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《11月から罰則つき違反決定》自転車「スマホながら運転」をする人たちの4つの目的 “気づいてもスルー”な警察官もいる実態

NEWSポストセブン 2024年6月30日 16時15分

 自動車の「ながら運転」を防止する対策として道路交通法が改正され、反則金が普通車でそれまでの3倍に引き上げられたのは2019年12月1日からのこと。その翌年、2020年は全死亡事故に占める携帯電話使用事故の割合が前年の約半分に減少した(警察庁調べ)。いま、新しい社会問題となって久しい自転車の危険な運転を防止する目的で、警察庁は自転車の酒気帯びとスマートフォンなどを使用した「ながら運転」について11月1日から罰則つき違反とする方針を決めた。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、「自転車のスマホながら運転」についてレポートする。

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「スマホしながら自転車漕いでるのなんていっぱいいるよ、あそこにも、ほらそこにも」

 都心の繁華街、しばらくぶりに会った飲食店の知人(20代)がスマートフォン片手に折りたたみ自転車で「スマホながら運転」をしていたので声をかける。

 彼は自転車を対象とした自動車やオートバイ同様の「青切符」制度導入(2026年ごろを目処に施行)を知らなかった。もちろん、いまから約4か月後の11月1日から「自転車のスマホながら運転」が罰則つきの違反となる方針が決定したことも知らなかった。

「なにそれ、スマホ狙い撃ちかよ、たかが自転車だよ、こんなちっちゃいの」

 彼の自転車はミニベロと呼ばれる小型の自転車で、電動アシスト機能がついているタイプだ。

「それに仕事の着信なんだから確認しないと、まずいっしょ。ちゃんと前見えてるし」

 それでも危ないからとスマホはしまってもらったが、彼とのやりとりの間にもスマホ片手にイヤホンで若い女性の自転車が走り抜ける。その向こうには自転車にスマホ片手にフラフラとガニ股で漕ぐ中年男性――都内有数の歓楽街、場所が場所だけになかなかのカオス。警察官もいるがまず声掛けなんかしない。そして誰もヘルメット(努力義務)なんか被っていない。

自転車で「スマホながら運転」をする4つの目的

 6月27日、警察庁は「自転車のスマホながら運転」と「自転車の酒気帯び運転」を罰則つきの違反とする方針と「11月1日から」という具体的な日付を発表した。これまで「自転車のスマホながら運転」は警告のみだった。いや、多くはそれすらされてこなかった。

 読者のみなさんの多くも「自転車のスマホながら運転」なんて珍しくもないほどに見てきたことだろう。もちろん、言わないだけで自分も「スマホながら運転」で自転車に乗っている、もしくは乗っていた、という人もいるかもしれない。それも11月1日からは罰則の対象だ。

 それにしても「自転車のスマホながら運転」、いったい何を見ているのか。筆者はコロナ禍からずっとこうした「自転車のスマホながら運転」の人と今回の件と関係なしに話してきたが思い起こす限り、おおよそ4つの用途であった。

「動画を観る」

「ゲームをする」

「電子コミックを読む」

「SNSやチャット」

 これで自転車を漕ぐわけで器用なものだが危なっかしいことこの上ない。意外なのは「地図を見ていた」的な用途はあまりいなかった。また「ながら通話」も昔のガラケー時代に比べれば減ったように思う。まあいるのだろうが、筆者の肌感としては先の4つの用途がほとんどである。

 あたりまえだがスマホで動画やゲーム、電子コミック、SNS等をすること自体は構わない。しかし「自転車のスマホながら運転」は違反であり、11月1日からは罰則もつく。まだ検討段階だが、自転車運転者講習の対象になる可能性もある。

 ちなみに「自転車のスマホながら運転」は6月以下の懲役または10万円以下の罰金となる。さらに危険と判断された場合は1年以下の懲役または30万円以下の罰金である。

 歓楽街の24時間営業スーパー、小さな男の子を後ろに乗せた電動アシスト自転車の女性も「スマホながら運転」をしていた。スーパーの前に停まったので声をかける。

「なに、あんた警察?」

 すごく怖い顔で睨まれる。違いますと答えると「警察呼ぶよ」と言われてしまった。

 でも後ろの子どもさんはかわいかった。筆者ににっこり「バイバイ」と小さな玩具を手に振ってくれる。大通りに面した人通りの激しい場所だ。子育てが大変なのはわかるが、子どもさんに危険が及ぶのは忍びない。

 別の「自転車のスマホながら運転」をするママチャリの女性も子どもを乗せていたが交番の前を通っても何も言われていなかった。警察官は立っているのに、である。これもいろいろあるのだろうが、11月1日からはこうはいかなくなるのだろう。

「危ないなんてもんじゃない」

 改正道路交通法で2026年までに実施される「自転車の青切符」だが、このように「自転車のスマホながら運転」も11月1日からの罰則と取締りの対象となることが決まった。自動車やオートバイ、そして歩行者の側からすれば「やっと決まったか」という感想も多いことだろう。

 それほどまでに自転車の「自転車のスマホながら運転」は野放しで、どこも時間帯や場所によっては「自転車のスマホながら運転だらけ」が常態化していた。この繁華街のように「自転車のスマホながら運転」が日常の光景となっているような「荒れた」地域もある。言い方が難しいのだが「自転車のスマホながら運転」の人たちは逆ギレする方々が珍しくなく、その姿がSNSなどでも晒されている。

 自転車を趣味のスポーツとして長く楽しんできた40代男性は「決定は遅すぎた」と語る。

「罰則のあるなしにかかわらず、普通はしないですよ。危ないなんてもんじゃない。でも現実はあちこち自転車でスマホのながら運転して走ってる、むしろ遅かったくらいです」

 言葉の通り、本来は罰則のあるなしにかかわらず危険、かつ迷惑な行為なのでするべきでないし、はっきり言って危な過ぎる。本人だけでなく歩行者が理不尽な事故に巻き込まれてしまう。自動車やオートバイ、とくに商業車のドライバーの方々の多くも「どう転んでもこっちが加害者になってしまう」と困っている。いや、ずっと困ってきた。

 じゃあ10月30日までは大丈夫などと思わず、いまも「自転車のスマホながら運転」をしているという方、どうか本当にやめて欲しい。

日野百草(ひの・ひゃくそう)/日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経て、社会問題や社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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