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《シンガーソングライターAARONインタビュー後編》「見返してやりたい」から「恩返ししたい」 元日本一の空手少年が音楽で届けたいこと

NEWSポストセブン 2024年7月31日 11時15分

 ドラマ『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系、2023年)や『イップス』(フジテレビ系、2024年)の主題歌に起用されるなど、いま注目の歌手AARON。音楽活動を始めてわずか3年足らずで目覚ましい躍進を見せた彼だが、ここに至るまでには奇跡が重なった波乱万丈なヒストリーが隠されていた。初のソロライブを前に、デビューしてからの変化や「これから」について聞いた。(前後編の後編)

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──“偶然”の出会いを“必然”に変えてしまうパワーがすごいですね。ただ、音楽未経験者がどうやってキャッチーなメロディーを作れたのでしょうか?

「ピアノもギターも、楽器はなんもできないんですけど、できないからこそ、いままで売れてきた曲や自分がよく聞く歌、いいなと思う曲を客観的に分析できるし、こういうメロディーはみんな好きだろうと客観的な視点で楽曲制作できると思っています。サビの部分は複雑なメロディーを使わず、お子さんでも1回聞いたら歌える曲を作りたい。「ザ・ミスターキャッチー」と呼ばれたくて(笑い)」

──AARONさんのピースフルでキャッチーなメロディーと甘い歌声、癒しの笑顔、気さくな人柄は路上ライブでも瞬く間に話題となりました。最後の路上ライブは1000人集客されたとか。

「そうなんです。路上ライブはずっとしたくて。TikTokで“歌ってみた”動画をあげたらちょっとバズってフォロワーが1万人くらいになったので、ファンがついたタイミングで始めました。2022年5月14日から12月30日まで、計36回やりましたね。

 最初のうちは7〜8人しか集まらなかったのに、なぜか大阪だけ40人くらい集まってすごく賑わった路上ライブになったんです。調べたら、Instagramって大阪何%、東京何%って地域ごとのフォロワーの割合が見られるんですけど、大阪が多かったんです。だからそこでフォロワーが多い都市、5都市だけを回るようにして、ファンの皆さんにSNSで拡散してくださいってお願いして、僕もその動画を発信したりしました。気づいたら最後は1000人近くの人が集まってくれるようになって、嬉しかったですね。そこから現在の事務所の社長さんが声をかけてくださって、メジャーデビューが決まったんです」

──ファンサービスには8時間かけたこともあったと聞いています。そこまでファンを大事にするアーティストはなかなかいないです。

「いや、ぼくがすごいんじゃなくて、待っていてくださるファンのかたの方がすごいんですよ! そういえば、そこでもミラクルな出会いがあったんです。とあるおばあちゃんがライブに車椅子で来てくれたんです。だからおばあちゃんちょっと前へって呼びかけて、ファンのみなさんも協力してくれて見やすい場所に来ていただいて、ライブが終わった後には写真を撮ったりしていたんです。そしたらおばあちゃんが指輪をプレゼントしてくれて。だからぼくも自分の指輪を取って交換しましょうってプレゼントしたんです。

 で、その後『それってパクリじゃないですか?』の現場挨拶に行かせていただいたとき、プロデューサーさんと一緒に女性がいらしたんです。聞いたら、おばあちゃんの車椅子を押していた女性で、実は日本テレビの救護センターに勤めているらしくて「あの時は優しくしてくれてありがとう」とお礼を言いに来られたんです」

──ミラクルがたくさんあるんですね。そうしてメジャーデビューして1年ちょっと。結果を残してきていると思うんですが、あの頃の仲間に“見返して”やれましたか?

「『見返してやる』っていう気持ちは、いまはもう全くないですね。社長もマネージャーさんも、いまこうやってぼくに人生かけてくれる人たちがいるし、ずっと応援してきてくれているファンのみなさんに『恩返ししたい』と思っています。

 だって客観的に見ても、1年前までは路上で歌っていたのにいきなりドラマのタイアップに決まるとか、地上波のしかもゴールデンで歌っているとか、夢のようですよ。だから2年目は現実を見て、地に足つけて売れたいって強く思います」

──では今後の夢を聞かせてください。

「まずは武道館にアーティストとして立つこと!です。空手では何度も行ったので、今度は歌で立ちたいですね。

 あと役者もしたいんですよ。殺陣なら空手の経験を活かせるんじゃないかって何回もマネージャーさんに言っているんですけど(笑い)。それと絵も描きたいですね。絵を描くのは好きなので、いずれジャケ写を自分で描きたいなと思っています」

──やりたいことがいっぱいなんですね。空手から音楽へ、音楽から演技へ……新しいところに飛び込む怖さはないんですか?

「全くないです! それが楽しいというか。どんどんどんどん新しいところを見せていきたいなっていうのがありますね。

 そのためにもひとつひとつ結果を出していかないとと思っています。まずは初めてのワンマンライブを成功させること。過去の歌を交えてファンの方への感謝の気持ちをぎゅっと詰めてお届けできたらと思います」

【プロフィール】
AARON(あーろん)。1998年5月13日生まれ、福岡県出身。幼少期から空手に邁進し、中学1年時には全国1位に。その後空手推薦で高校は京都へ、大学は大阪へ進学するが、負傷の為断念。 新たな道を音楽に見据え、独学で音楽活動を開始。

友人と共同作業でトラック制作を始めSNSに投稿するとキャッチーでピースフルなサウンドが受け、2021年3月にリリースした『holiday song』は日本だけでなくアジアでも大人気に。2022年5月からは路上ライブをメインの活動とし、半年足らずで約1万5000 人以上を動員する。2023年4月にドラマ『それってパクリじゃないですか?』の主題歌『ユニーク』でメジャーデビューを果たし、続く2024年4月にはドラマ『イップス』の主題歌『フェイス』を担当。8月10日にはShibuyaWWWで初のワンマンライブ“THE BEGINNING”を開催予定。

撮影/栗原達也 ヘアメイク/KOBA(PUNCH) 取材・文/辻本幸路

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