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「今から演じるのが楽しみです」帝国劇場『レ・ミゼラブル』出演の小林唯が語った高校時代の「進路変更」と現在の「意外な趣味」

NEWSポストセブン 2024年8月2日 17時30分

 ミュージカル出身アーティストが、地上波テレビの歌番組やドラマで活躍するケースが増えた。次にどんな魅力的な人が出てくるのか、期待されている。その一人が劇団四季出身の小林唯さん(31)だ。昨年末に退団したばかりながら、直近では、アンジェラ・アキが音楽を担当したミュージカル『この世界の片隅に』に出演し、年末から2025年にかけては帝国劇場ほかで上演されるミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演する。大作に次々キャスティングされている小林さんの素顔に迫った。

 * * *
──『この世界の片隅に』は劇団四季退団後の初作品。この5月に東京・有楽町の日生劇場でスタートし、札幌、岩手、新潟……と回り、7月28日の広島が最後となりました。

「僕は劇団でミュージカルをやってきましたが、ミュージカル以外の現場も経験してきた方たちとの共演は新鮮で、稽古の進め方から表現の仕方から、これまでとはだいぶ違いました。学んだことは山ほど。これまでは会場全体に届くように、大きく表現してきました。『この世界の片隅に』では、よりリアルな人間描写にアプローチするパーソナルなお芝居が必要だと感じました。今後はストレートプレイやドラマ、映画など映像でのお芝居にも挑戦したい気持ちが強くなりました」

──ステージ外での新しい楽しみもありましたか。

「劇団四季では同じメンバーでずっとやっていましたが、『この世界の片隅に』は3か月で解散ですから、共演仲間とは短い間により濃密な時間を共にしています。地方に行った際に観光地をドライブしたり、食事に行ったり。

 普段は初めて会う人に心を開くのはあまり得意ではなく、グルメでもないのですが、食べるのが好きな人に誘っていただいて、札幌ではお寿司、松本ではお蕎麦などをいただきました。お酒もたしなむ程度ですが、飲んで語りあったりも。このカンパニーは同世代が多いし、最初のアウェイから、今ではすっかりホームの感覚です(笑)」

──劇団四季からのファンの反応はいかがですか。

「『小林さんのお芝居が変わらず好きです』という手紙やSNSにメッセージをいただいています。お客さんが舞台に没入していただけるように、僕が変わらず、言葉やリアリティのあるお芝居を大事にしていることが伝わっているようで安心しました」

建築の専門学校に進学を決めていたが…

──大阪市立(現・大阪府立)咲くやこの花高校演劇科の卒業ですが、もともと俳優志望だったのですか。

「当時は軽い気持ちでした。ドラマや映画は人並みに観ていましたが、舞台はあまり観たことがなかったです。入学後は演技のレッスンをしたり観劇したり、放課後は卒業公演の舞台を作ったりして楽しかったのですが、のめり込むほどではありませんでした。

 建築士になろうと、建築の専門学校への進学を決めていた3年次のクリスマスイブに、友人に誘われて初めて劇団四季の『サウンド・オブ・ミュージック』を観て雷に打たれたような衝撃を受け、進路変更をしました。両親もアート系の仕事をしていたので、驚いていましたが応援してくれました」

──専門学校に通いながらミュージカルのレッスンを受け、20歳で劇団四季研究所に入所しています。短期間で夢への切符を手に入れたのですね。

「レッスンを受けたのは半年ほどだったので、入団時のオーディションでは技量はまだまだでも、可能性を感じてもらえたのかな、と思います。オーディションは手応えがあって、緊張しつつもとにかく楽しかったです」

──度胸があるのですね。緊張を楽しめるタイプですか。

「この仕事に限って、です。学校のテストや子どもの頃にやっていたスポーツの大会では、そんな度胸はありませんでした(笑)。スポーツは小学校1、2年の頃から水泳を。選手コースで平泳ぎを専門にし、中学時代は1日50メートルを100本、200メートルを30本泳いだりしていました。

 途中で水泳をやめ陸上部に入り、1500や3000、5000メートルの中・長距離を走っていました。出身の兵庫県はレベルが高いので練習がハード。おかげで根性はついたかな、と思います」

──水泳も陸上も“自分との戦い”という側面が強いスポーツのようですが、1人で黙々と努力するタイプでしょうか。

「努力とも思わずにやっていました。縄跳びも最初はできなかったので、家の前で1人でひたすら練習して、気付いたら三重跳びを50回できるようになっていたり(笑)。水泳もそうですが、他人と比べて、ではなく、自分ができないことが悔しくて、できるまで1人でひたすらやるタイプです」

DIYにキャンプ…持ち前の集中力で広がる趣味

──プロフィールを拝見すると、趣味が家具作りとなっています。

「コロナが流行していた3~4年ほど前、新しいテーブルが欲しいな、と思ったのがきっかけです。いくつか家具店を回ったのですがピンと来るものがなく、『だったら作ってみようかな』と。もともとモノ作りが好きで、美術の成績も良かったんです。

 木材や鉄脚を購入し、塗料を塗って、削って、ビスで接合して……作り出すとこだわりが止まらなくなって、鉄のワッシャーを噛ませて高さ調整したりして、気付いたら何時間もずっと集中していました(笑)。幅1.5メートルのテレビ台やナイトテーブルも作りました。こだわりは丈夫なこと! 重厚で、ダークウォールナットカラーで統一しています」

──集中力がすごいですね。

「ひとつのことに集中するとリフレッシュします。最近はキャンプを始めて、たき火を眺めると癒やされます。同じ事務所のピアニスト・大貫祐一郎さんはサウナ好きだそうなので、一緒にいったらキャンプサウナができるな、なんて話しています」

──8月にはコンサート「小林唯1st Concert 『Link』」を開催します。大貫さんはそのコンサートで音楽監督・ピアノを担当される方ですね。

「はい。新しい出会いに恵まれています。コンサートは初めてなので、自分の得意な歌を通して積み重ねてきたものをお届けし、お客さんに楽しんでいただけたら、と思っています。ステージに立ったとき、どんな気持ちになるのか……想像するとワクワクします」

──そして、年末にはミュージカル『レ・ミゼラブル』です。

「2019年に初めて『レ・ミゼラブル』の公演を観たときから、いつかは出演してみたかった作品です。僕の演じるアンジョルラスはカリスマ的な学生革命家のリーダーです。僕はみんなの中心に立って、周りを引っ張って行くタイプではないのですが……そういえば、高校時代は生徒会長や体育祭の応援団長をやっていたのを思い出しました(笑)。当時は選ばれて嬉しかったので、アンジョルラスのような側面も僕の中にあるのかもしれません。今から演じるのが楽しみです!」

【プロフィール】
小林唯(こばやし・ゆい)/1993年2月27日生まれ、兵庫県出身。大阪市立咲くやこの花高校演劇科卒業。2013年劇団四季研究所入所。同9月に『コーラスライン』で初舞台を踏み、その後『キャッツ』スキンブルシャンクス役、『アラジン』アラジン役、『パリのアメリカ人』アンリ・ボーレル役、『美女と野獣』ビースト役など数々の作品で主要な役を務める。2023年退団。幅広い音域の高い歌唱力が武器。直近では『この世界の片隅に』水原哲役で出演した。ミュージカル『レ・ミゼラブル』は2024年12月20日~2025年2月7日、「帝国劇場」(東京・丸の内)で上演予定。「小林唯1st Concert 『Link』」は、8月24日(土)15 :00/18:30、追加公演9月3日(火)「I’M A SHOW(アイマショウ)」(東京・有楽町)で開催予定。スペシャルゲストに昆夏美を迎える。
https://grand-arts.com/works/concert/kobayashi_yui_concert/

取材・文/中野裕子 撮影/山口比佐夫

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