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「女性従業員が泥酔客の腕をかかえて店に連れ込む」「カードを盗んで30分で107万円決済」大阪・北新地「昏睡強盗中国人バー」の狡猾な手口

NEWSポストセブン 2024年6月28日 16時30分

 6月22日、大阪・北新地のバーで客に酒を飲ませて昏睡させ現金を奪ったなどとして、大阪府警はバー『Monica』の経営者で中国籍・董春雨容疑者(40)を昏睡強盗などの疑いで、20~50代の従業員を電子計算機使用詐欺などの疑いで逮捕した。客を酔わせ、その隙に現金を奪う昏睡強盗という手口。その狡猾な犯行の実態に迫った。事件について全国紙社会部記者が解説する。

「容疑者らは40代の男性客に強い酒を飲ませて昏睡させ、財布から現金6万円を奪ったうえ、クレジットカードを勝手に使用して約8万円をだましとった疑いが持たれています。また、別の女性従業員らも董容疑者と共謀し、去年12月に同様の手口の昏睡強盗未遂事件に関わった疑いが持たれている。

 このように董容疑者らは経営する複数の店舗で似たような手口で何件もの昏睡強盗を行なっていた疑いが持たれていて、この2年で警察に寄せられた相談はおよそ60件、被害総額は2000万円を超えるとみられている。府警は組織的な犯行とみて捜査しています」

 大阪市は2018年から客引き禁止条例を制定している。大阪を代表する高級歓楽街・北新地には高級クラブが立ち並ぶが、そんなエリアも指導員が巡回する「重点地区」に指定されている。しかし、同エリアではコロナ禍で減った客足を取り戻そうと客引きに頼る店が目立つようになっていた。

 そうしたなか、大阪市と天満署の要請、そして北新地社交料飲協会からの委託を受けて4年前から北新地の防犯パトロールをするのはアンディ南野氏だ。アンディ氏もこの店で被害に遭った人から話を聞いていたという。

「董容疑者が経営していた店は『Monica』のほかに、少なくとももう一店舗『Princess』という店があって、僕らはこの2つの店でぼったくりや昏睡強盗の被害にあった10人以上から話を聞いていました。たとえばカードで支払いをしようとすると、『エラーが出て使えないから現金で払ってくれ』と言われ、現金で支払ったら翌月にカードの請求もきている。二重取りですね。

 こういった被害が相次いでいて、警察にもずいぶん前から相談していて、昨年末から年始にかけてようやく『Princess』の入り口に監視カメラを設置してもらったほどです」

 パトロールが行われるのは21時~24時が定時。最近はぼったくり被害が相次いでいるため、27時頃までパトロールすることもあるという。

 報道によると、容疑者らは店の近くで客に声をかけ、店に勧誘。来た客に強い酒を飲ませ、財布から金やキャッシュカードを抜き取る──という手口だが、被害者から相談を受けてきたアンディ南野氏によると、より組織的な関与があったことも疑われる。

「路上で中国人キャッチが声をかけるところは同じなのですが、いつもすぐに『Monica』に連れ込むわけではなく、近隣にある3000円で飲み放題といった別の安価な店に案内するんですよ。そこで、女の子が煽って客に酒を飲ませ続け、泥酔させた状態で、2軒目の『Monica』や『Princess』に連れ込むんです。

 泥酔状態で女性に抱きかかえられて連れ込まれる人も珍しくない。1軒目と違って飲み放題なんかじゃなくて、自分のドリンク1杯、女性のショット1杯の計2杯で数万円も請求するようなぼったくり会計です」(アンディ南野氏、以下同)

 アンディ南野氏が提供してくれた動画には足下がおぼつかない男性が、従業員とみられる中国人女性に腕をつかまれ『Princess』に連れ込まれる様子が映っていた。

10回の決済で107万円

「容疑者らが狙っていたのはきまって男性1人か2人組で、40歳以上。若い人は中国人のやるバーやクラブに行きませんから。少人数なのは泥酔させて財布から現金やクレジットカードを盗みやすくするためでしょう」

 アンディ南野氏が見せてくれたのは、ある被害者の『Princess』でのカード決済履歴だ。昨年12月20日の24時32分から24時59分まで計10回の決済が試みられている。最初に申請された額は19万8000円で、その次も同じ19万8000円、そして16万5000円──徐々に金額が下げられ、最後は2万2000円。計107万8000円にも及ぶ。

「はじめの大きい金額はカードの限度額に引っかかったのか、エラーで断られています。で、少しずつ上限金額に引っかからないよう金額下げて、2回分計5万円5000円が決済されています。たった20分ちょっとで同じ店で10回も切ろうとするなんてどうみてもおかしい話で、クレジットカード会社も止めるべきだと思うんです。結局、カード会社は取り合わず5万5000円は請求されましたし、警察も『北新地は高いから』と難色を示した」

 前述の通り、北新地は高級歓楽街だ。富裕層も多く訪れるため、まめに利用明細を見る人でなければこうした被害に気づかないケースもあるだろう。アンディ南野氏も実感として「被害相談に行くのは20~50人に1人くらいじゃないですかね。(被害にあったことに気づいた人も)やっぱり恥ずかしいし、かっこ悪いから」と、実際の被害額はさらに大きいのではないかと指摘する。

 アンディ南野氏のもとには中国人をはじめとした外国人が経営する店舗で似たような被害報告が相次いでいて、今回の逮捕は氷山の一角だという。

「男性2人組が中国人キャッチに声をかけられ、『X』という店に行ったときの話です。片方は入店早々に店内で寝てしまい、もう片方が女性キャストと1杯ずつ飲んだところ、請求は3万円。この男性は現金で渋々払ったのですが、寝ている男性の財布からクレジットカードが2枚抜かれていて、それぞれ16万5000円、15万5000円の請求がきました。

 しかも、カード決済の明細を見ると、住所は同じなのにそれぞれ店名が違っていた。同一住所で2店舗登録していたんです。この時は警察に被害届を出して、クレジットカード会社と粘り強く1か月かけて交渉してようやく返金されましたが、いまの北新地はもうやりたい放題なんです」

 アンディ南野氏を含めた指導員らは客引きを見かけると注意をするが、罰則がないためイタチごっこが繰り返されている。北新地の飲食店からは、より強制力のある対策を大阪市に求める声が上がっている。

 

 

 

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