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氷川きよし、愛称「Kiina」を巡る前事務所との“商標登録トラブル”に特許庁も強い関心 “第3の名称”を使用する案も浮上

NEWSポストセブン 2024年6月27日 7時15分

 演歌界の貴公子としてデビューしてから約四半世紀。所属事務所から独立し、再始動を図る氷川きよし(46才)の前に現れた新たな障壁。コンサートを目前に控え、活動名義にかかわる権利問題は課題山積だが、彼には起死回生の一手があるようで──。

《タレント本人とは今後の活動及び芸名使用について協議を開始することに合意しておりますが、まだ具体的な協議には入っておらず、結論に至るには今しばらく時間がかかると思われます》

 特許庁に提出されたこの意見書にある「タレント」とは、歌手の氷川きよし(46才)のことだ。約1年半の休業を経て、今年4月に事務所独立と歌手活動再開を発表した氷川。そんな彼が好んで使う愛称「Kiina」をめぐる“商標登録トラブル”に新たな動きがあった。

 今年3月、特許庁は氷川の前事務所・長良プロダクション(以下、長良プロ)が出願していた「Kiina」の商標登録を却下した。この決定に対し、長良プロは異議申し立てにあたる意見書を提出。そこに記されていたのが冒頭の文章だ。商標登録とは、商品やサービスの名称、ロゴなどを特許庁に登録すること。審査が通り、登録が認められれば、それらは第三者が勝手に利用できなくなる。

「長良プロは、氷川さんの独立前に彼の“新芸名”の有力候補とみられる『Kiina』を、商標登録すべく出願していたということです。そして、それが特許庁により却下されたわけですが、今回の事務所サイドの主張は、“氷川さんと話し合うからもう少し待ってほしい”というもの。そもそも氷川さんと具体的に話し合わずに勝手に出願していた可能性が指摘されています」(芸能関係者)

 氷川は2019年のNHK紅白歌合戦に出場する直前、自らを「kii」と自称し始めた。その後、ありのままで生きるという意味でナチュラル(natural)を加えて「Kiina」と名乗るようになる。2021年のライブでは悩める心情をこう吐露した。

《デビューからいろんな人に「ああしろ、こうしろ」と言われて、そのとおりにしてきて、サイボーグみたい》《kiiとかKiinaって呼んでほしい。“きよしくん”だと、ちょっとキャラを押しつけられているように感じちゃう》

 10代の頃から自身のパブリックイメージに苦しんできた氷川がようやく手に入れた“自分らしい”愛称だったが、長良プロは昨年5月に「Kiina」の商標登録を出願。不意打ちのような商標登録出願は「新芸名封じ」、「独立阻止ではないか」などとマスコミを賑わせ、独立しても「名前が使えない」可能性が囁かれた。そうした報道は特許庁も確認するところであり、今回の決定に至ったようだ。

「却下理由の陳述で特許庁は、『独立阻止のために商標出願を行ったという記事が確認される』『(前事務所が)不正の目的をもって本願商標の出願に至ったことが推認されます』と述べ、公序良俗違反に該当すると断じました」(前出・芸能関係者)

 だがこれで一件落着とはいかなかった。長良プロが提出した異議申し立ては、協議を重ねるための猶予を求めるもので、「Kiina」の権利の行方は、今後の交渉に委ねられることになったのだ。

 そうした経緯も影響したのか、6月20日、氷川は自身のインスタグラムに黒のスーツ姿の写真を投稿してコンサートの告知をする一方、それまでの投稿をすべて削除した。

「現在はこの投稿のみで、インスタのプロフィールにあった『My name is Kiina』の文字も見当たらなくなりました。協議が落ち着くまでは『Kiina』の露出を抑えて静観するつもりなのかもしれません」(前出・芸能関係者)

「大文字にしてドットをつける」

 この商標登録騒動について、鮫島法律事務所の鮫島千尋弁護士はこう指摘する。

「拒絶の理由として『他人の著名な芸名』というだけでなく、あえて公序良俗違反を持ち出していることに特許庁の意志を感じます。氷川さんの独立にまつわる騒動については、以前から報じられていました。そうした渦中に前事務所が申請するのであれば、当人の承諾を得ているという説明が必須なはずで、いちばんの解決策です。その手当てを省いている点は、話し合いが難航しているか、そもそも話し合いができない状況なのでは、という印象も受けました」

 当初、独立のネックとなったのは都内の高級住宅地にある氷川の自宅につけられた約3億5000万円の抵当権だった。長良プロが貸し付ける形で豪邸購入の資金を用立て、その返済が退所条件のひとつだったとみられていた。氷川は退所直前に大手金融機関に借り換えて“独立金”を用意し、返済した模様だ。それでも晴れて再始動とはいかず、なお復活の障壁が残る。

「ファンクラブの移行も済んでおらず、前事務所が管理する形になっています。長良プロは『氷川きよし』という名前も商標登録しており、昨年8月に更新申請したことで、2033年までの存続が確定しました。独立した氷川さんが商品開発などで氷川きよしの名前を使う場合、何らかの費用が発生する可能性があります」(別の芸能関係者)

 福地国際特許事務所の福地武雄代表弁理士は、「日本弁理士会が発刊している、『知的財産価値評価ガイド』によると、キャラクターの分野別使用料という項目があり、例えばタレント関係ですと、売上の6%程度という相場感が示されています」と指摘する。

 これまでも芸能人が独立する際に旧芸名の使用を制限され、再出発に支障を来す例はあった。氷川きよしにKiinaまで“囚われの身”になってしまうとなれば、氷川はどうなるか。

「長良プロは、独立阻止や今後のタレント活動を妨害する意図はまったくないと意見書で明言しています。ただし、長年バックアップしてきた歌手だけに権利関係については、後腐れのないよう時間をかけて丁寧に協議するつもりなのでしょう。今後の活動に彼らがどれだけかかわるのかも焦点となってきます」(前出・別の芸能関係者)

 長良プロに「Kiina」と「氷川きよし」の商標登録出願などについて尋ねると、代理人弁護士を通じて次のように回答した。

「長良プロダクションは、氷川さんが独立した後も、氷川さんが『氷川きよし』等の名称・商標の使用を妨げることはなく、その商標使用について対価を得ることはありません。その他のご質問に関しましては、長良プロダクションから個別に回答することは差し控えさせていただきます」

「氷川きよし」の使用に支障はないとしながら、「Kiina」を巡る協議については明言を避けた格好だ。そんな膠着する事態を打開するためなのか、“第3の名称”も浮上している。

「氷川さんは前事務所への恩返しのような形で、ファンクラブが存続する来年1月までは、氷川きよし名義の活動を続けると聞いています。その後は権利問題を回避するため、『KIINA.』と愛称を大文字で表記し、さらにドットをつける案も浮かんでいるそうです。たしかに、氷川さんの公式Xや8月のコンサートの告知では『KIINA.』と表記されており、商標トラブルを回避する布石かもしれません」(前出・芸能関係者)

 活動休止から500日の長い沈黙を経て、ついに動き出した新生・氷川きよし。名前がどう変わろうが、ファンはきーちゃんの変わらぬ笑顔と歌声を待っている。

※女性セブン2024年7月11・18日号

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