を守る党」が“掲示板ジャック”と称して、同団体に寄付した人が自分の作ったポスターを貼ることができるとしていることで、候補者ではない人物のポスターが大量に貼られる事態となっていることが大きな要因だが、6月20日に告示された同日におきた「ほぼ裸ポスター」問題も大きな騒ぎとなった。

 白塗りメイクで“ジョーカー議員”を自称する河合悠祐候補(43)が貼ったもので、アイドルなどとして活動してきた桜井MIUがモデルとなって、胸と局部が隠されているだけで衣服をつけていない姿や開脚している姿などが大写しにされていた。

 警察や選管には「子供に見せられない」と苦情が殺到。それを受けて警視庁は告示当日の夜に河合候補を呼び出し、東京都迷惑防止条例違反(ひわいな言動)に当たるとして口頭で注意した。河合候補は「都迷惑防止条例に違反する可能性があるということで警告をいただいた。速やかに剥がすように求められた。それに従って剥がしていく」と語り、実際に翌朝までにそのほとんどが剥がされている。

ひわいなポスターと憲法の「表現の自由」の問題

 一連のポスター騒動では公職選挙法の“穴”が指摘されているが、法的にはどんな解釈が考えられるのか。公選法では、大きさが規定の範囲で作られていて、掲示責任者の氏名など必要事項が記載されていれば、内容は事前にチェックされたりすることはない。公選法や公共政策に詳しい法律事務所Zの代表弁護士である伊藤建氏が解説する。

「警視庁は『東京都迷惑防止条例違反』で注意したということですが、すると公職選挙法では禁じられていないポスターを条例で規制してよいのか、すなわち条例が法律の範囲を超えて制約していいのかという問題になります。

 まず、憲法21条1項の表現の自由により、ひわいなポスターであっても憲法による保障を受けます。一方で、ひわいな表現については、一定の時・所・方法の規制を受けます。たとえば“成人向けの本はここで販売してはいけない”というような規制です。もっとも本件は選挙における表現の自由ですから、通常の表現規制と同様に考えてよいのかは疑問が残ります。

 憲法第94条では、地方公共団体は〈法律の範囲内で条例を制定することができる〉と定めています。もちろん条例による法律を規制が一切許されないわけではなく、別の目的によるときは、法律の目的や効果を阻害しない範囲であれば条例で規制することもできます。

 公職選挙法では、その目的を定めた第1条で〈選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする〉と記されています。これを都の条例で規制できるとすると、果たして〈公明且つ適正〉といえるかどうかが問題となるでしょう」

 選挙における表現の自由という、一言では済ませられない問題。確かにポスターには「表現の自由への規制はやめろ。」と記されていたが、あっさり警察の注意に応じて剥がしたところから見ても、同氏がXで「俺の300種類の仰天ポスターが街中に貼られることで東京の街は地獄と化す」と記していたところから見ても、その狙いは推して知るべしだ。

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