Infoseek 楽天

【私の推しメン対談・藤あや子✕野口五郎】同じ病を乗り越えた2人だからこその“わかり合える部分”

NEWSポストセブン 2024年7月5日 6時59分

 あの有名人が“推し”に会ったら……そんな夢を叶える今回の企画『私の推しメン対談』。「小学生の頃から五郎さまファン」と公言している歌手・藤あや子(63才)が、彼女の“推しメン”野口五郎(68才)と対談した。野口から藤へ贈られたアドバイスについて、そして2人が“病から得たもの”について語る。【全3回の第3回。第1回を読む】

憂い顔は意外な方法で“作られた”

野口:そういえば、レコードジャケットも驚くような方法で撮られていました。

藤:たとえば、どんな?

野口:『私鉄沿線』のレコードジャケットの写真は、写真家の篠山紀信さんが撮ってくれたんだけど、どこで撮ったと思う? 

藤:ええっ? どこだろう。

野口:青山霊園ですよ。

藤:お墓ッ!?

野口:そう、しかも朝から夕方までひとりで霊園に待機させられたの。当時は過密なスケジュールだったのに、ここでボーっとしていていいのかな、と思いつつ、やることもなくブラブラして。

藤:不安じゃありません?

野口:そうなんだよ、夕暮れが近づいて、だんだん心細くなる。するとようやく紀信さんが来て、「じゃあ、そろそろ行こうか、3、2、1」って言ったかと思うと、カウントからタイミングを外して3回だけシャッターを切って……おしまい。

藤:半日かけて3枚撮っただけ!? だからあれほど憂いに満ちた表情に……。

野口:ぼくが自然とそういう表情になるのを待っていたんだろうね。ほかにも渋谷のスクランブル交差点にひとりで立たされたことも。周囲に気づかれたら騒ぎになるから気が気じゃなかった。「早く青に変われ、それですぐに撮影してくれ」って思いながら待機していたの。そんなぼくの焦った顔が撮りたかったんだって。

藤:忙しい最中にもかかわらず、そこまで雰囲気作りにこだわっていたんですね。だから、忘れられないいい作品ができた。納得です。

「声帯を甘やかさない」その教えを守って……

藤:そういえば私も、五郎さんからいただいたアドバイスを守っています。「声帯を甘やかさない」っていう。

野口:7年くらい前に、BS番組のデート企画で共演したときにちょっと話したアレ? あや子さんはきれいな声をしているけど、それは声帯が強いせい。だからといって、甘やかさない方がいいって言ったんだっけ。

藤:はい。先日の歌番組での収録のとき、百恵さんの『秋桜』を歌うことになったのですが、原曲キーだと私にはちょっと高い。半音下げてもらおうかと考えたんですが、五郎師匠のお顔が浮かんで……。弱い自分を打ち消したら、原曲キーで歌えました。

野口:そうそう、あや子さんなら絶対大丈夫。これからも自信をもって声帯を甘やかさずに歌い続けてほしい。

藤:ありがとうございます。はぁ~、改めて五郎さんは本当に“尊い”。容姿も声も素敵だし、ギターの腕も一流、アレンジも自分でされているんですよね。とにかく音楽に対する姿勢が細やか。プロでもここまで追求しません。いまでもコンサートに伺うのですが、年々飛躍していて……。私の目にはいま、五郎さまの背中から翼が生えています。

野口:翼って、大げさな(笑い)。

同じ病気を乗り越えわかり合えた……

〈コンサートツアーに新曲発表にと、2人とも精力的に活躍しているが、冒頭で触れたように、藤は5月に子宮体がんの手術を受けた。そして野口も、62才で食道がんに罹患──2人とも、「病から得たものは少なくない」と話す〉

野口:あや子さんは順調に回復されているの?

藤:はい、おかげさまで。今回の教訓としては、ストレスをためすぎない、ということ。私、精神的にタフなつもりですが、体には出てしまうんですね。

野口:でも、闘病はマイナスなことばかりじゃないでしょ。病を克服して初めて感じることや見えるものがある……。それはいろいろなものに守られているということ。

藤:わかります。手術を終えたら、体から悪いものがすべて取り除かれたような気がして……。多くの人に助けられ、励まされ、与えてもらった分、同じように苦しんでいる人たちに、音楽を通して恩返ししたいと強く思えるようになりました。伝えたいこと、やりたいことが増えたんです。死を覚悟したことで、よりポジティブになれた。歌への向き合い方も深くなりましたね。

野口:ぼくたちは同じ病気をしたからこそわかり合える部分があるよね。あや子さんとは今後も節目ごとにお会いして、「あのときに話したのは意味があって、それはこの日のためだったんだね」なんて言い合っている気がします。

藤:素敵! 会うたびに好きになる五郎さま。これからも推させていただきます。

(了。第1回を読む)

【プロフィール】
野口五郎/1971年5月1日、15才のとき『博多みれん』でデビュー。その後、『オレンジの雨』(1973年)、『私鉄沿線』(1975年)など、数々のヒットを飛ばし、1970年代を代表するアイドル“新御三家”のひとりとして活躍。2022年に、桑田佳祐ら同級生5人と『時代遅れのRock’n’Roll Band』のレコーディングに参加。今年6月からコンサートツアー「Follow Your heart~こころのままに~」もスタート。

藤あや子/1989年、28才のときに藤あや子の名でデビュー。『おんな』(1989年)や『こころ酒』(1992年)がヒット。日本有線大賞などを受賞。料理が得意で、無類の猫好きとしても知られ、2020年には2匹の愛猫との写真集『マルとオレオと藤あや子』(世界文化社)を刊行。7月3日に新曲『雪の花』発売。9月8日に35周年記念コンサートを福井県・高浜町文化会館 大ホールで開催。

取材・文/上村久留美 撮影/政川慎治

※女性セブン2024年7月11・18日号

この記事の関連ニュース