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【パリ五輪】キャスターをめぐる戦い「吉田沙保里の起用を見送った日テレ」「パリに住む杏をキャスティングしたNHK」…“銭闘”を余儀なくされるテレビ局

NEWSポストセブン 2024年7月2日 11時15分

100年ぶりにオリンピック・パラリンピックが開催されるフランス・パリ。リオ大会以来、8年ぶりにコロナ禍の制限がない祭典に、世界中が注目している。だが、現地から熱戦を伝える取材陣は、例年にない厳しい環境と戦っていた──。

 7月26日に開幕するパリ五輪まで1か月を切り、各競技で代表争いが大詰めを迎えている。花の都パリでしのぎを削るのは、代表の切符を手にした選手だけではない。大会を中継する各テレビ局も、4年に1度の世界的スポーツイベントで火花を散らすことになる。五輪中継の“代表”ともいえる各局の「中継キャスター」が、選手よりも一足早く出揃った。

 今大会の注目株は、フジテレビでスペシャルキャスターを務める元卓球日本代表の石川佳純(31才)だろう。昨年5月に現役を引退した石川は、さわやかな言動で好感度は抜群。『ユニクロ』や『キリンビール』、『洋服の青山』など数々のCMにも出演するほどだ。

「過去3大会連続で五輪メダルを獲得した石川さんは、実績・知名度ともにキャスターとして申し分ありません。大会前から活躍が期待される選手を同局の番組でインタビューしていて、視聴者からの評判も悪くない。キャスター初挑戦というフレッシュさも、注目度をアップさせています」(テレビ局関係者)

 一方で、新人の独走を許さないのが「五輪キャスターの顔」ともいうべきあの熱い男。テレビ朝日は夏季と冬季を合わせて11大会連続で、元プロテニスプレーヤーの松岡修造(56才)をメインキャスターに起用。同局の報道番組『報道ステーション』でコンビを組む、元サッカー日本代表の内田篤人(36才)とともに現地入りする予定だ。

「“五輪といえば松岡修造”というイメージを持つ視聴者も少なくありません。熱血中継で有名な松岡さんですが、今大会のキャスター就任時にも、“選手たちの魂の戦いを、日本の皆さんに本気でお伝えします!”と熱くコメントしています。いつも以上の、にぎやかな中継が期待できるのではないでしょうか」(スポーツ紙関係者)

 TBSはシドニー五輪の女子マラソン金メダリストで、同世代からの支持が高いという高橋尚子(52才)を夏季と冬季を合わせて8大会連続で起用する。

 フジテレビの石川同様に、フレッシュな人選で勝負に出るのは、日本テレビとテレビ東京だ。日テレは競泳金メダリストの萩野公介(29才)。テレ東は、卓球金メダリストの水谷隼(35才)とバドミントンの金メダリスト高橋礼華(34才)がキャスターを務める。

 錚々たる顔ぶれが名を連ねる各局の五輪キャスター陣。“大ベテラン”の松岡で1日あたりの出演料が110万円、高橋は50万円などと報じられたことがある。

「ギャラの相場は40万円前後といわれていますが、遠くパリまで行くことを考えると決して割がいいとは言えません。それでも有名な元アスリートがオファーを受けるのは、大会後にもスポーツ番組に呼ばれるといった“ビジネスチャンス”につながるという考えもあるようです」(前出・テレビ局関係者)

経費節減の賢いキャスティング

 金メダリストの抜擢が目立つなかで、実績充分ながら名前が消えたアスリートがいる。東京五輪で日本テレビのキャスターを務めた吉田沙保里(41才)だ。女子レスリングで五輪3連覇を達成し、キャラクター的にもうってつけのはずだが、なぜ今回は声がかからなかったのか。

「各局が吉田さんの起用を検討したと思いますが、制作費との兼ね合いで見送られたのかもしれません。近年のテレビ離れの影響で、どのテレビ局も制作費の削減が顕著で崖っぷちなんです。吉田さんは小栗旬さん(41才)と『花王』のCMに出演するなど、タレントとしての側面も強い。彼女の出演料は“ランクが上”だったのかもしれません」(前出・テレビ局関係者)

 吉田は7月26日にNHKが生放送する『パリオリンピック2024 開幕直前スペシャル』にゲスト出演することが発表されており、まずは東京のスタジオから大会を盛り上げることになりそうだ。

 そのNHKは「アスリートナビゲーター」として、男子体操で3つの金メダルを持つ内村航平(35才)が現地から五輪をレポートするのだが、もう1人、意外な人物がキャスティングされた。パリ五輪の期間中、NHKはBSでフランス関連番組を40本近く放送する。そのスペシャルアンバサダーに起用されたのが、俳優の杏(38才)だ。

「2年前からお子さんたちとパリに移住した杏さんは、日本との二拠点生活を続けています。テレビ局がパリにタレントやキャスターを連れて行くとなると、当然、渡航費や宿泊費がかかる。しかも近年は円安の影響で、経費は膨らむ一方。

 その点、現地で暮らす杏さんを起用すれば経費を抑えることができる。もちろん、杏さんが多くの視聴者からの好感度が高いのは言うまでもありませんが、関係者の間で“賢いキャスティング”という声が上がっているのも事実です」(前出・テレビ局関係者)

 テレビ局関係者が指摘したように、今大会は制作費の削減と円安の二重苦が現場を直撃し、各局が“銭闘”を余儀なくされる。

「あるテレビ局は元スポーツ選手とは別に、出演料が高い人気タレントをキャスターとして現地入りさせて、競技会場内の取材を行うそうです。ただし、スタッフはもう一昔前のように高級ホテルに泊まったりすることはできず、飛行機も格安チケットで向かうようです」(前出・テレビ関係者)

 現地取材も少数精鋭だ。

「以前は地方の系列局からもスタッフが五輪取材に派遣されていたのですが、今回は基本的にどこもキー局のスタッフしか現地入りしないと聞いています。取材スタッフは一人ひとりIDを発行してもらう必要があり、その発行にもお金がかかります。

 これまでの五輪は情報番組ごとにスタッフが現地入りしていましたが、今回うちの局では複数の番組を代表して、アナウンサー2人とスタッフ4人が派遣されることになりました。彼らが現地で取材した内容を、各番組で共有する形です。スタッフ1人あたりの負担は増えますが、四の五の言ってはいられません」(別のテレビ局関係者)

 パリを舞台にした熱い戦いは、すでに始まっている。

※女性セブン2024年7月11・18日号

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