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石丸伸二氏が共同会見で見せた右腕をお腹に当てる仕草 メディアを敵対視する言動に隠された本音を心理士が分析

NEWSポストセブン 2024年7月11日 16時15分

 2024年の東京都知事選挙が終わると、予想通りに3選を果たした小池百合子氏よりも、次点だった石丸伸二氏がメディアの取材や番組出演時に見せた言動に世間の関心は集まった。臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、強気な言動に覆われた本音や狙いについて考察する。

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 7月7日に行われた東京都知事選、現職の小池百合子氏が当選したが、大方の予想に反して2位になったのが前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏だ。一躍注目を浴び、次々とメディアの取材に応じたのはいいが、その態度や姿勢に「高圧的」「胸糞悪すぎ」「パワハラ臭ぷんぷん」「メッキが剥がれた」と批判が続出。映像を見ると、メディアに対してマウントを取らないと気が済まないのかと思えたほどだ。

 投票締め切り後すぐに小池氏の当確が報じられた石丸氏は、選挙事務所でこの結果を受けて挨拶を行った。爽やかな青のスーツの胸ポケットから、シンボルカラーの紫のチーフが覗いている。マイクの束をにぎると、集まった支援者たちに感謝を述べると、「私が話したいことは2つ、たぶん5分で会見が終わる」と口火を切る。「胸を張ってできることは全部やった」、「結果において都民の総意が表れた」というと、にこやかに会見を終わらせようとする。だがここから共同記者会見が始まった。

 まずNHKの記者が「及ばなかった要因」について質問すると、石丸氏は伏せた視線を下から持ち上げるように記者を見て「NHKを始め、マスメディアが当初全く扱わなかった」と満面の笑みを見せた。会場の支援者たちから歓声と拍手が沸く。石丸氏はその歓声に笑顔を見せると、記者に向かって射るような目で「そういう所」と左手で指差した。さらに湧き上がる支援者たちの拍手と歓声に、石丸氏は相好を崩し「まあまあまあ」と会場の声を抑えた。

 公約について「どんな点が有権者に届いたと思うか」と問われると少し考えてから、「特に力を入れたのは政治再建の部分」というが、さきほどより拍手は少ない。「今後、国政にもという思いは」という質問には「選択肢として考えます。例えば広島1区」と眉を上げて記者に頷いて見せるが、支援者たちからの反応はない。静まり返っている会場に気づくと、前を向き「あぁ岸田首相の選挙区です」とにこやかに微笑んだ。この会見中、支援者たちからの拍手や歓声が大きかったのは、石丸氏がメディアを敵対視する時や目立つ言動を行った時だった。

 共同会見といいながら次の質問が出てこない。会場を見回すと「終わり?」と笑い、「それなら」と自ら某番組の記者を指名する。続く記者の質問は都知事選の善戦を受け「皆さんの期待をどうやって維持していくか」。石丸氏の答えは「国民の目として耳としてマスメディアが奮起してくれることです」。支援者から拍手と歓声が上がる。ところが「本人の意見を」と聞いても質問の意図について「なんかわかるようでわからない」と答えない。時おり左手でマイクを握り、右腕をお腹に当てる仕草を見せる。自分の気持ちをなだめようとする仕草といわれるが、それが不安なのかいらだちなのかはわからない。質問が続かず、度々司会者が質問を促していく。

 今回の選挙で問題となった掲示板の販売、配信や切り抜きなどのコンテンツで選挙がビジネスになったことについて問われると、記者に対して「今の質問は問題を矮小化している」と説明。記者たちに不用意な質問をやめ、質問の仕方や内容を考えさせるきっかけにはなっただろう。「善戦したが、もっと上をめざしたかったのでは」と問われた時は、「なんという愚問。選挙に出る以上一番上を目指さないでどうします」と声を立てて笑った。その姿に会場は拍手喝采、石丸氏はドヤ顔だ。会場にいる支援者たちが大きく反応するのは、石丸氏がメディア批判をする時ばかりだ。

 TBSの番組でも彼の態度は変わらない。公約として挙げていた「東京一極集中の是正は都民に響いたか」と聞かれ、「TBSがあんまり報じなかったので響かなかったかも」と答える。どの質問にも素っ気なく高圧的で、キャスターもコメンテーターも質問が途切れ、表情が凍りついていく。メディアを敵対視しているようだが、それが”扱ってくれなかった””報じてくれなかった”という気持ちの裏返しのようにも見えてくる。

 日本テレビの番組では、社会学者の古市憲寿氏が「批判する政治屋と石丸さん自身がどう違うのか」と問いかけるも、「堂々巡りになっている気がする」と答えない。質問に対してかみ合わない答えをする石丸氏に「石丸構文」という名前がつき、ネット上で注目され評価されたが、攻撃は最大の武器としてマウントを取りに行っているだけのような気もする。

 スパっと切り口鮮やかにメディア批判する姿にスカっとした支援者、視聴者も多く、石丸氏の表情を見ると彼らからの拍手喝采は心地良いものだったはずだ。ネット戦に強いとはいえ、今回の対応で多くのメディアを敵に回してしまっただろう石丸氏。これからの選挙をどう戦うのだろうか。

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