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小柄な年配女性がすごみながら見せたのは刺青かタトゥーか 元暴力団組長「刺青は秘するもので、タトゥーは見せるもの」

NEWSポストセブン 2024年6月30日 16時15分

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、刺青とタトゥーの違いについて。

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「あの人が腕に入れているのは本物の刺青なのかどうか、見てほしい」、という相談を受けた。刺青とタトゥー、その筋に詳しい者じゃなくても、最近は一般人でも簡単に区別がつくのではないだろうか。

 聞いてきたのはあるジャーナリストだ。あるNPO法人の団体が公表している会計報告について、自身のブログで懐疑的なコメントをしたところ、代表者からクレームがきたのだという。その代表者に以前会った時、腕に入れている刺青をチラ見せしながらまくしたてられ、”昔、ヤクザだった”とすごまれたので、話し合いの場に一緒に来て刺青が本物かどうか確認してほしいと頼まれたのだ。

 刺青とタトゥーの違いをネットなどで調べると、皮膚に針を刺す深さによって区別しているものもあるが、どれもファッション的な意味が強いものをタトゥーと捉えているようだ。ある暴力団の元組長はその違いを「刺青は秘するもので、タトゥーは見せるもの」と表現した。「ヤクザは滅多なことで人に刺青を見せることはない。大っぴらに見せたのは祭りの時ぐらいだ」という。隠すのが刺青だという昔カタギの考え方を持つヤクザなら、「入れるのは背中、肩、腕の順。普段見えるようなところには入れない」と話す。

 日本にも増えてきたが、外国人に多く見られるのがタトゥーだ。肩や足首などにワンポイントや、全身びっしり色鮮やかに入れるなど、タトゥーに対する考え方や捉え方は人によって様々だが。ファッション性が高いせいかデザインも豊富で、人の目につく場所に入れていることが多い。有名人やアスリートなら彼らを形作る個性の一部となっている場合もある。

 国によってはそれが民族を表す象徴や、成人の印であったりと大事な意味を持つ所もあれば、2週間ほどで消えるヘナなど植物由来の染料を使って身体に模様を描くボディアートとして親しまれている所もある。「もうカタギには戻らない、戻れない」という覚悟を込めたヤクザの刺青とは異なり、タトゥーの持つ意味も国や民族によって千差万別。東南アジアなどではホテルのプールで、手足にびっしりタトゥーをいれたお父さんが、躊躇することなく普通に子供を遊ばせているのを目にするが、日本のプールや温泉では見ない光景だろう。

年代物のワンポイントタトゥー

 話をジャーナリストの質問に戻そう。話し合いの席に同席することになり、どんな刺青を入れた怖そうな代表者が出てくるのかと思ったが、出てきたのは関西出身という小柄な年配女性だった。拍子抜けしたが、この女性、席につくなりマシンガントークでジャーナリストを圧倒していった。彼が質問しようにもその間すら与えない。言いたいことを言いたいだけまくしたてると「支援者も多いから、いい加減なことを書かれると困るんだよね。私も昔はね…、刺青を隠す気もないし、そこはきっちりしてもらわないと」。ジャーナリストが目配せするその先に、件の刺青があった。

 腕に彫られていたのは、蝶のような花のような年代物のタトゥー。それもワンポイントだ。ヤクザだったとわざわざ豪語するような代物ではない。かなり色褪せ、線がぼけている。代表の年と刺青の古さから推測すると昭和時代、若かりし頃にヤンチャをしていた名残だろう。当時の日本では”タトゥー”という言葉は日常的に使われていなかった。代表がその可愛いタトゥーを刺青と言うのも当然だし、見える所に刺青をいれる女性は少なかったはずだ。周りからはヤクザとの関係を噂されてきただろう。今はそれを逆に利用しているのではないか。

 代表とジャーナリストの話し合いは平行線をたどった。帰り道、ジャーナリストは「刺青は本物だったか」と聞いてきた。「本物だが、あれはタトゥーだ」と答えると、ほっとしたようだ。たとえワンポイントでも刺青と言われればヤクザとのつながりを暗示させる。一般人にとって刺青とはそういうものなのだ。

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