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「実は頭がないんです」…女装姿の防カメ映像を刑事に見せられ「あっ、パパだろうな」 ススキノ事件・被害者妻が事件を知った瞬間 田村瑠奈被告(30)への思い

NEWSポストセブン 2024年7月1日 21時20分

 2023年7月、札幌市の繁華街ススキノのホテルで、頭部のない男性会社員(当時62)の遺体が見つかった事件。殺人罪などで親子3人が起訴された。このうち、死体遺棄ほう助と死体損壊ほう助の罪に問われた母親の無職・田村浩子被告(61)の第2回公判が7月1日、札幌地裁(渡辺史朗裁判長)で開かれた。近年、稀に見る猟奇的な事件について振り返る。

「娘の瑠奈被告(30)は昨年7月1日深夜に、ススキノのホテルで男性を殺害し頭部を切断しました。そして自宅に頭部を持ち帰りましたが、母親の浩子被告は、瑠奈被告が男性の頭部を自宅に隠すのを容認したこと(死体遺棄ほう助)と、瑠奈被告が頭部を損壊する際のビデオ撮影を求められ、夫の修被告(60)に撮影を依頼するなどして手助けをした(死体損壊ほう助)ことが罪に問われています。

 浩子被告の弁護人は、無罪を主張しています。頭部を損壊することなど知らず、事件はいずれも娘の瑠奈被告が主導して行っており、異常な家庭環境だったことを示す方針です」(裁判担当記者)

 6月5日に行われた初公判ではいびつな家族関係と瑠奈被告の異様な日常が明らかにされた。瑠奈被告は父親の修被告を「ドライバーさん」と呼び、母親の浩子被告を怒鳴りつけるなどして、両親を“奴隷扱い”していた。一方の両親はそんな娘を「お嬢さん」と呼んで機嫌を取り、何でも言うことをきいていた。そんな瑠奈被告に浴室で皮を剥がされて赤くなった人間の頭部を見させられたり、寝床近くに被害者の眼球が入っているガラス瓶を置かれたりしていたことが、すでに明らかになっている。

 初公判で「犯罪を手伝う意思はなく、損壊を手助けするつもりもまったくありませんでした」と涙ながらに無罪を訴えた浩子被告。7月1日に行われた第2回公判には、紺色のカーディガンを羽織り、薄いブルーグレーのTシャツに薄いグリーンのロングスカート姿で入廷。メガネをつけ、白髪混じりの髪の毛を後ろでひとつにまとめていた。

読み上げられた被害者妻の調書

 開廷すると、証拠調べが行われ、検察側が請求した証拠として被害男性の妻の調書が読み上げられた。

「夫が殺されたと知った時の気持ちを話します。最後に言葉を交わしたのは7月1日の朝です。いつもと変わらない朝でした。長男が夕方に来ることになっていました。仕事に出る時、夫に3人でご飯をするかと聞いたら『今日出かけるからいらないわ』と言われ『わかった』と返事をしました」(被害者妻の供述調書より)

 3〜4年前から被害男性は週末に女装をするようになったという。ススキノに遊びにいく時にはいつも泊まりがけだったといい、妻は“いつものこと”と気にもとめず、夫を送り出した。しかし翌2日の夜にも帰らず、さらに3日朝になっても夫が帰った様子はない。夫の勤務先から電話がかかってきて「出勤していない」と言われたが、事件に巻き込まれていると頭によぎることもなかった。

 3日の夜も帰らず、義理の姉夫婦と警察で事情を説明した。すると、「(札幌)中央署の刑事が来るのを待ってて」と言われ、別の小さな部屋に通されたという。

「防犯カメラの映像を3〜4枚見せられて、そこにはウィッグとスカートの、夫によく似た人が映っていました。背格好や立ち姿も似ていて、家から女装して出る時の化粧に見えたし、全体的に、あっ、パパだろうなと思う人が映っていました」(同)

 何があったのか、なかなか話そうとしない刑事はようやく重い口を開いた。遺族にとってショッキングな内容だった。

「刑事さんはようやく『ススキノで遺体が見つかった』と言いましたが、何を言っているのかよく分からなくなりました。『遺体の指紋が本人か確認したい』というので『顔を見れば確認できます』と伝えると『実は頭がないんです』と言われました」(同)

 衝撃は強く、この時のことを順序立てて思い出すことができないという被害男性の妻。事件から時間が経った現在でも夜中に突然目が醒めることがある。精神状態は良くなく、「冷静にいたい」と考えながらもネットの書き込みなどを見てしまい、腹が立つなどしてしまう状態だという。

「何があったのか、本当のことを知りたい。捜査で真実が明らかになることを願っています」(同)

 調書ではそんな被害男性の妻の悲痛な思いも明かされた。

「私にとっては良い夫で、子供にとっては良い父でした。いろんなところに連れて行ってくれて、愚痴を言わず、家族のために仕事を続けてくれていました。一緒でリビングで時間を過ごし、誕生日にはご飯を食べに行ったり、独立した後の子供が家に来ると一緒に食事に行ったりしました。私の車のタイヤを交換してくれて、お礼に寿司を奢ったりもしました。今後も同じように穏やかな日々が続くと思っていました。

『子供達にもいずれ孫ができるのでは』と夫は楽しみにしていた。私は、いつか歳をとってどっちかが死ぬ時、ありがとう、と言って終わりにしたいと思っていました。そういう未来があると思っていました」

 瑠奈被告とのトラブルにも言及していた。

「加害者との間になにかあったのなら夫に代わって私が謝りたい。しかし、なぜ夫が殺されなければならなかったのか本当のことを知りたいです」

 被害者妻は、夫の女装が好きではなかったというが、現在でも思い出すのは「女装をしている夫の姿」だという。

◆取材/高橋ユキ(ジャーナリスト)

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