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【悲劇の調書】「女装は人を楽しませるためだと思っていた」ススキノ事件・被害者の姉と長男が「真実を知りたい」「釈放シナリオへの怒り」

NEWSポストセブン 2024年7月1日 21時50分

 2023年7月に札幌市の繁華街ススキノのホテルで男性会社員(当時62)の頭部のない遺体が発見された事件。被害者の起訴された親子3人のうち、死体遺棄ほう助と死体損壊ほう助の罪に問われている母親の無職・田村浩子被告(61)の第2回公判が、7月1日に札幌地裁(渡辺史朗裁判長)で開かれた。

 法廷に現れた浩子被告は、紺色のカーディガンに薄いブルーグレーのTシャツ、薄いグリーンのロングスカートという装いで、白髪混じりの髪の毛を後ろでひとつにまとめていた。

 これまでの取り調べから一貫して、浩子被告は事件への関与を否定してきた。初公判では、「あまりに異常な状況で、娘に何も言うことができず、頭部を隠したいと言われたこともなく、頭部を持っているとも思わなかった」などと述べた。弁護人も「浩子さんが、娘が男性の頭部を浴室に置き続けていたことを認識して生活していたことに間違いはないが、隠匿しているとは思っておらず、隠匿を容認もしていない。咎めたり通報してはいないが、容認する発言もしていない」と起訴内容を否認し、無罪を主張している。

 第2回公判では、検察側が請求した証拠として被害男性の長男の調書も読み上げられた。そこには父親を突然失ったショックが記されていた。

「7月4日、父が殺されたことを母からの電話で知って、頭が真っ白になりました。今も起きるたびに“現実なんだ”という気持ちと“家に帰ったらいつもの定位置にいるのでは”というよくわからない気持ちになります。

 父はリビングのソファが定位置で、飲みながらYouTubeを見たり、プラモデルや女装の小道具を作っていました。今も家に帰ると父がいて、声をかけてくれるのではないかと思います。まだやりたいことがあったと思います」(被害者の長男の供述調書より)

 父親が世間を揺るがす猟奇殺人の被害者となり、長男は今もスマホを持つと、つい事件について検索してしまうという。現実を受け止めきれない中で、それでも田村一家、そして当時の報道には強い怒りを感じているようだ。

「父は3度殺されました。1度目は殺されたとき。2度目は首を切られて皮を剥がされたとき。3度目は、『死んで当然な人間』と報じられたとき。減刑を求める署名運動まであった。父は、レイプ犯のようなことはしていないと信じています。人を喜ばせたり楽しませたりするのが好きで、女装を褒められて嬉しそうにしていた父がこんな殺され方をしたことには納得できません。

 被疑者は、否認していると聞いた。娘は責任能力がないと主張し、両親は“知らなかった”と主張することですぐに釈放されて、一家が揃うシナリオを作っていると思いました。許せません。一家全員の極刑を望んでいます」(同前)

「嫌がる人に無理やりするような人じゃない」

 被害男性の姉もまた、深い悲しみを抱えている。彼女の調書も読み上げられた。

「弟は週末にススキノへ遊びに行くことが多いと知っていたので、首のない遺体が見つかったという報道が出たとき、少しだけドキドキしたが他人事でした。7月3日の夜、義理の妹(被害者の妻)から“夫が家に帰ってこない、出勤していないと会社から連絡があった”と伝えられ、胸がザワザワしました。信じられないが、もしかしたら、まさかという思いで、一緒に警察に行きました。

 刑事さんから体の特徴などの質問をされて、さらに(札幌)中央署の刑事さんが来て、防犯カメラ映像を見せられ、胸が苦しくなり、喉が渇いてしかたなかった。7月4日に遺体と弟の指紋が一致したと聞きました。受け入れたくありませんでした」(被害者の姉の供述調書より)

 姉の調書によると、被害者の母は認知症が進んでいて事件のことは伝えてもわからないと思うといい、同じく認知症を患う父にも「伝えるとショックを受けると思うので言いません」という。被害男性の姉は「弟は人を楽しませることが好きな優しい人」とも述べていた。

「女装をしていたのも、人を楽しませるためだと思っていた。加害者をレイプしたという報道があったが、嫌がる人に無理やりするような人じゃないと皆が言っています。なぜ弟が殺されることになったのか、ちゃんとした真実が知りたいです」(同前)

 遺族はまだ悲しみの底にいる──。

◆取材/高橋ユキ(ジャーナリスト)

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