Infoseek 楽天

「サクランボ不作」でふるさと納税が大混乱 突然「別商品に差し替え」「1年後に送付」で業者てんやわんや

NEWSポストセブン 2024年7月8日 12時15分

〈お申し込みいただきました、『【令和6年度発送】~山形名産地より~さくらんぼ佐藤錦 大玉 800g Lサイズ』につきまして、天候の影響により生育が芳しくなく、お礼品をお届けすることができない状況でございます〉──大手ふるさと納税サイトから、東京都内の男性のもとにこんなメールが届いたのは7月初旬のことだ。

 山形県内で記録的な不作となっている「サクランボ」。同県のまとめによると、返礼品として発送予定だったサクランボ約1万5000件のうち約1500件が発送不可能になり、県内の市町村では計約33万6000件の発送予定のうち、23%の約7万6000件を発送できていない(6月26日時点)という。

 冒頭のメールでは、サクランボの代わりとなる返礼品の中から希望するものを選んで返信をするよう求められていた。代替品は「アンデスメロン(青肉) 秀2L 2玉」「紅花メロン(赤肉)とアンデスメロン(青肉)」「白桃 おまかせ品種 約2kg」「庄内柿 種無し柿 約3kg」「きららセット 各1箱(12個入り)」「【手打そば竜山】本格乾麺 10人前」の6種類。男性は桃を申し込んだという。

 寄付の金額に応じて全国の美味しい物や特産品が手に入る「ふるさと納税」。2023年度の寄付額は1兆円を超えたとされている。山形県はサクランボの生産量で全国1位、シェアは7~8割に達する。サクランボは、山形県内の自治体のふるさと納税返礼品としても人気は高く、寄付件数ベースで同県のふるさと納税の1割超を占める。

 今年の不作はどれほど深刻なのか。山形県東村山郡でふるさと納税返礼品用のサクランボも生産する農園を持つ男性が言う。

「人気品種・佐藤錦の収穫の時期に気温が30℃を超える日が続き、一気に『熟度』が収穫するレベルに達してしまいました。収穫できる期間は通常2週間くらいなのですが、今回は1週間でぜんぶ熟れてしまい、収穫しきれなかったり発送できないほど完熟になったりしてロスが出てしまったのです。

 他にも『高温障害』の状態になった果実がたくさんあった。様々な品種に被害が出たため、収穫量で言うと例年の半分くらいになり、返礼品を発送できないケースもありました」

 同県では、「紅秀峰」や「紅さやか」といった特徴的な品種も開発・生産されている。それらの品種を栽培する農家は「せっかく全国からも人気も高まって、いろいろな品種も頑張ってやっていたが、今年は大きな赤字になる。もうサクランボ農家を続けられないかもしれない」と落胆の声を寄せる。

“サクランボ不作”で、ふるさと納税を取り扱う業者も対応に追われている。冒頭のように代替品から選んでもらうだけではなく、様々な方法で寄付の返礼に対応しようとしているのだ。

 冒頭とは別の業者は「サクランボの代わりに、数倍の量の別のフルーツを送ることにしました。大きさも送料も違うので大変です」(担当者)と明かす。

また別の業者の担当者は「1年遅れで、2025年の収穫時に発送することをご案内しています。しかし、中には『来年にちゃんと実る保証がありますか』とご意見をいただくことも……」と漏らす。

 山形県でふるさと納税を取り扱う県産品・貿易振興課の担当者に聞くと「発送できない事態が起きていることは把握しています。県で返礼品の種類や数を決めることはしておりません」と語ったうえで、「全国的に右肩上がりのふるさと納税制度を今後も推進していく」という。県内の市町村のなかには、来期以降はサクランボの収穫量を想定して申し込みを受ける計画を立てているところもあるという。

 さまざまな努力が「実る」ことを祈りたい。

この記事の関連ニュース