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有識者が選ぶ「ポスト岸田に選んではいけない政治家」ランキング 石破氏は裏切りの過去、高市氏は細かすぎ、上川氏はアドリブ苦手…それぞれの厳しい評価

NEWSポストセブン 2024年7月25日 10時59分

 自民党総裁選まであと2か月となり、次から次へと「ポスト岸田」候補の政治家の名前が取り沙汰されるようになった。だが、果たしてそのなかに、失われた政治への信頼を取り戻し、低迷する日本経済を立て直し、外交も含めた今後の国の舵取りを任せられる政治家はいるのだろうか。国民は今度こそお祭り騒ぎの総裁選で誤魔化されないように、総裁候補の資質を見極めることが重要だ。

 そこで本誌・週刊ポストは、長年自民党政治を取材してきたジャーナリストや政治評論家、自民党OB政治家など7人の「政治のプロ」に名前の挙がっている総裁候補たちのなかから、「ポスト岸田の総理に選んではいけない政治家」と理由を挙げてもらってランキングにした。本記事では、ワースト1位に選ばれた小泉進次郎氏、2位の茂木敏充氏に続く政治家たちの評を紹介していこう。【全3回の第3回。第1回から読む】

※採点者は石橋文登氏(政治ジャーナリスト)、小林吉弥氏(政治評論家)、田中良紹氏(政治ジャーナリスト)、野上忠興氏(政治ジャーナリスト)、藤本順一氏(政治ジャーナリスト)、舛添要一氏(元東京都知事)、宮崎信行氏(政治ジャーナリスト)の7人(五十音順)。各氏が「ポスト岸田にしてはいけない政治家」を1~3人挙げ、順位をつけた。1位は5点、2位は3点、3位は1点で計算し、合計点数が高かった順にランキングにした(同点の議員は五十音順に並べた)。

仲間を裏切り続けた石破茂・元幹事長

「自民党はもう一度、謙虚で、正直で、公平で公正な党として再出発をしていきたい」

 街頭演説でそう語った石破茂・元幹事長はワースト3位。世論調査で「総理にふさわしい政治家」のトップにつけ、有力な総裁候補の1人と見られているが、識者の視線は厳しい。

 政治ジャーナリスト・藤本順一氏が語る。

「石破氏は7月4日の講演で『自民党総裁は公職ではない。だから、カネをばら撒く(やり方が横行してきた)。おかしくないですか』と発言した。確たる証拠を示さないまま、そんなことを言うのは自らが意欲を見せる総裁の地位を貶める発言です。石破氏は過去幾度も自民党を裏切っている。その石破氏が目先の選挙目当てで総裁に選ばれれば、それは自民党の自己否定につながる。総理を目指すなら野党第一党の代表として首班指名に挑むべきではないか」

 元産経新聞政治部長の政治ジャーナリスト・石橋文登氏は言う。

「苦しい時に仲間を裏切り、信頼関係を踏みにじってきた政治家。宮沢喜一内閣では政務次官でありながら内閣不信任案に賛成し、自民党を離党。復党した後も、麻生内閣では農水相でありながら麻生おろしに加担した。

2009年に自民党が下野すると復党をバックアップしてくれた額賀派(旧橋本派)を飛び出し、石破派を結成したが、2020年総裁選で菅氏に敗れると派閥会長を辞任して仲間はバラバラになった。政治家の歩みを追っただけでも自民党総裁にふさわしくない。政策面でも、経済・財政政策は財務省べったりで信用ならない」

 世論調査で人気の河野太郎・デジタル相も識者たちから広く票を集めてワースト5位につけた。元共同通信政治部次長で政治記者歴60年のベテラン政治ジャーナリスト・野上忠興氏が語る。

「議院内閣制の総理大臣は人の意見を聞き、まとめる力が重要になる。だが河野氏は自分の意見だけが正しいと思い、違う意見は頭から聞こうとしない。唯我独尊では政権運営はうまくいかない。そうした点は以前から指摘されていたが、脱皮する努力をしてきたようには見えず、人間的成長力が感じられない」

 厚労相や東京都知事を務めた国際政治学者の舛添要一氏もこう見る。

「デジタル推進はうまくいっておらず、党内で異端児的な点は問題です」

有力候補、高市早苗・経済安保相と上川陽子・外相の評価は

 自民党内からは、「初の女性総理」を誕生させれば国民の批判をかわせるとの声も上がっている。

 有力候補と見られているのが高市早苗・経済安保相と上川陽子・外相だ。

 高市氏は党内に勉強会「『日本のチカラ』研究会」を立ち上げ、講演で全国を回っているし、上川氏は総裁選出馬の可能性について「期待はありがたく受け止める」とやる気をのぞかせている。

 だが、高市氏は石破氏と同率のワースト3位、上川氏も6位につけた。

 政治ジャーナリストの宮崎信行氏の指摘だ。

「高市氏は総務相時代に森林環境税(今年6月導入)を創設したり、消防団員の処遇改善に応じない自治体の地方交付税を減らす仕組みをつくったり、政調会長時代には自らパソコンを打って前回総選挙の自民党公約をまとめるなど、政策が好きな勉強家だが、大臣なのに官僚がやるような細かいことまで自分でやらないと気が済まない。総理の仕事は大きな方針を決めること。高市氏がなれば、やることが細かすぎて党内をグリップするのも難しいのではないか」

「偏狭なナショナリズム、排外主義で安倍元首相に迎合してきた高市氏では国民の新たな政治ニーズを受け止めることはできない。過去の“マスコミ恫喝発言”のように、メディアへ政治介入するような政治家は総理にしてはいけない」(藤本氏)

 静岡県知事選の応援演説で「この方を私たち女性が生まずして何が女性でしょうか」と発言して批判を浴びた上川氏についても、「官僚人事では好き嫌いが激しく、意に沿わない官僚は飛ばす。国会質疑で野党議員から『上川外交に大いに期待している』とエールを送られてもうまく自分の言葉で返せない。アドリブが苦手なタイプ。首相の座が担える器には思えない」(宮崎氏)との評だ。

 ワースト上位に名前の挙がった政治家たちは、「選挙の顔」にはなれても、総理大臣として国の舵取りを任せるには実力不足との評価だった。

 これまでの自民党総裁選は、派閥の談合で流れが決まり、所属議員たちは派閥の親分が決めた候補に投票してきた。だが、麻生派以外の派閥は解散を決定しており、今回は「派閥の締め付け」が利かない初めての総裁選となりそうだ。それゆえ、小林鷹之・前経済安保相や斎藤健・経産相ら若手・中堅にもチャンスが生じうる。

 一方で、自民党の議員たちは従来以上に、「誰に投票すれば自分が選挙で生き残れるか」という選挙の顔選びに走る可能性が強い。

 国民は総裁選の投票権はないが、もし、自民党議員たちが“我が身可愛さ”で国を危うくするような総裁を選ぶようなら、来る総選挙で国民から手痛いしっぺ返しを受けると知るべきだ。

(了。第1回から読む)

※週刊ポスト2024年8月2日号

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