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「そっとしておいて」高尾山で黒トリュフ発見に騒然!専門家は「食べられるが、海苔の佃煮のような香り」、トリュフハンターには苦言

NEWSポストセブン 2024年7月2日 11時15分

 梅雨入り前にも関わらず、各地で最高気温30度超えを連発し、真夏のような暑さを記録した6月中旬。X(旧ツイッター)で、黒いジャガイモのような塊の写真とともに驚きの投稿をしたのは東京都八王子市にある「高尾山さる園・野草園」の公式アカウントだ。

《えっ!?高尾山にトリュフ!? 野草園の手入れ中に発見し、国立科学博物館に調べてもらったところ、間違いなくトリュフでした!》

 併せてブログも更新され、発見されたものが「アジアクロセイヨウショウロ」という黒トリュフの一種であることや、国立科学博物館に標本として収蔵されたこと、採れたトリュフの一部を利用して人工栽培の実験を始めたことなどが明かされた。

 同園を運営する高尾登山電鉄の広報担当者が話す。

「園内整備として枯葉掃除などをしていた際にたまたま発見しました。見ただけでは本当にトリュフか分からないので国立科学博物館に鑑定を頼んだのです。本物だと分かると、社内は驚きに包まれました」

 トリュフといえば、キャビア、フォアグラと並ぶ世界三大珍味の1つ。フランス料理などに用いられ、別名「食卓のダイヤモンド」とも呼ばれる高級食材で、主な原作国はイタリア、フランスだ。

 神奈川県立生命の星・地球博物館で主任学芸員を務め、トリュフなどの地中や落ち葉の下にキノコを作る「地下生菌」という菌類の研究に力を入れる折原貴道さんが解説する。

「あまり知られていませんが、トリュフは日本にもたくさん自生しているんです。北は北海道から南は九州まで広く分布していて、手付かずの自然が残った場所よりも、『撹乱地』と呼ばれるような、土が掘り返され、人の手が入った場所に発生しやすい。都内の公園や植え込みの木のそばにも生えています」

 ひと口にトリュフと言っても、まず黒トリュフと白トリュフに大別される。さらに世界中を見渡せば、180種以上のトリュフが存在しており、日本に自生するものだけでも20種以上存在すると言われるほど種類が豊富だという。このたび高尾山で発見された「アジアクロセイヨウショウロ」というのは、どのようなものなのか。

「日本国内で特に多く発見される黒トリュフの1種で、食べることもできます。ただ、1つ注意してほしいのは、ヨーロッパで採れる黒トリュフとは別物(別の種)であるということ。流通価格も全然異なります。今回高尾山で採れたものと同種の黒トリュフの輸入価格は、欧州産黒トリュフの10分の1程度でしょうか」(折原さん)

 香りも全く異なるという。

「トリュフと聞くと、鼻腔をくすぐる独特の芳醇な香りを想像すると思いますが、国内で採れる黒トリュフは、少しツンと来る磯のような香りです。例えるならば、『海苔の佃煮』のような香りと言えます」(折原さん)
 今回、高尾山で発見されたトリュフは、欧州産トリュフとは別物のようだ。それでも、高尾山を始め都内でも多くのトリュフが自生されているのなら、レアな高級食材を狙った“トリュフハンター”が現れてもおかしくはない。

「土壌が掘り返され、酷く荒らされてしまうと、トリュフは生えなくなります。それどころか、高尾山は関東屈指の高い生物多様性をもつ山で、ここでしか見つかっていない貴重な地下生菌もいっぱい分布しているんです。今回の発見をきっかけに国産トリュフが脚光を浴びるのは嬉しいですが、“ハンター”たちによって生態系が壊されてしまうような事態は避けたいですね」(折原さん)

 前出の広報担当者も、念を押す。

「高尾山一帯は『明治の森高尾』として国定公園に指定されていますので、動物も植物も捕獲、採集は禁止されています。高尾山の豊かさを知っていただくためにトリュフの発見を報告しましたが、どうか温かく見守っていただくようお願いいたします」

 突然降って湧いた“高尾山トリュフフィーバー”だが、まだ見ぬ自然と生命の奥深さに感嘆するだけで、そっとしておくのが良さそうだ。

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