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立地が魅力で自宅を新築したのに引っ越し 自宅裏の公園がネット掲示板で有名な“出会いの場”だった「子供部屋から行為が見える」

NEWSポストセブン 2024年8月1日 16時15分

 インターネットやSNSが普及したことで様々な物事が可視化されてきた。より広範囲に知識を得られる、都合の悪いことを隠そうとする動きを止める、というよい効果もある反面、不適切なものを不特定多数に見せる、押しつけるといったことがたびたび起きて、現実の世界でのトラブルに繋がっている。年齢などのゾーニングがない出会い系掲示板から発展する不適切行為が横行する場所の隣人や施設管理者の苦悩を、ライターの宮添優氏がレポートする。

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 今年6月、主要大手4紙の一つである産経新聞記事のタイトルに、実に堂々と「ハッテン場」の文字がおどり、ネットユーザーの一部が騒然とした。事情を知らない人には、いったい何のことか理解不能かもしれないが、新聞記者界隈ですらざわついたと話すのは、主要4紙の別の社に所属する社会部記者だ。

「ハッテン場とは、いわゆる同性愛志向の方が集まる場所のことを指し、諸説はありますが、恋愛関係にハッテン(発展)するという意味合いで使われているようです。ですが、性的かつ俗っぽい言葉であり、そもそも新聞記事でこうした言葉をみるとは思わず仰天しました。産経新聞の関係者によれば、ネット記事の閲覧者は相当数いたようで、実際に、産経新聞のホームページの人気ナンバーワンの記事は、しばらくこの記事でした」(大手紙社会部記者)

 というわけで、読者だけでなく同業記者まで驚き、ネット上では面白半分に扱われた当該記事だが、内容はいたって真面目で深刻だ。都内で長年銭湯経営を続けるAさん(70代)が顔をしかめる。

「うちの銭湯でも、男湯の中で怪しい行為に及ぶ客がこの数年で増えて、頭を悩ませていたのでやっとちゃんとした記事が出たと思いましたよ。何しろ警察に通報しても、恋愛は自由とか言われて取り合ってくれない。実際、一般の男性客を誘ったり、周りに見えるような形で性的行為に及んだ挙げ句、汚して帰っていく奴もいる。浴槽内を汚され、別の客からクレームが入ったこともある。取材に来た新聞記者が教えてくれたんだけど、うちのことが、ネット上(の掲示板に)に色々書かれているらしくてね。ここに行けば会えるとか、待ち合わせまでしているらしい。悪評が回ったんだろう、当然客は減ったね」(Aさん)

 Aさんによれば、銭湯内でのそういった類いの行動は、何十年も前からあったという。しかし、あくまで秘密裏に、こっそり行われることがほとんどだった。せいぜい脱衣場などで“いちゃつく”程度で、長年番頭を務めてきたAさんだから気がつくレベル。他の客の迷惑にならない限りは黙って見過ごしていた。しかしこの10年ほど、特にネット掲示板やSNSの利用者が多くなるにつれ、限度を大きく超えた迷惑行為に及ぶ人が増えたと断言する。そして、その迷惑行為は、銭湯以外の場所でもさらにエスカレートしている。

新築の隣にある公園がネット掲示板にあった

「裏手に大きな公園があり、その立地が魅力的で自宅を新築しました。でも、まさかこんな目に遭うとは思っていませんでした。私1人が住むのなら我慢できます。でも子供も妻もいる。文句をいうにも言えず……。だから泣く泣く引っ越したのです」

 ほとんど涙目で筆者にこう訴えるのは、南関東在住の会社員のBさん(40代)だ。およそ6年前に自宅を新築し3年が経過し、新型コロナウイルスの感染対策で世の中が一色になっていた頃、裏手にある公園内に、不穏な動きをする人たちがやってくることに気づいた。何度か目撃するうちに分かったのは、全員が男性で、ベンチに等間隔に座り、時刻はたいてい23時過ぎ。気になり始めると彼らの様子が独特なこともわかってくる。物色としか言いようがない感じでベンチに座る人の顔をのぞき込んだかと思えば、ハグをしたりキスをしたり、互いの股間に手をあてがう様子を何度も目撃したことで、彼らの事情を察したという。

「愕然としました。彼らがよく座っているベンチは、子供部屋やベランダからも見える位置で、いやでも気になる。すぐ自治体に相談して、公園内でいかがわしい行為をしないよう紙も貼られました。でも、そこには”迷惑行為をやめよう”としか書かれておらず、そのうち風雨で剥がれると、また男たちが集まりだしたんです」(Bさん)

 そして間も無く、Bさんは自宅裏の公園が、ネット掲示板でも有名な「ハッテン場」だったことを知り、卒倒しそうになったと振り返る。

「何時に公園のどこにいるとか、身長体重、誰に似ている、みたいなことが延々と書かれており、中にはその公園でどのような性行為をしたいなどが具体的に書かれており、吐き気を覚えました。公園内には実際、避妊具やアダルトグッズのゴミが放置までされている。ネット掲示板に書かれていたのは、公園だけではありません。近くのデパートの何階のトイレの個室とか、駅前の人の往来の激しい場所にある多目的トイレで性行為をするなど、かなり具体的に書かれていた。彼らは人に危害を加えるつもりはないかもしれない。でもそれは、子供たちには絶対に見せられない」(Bさん)

 かくして、せっかく建てた我が家から新築の自宅から半ば逃げ出すように引っ越したBさん。かなり強い口調で、こうした迷惑行為に及ぶ人たちを非難するが、当然、彼らを一括りにして批判するわけではないとも話す。

「別に同性愛がダメと言っていのではなく、男女のカップルであろうとも、人の迷惑になったり、人の気分を害するようなことをするな、と言いたいだけです。ですが、この顛末をSNS上に書き込むと、全く知らない人から差別だとか、考え方が古いとメッセージが届きました。役所に強くいっても、恋愛とか権利とか言われて話にならないんです」(Bさん)

 本来、公共施設や商業施設で設置目的と合致しない行為、しかもわいせつな行為に及べば、公然わいせつ罪や偽計業務妨害などの犯罪に該当する可能性が高い。だが実際には、逮捕や起訴に至る前例が少なく、被害者のほうが辛抱強く訴え続けねばならないなど様々な負担が大きいこともあって、事件化に至らないことが多い。何より最近は、自由恋愛で関係性を持つことの何が悪いのかと、論点をずらして強弁する当事者たちもいる。「そして、強い態度で出られると施設側も被害者も臆してしまいがちだ。

私の商売をする権利を実際に脅かしているのは誰か

 ネット上の掲示板には、出会いを求める書き込みが今も相次いでいる。その範囲は全国各地を網羅していて、筆者の自宅近くにある海に面した公園のベンチ、図書館脇のトイレ、さらに学校や保育園にも近い場所にある公園のトイレなど特定の詳細住所が待ち合わせ場所として、インターネットに接続できれば誰でも閲覧可能な状態で記入されていた。もちろん、その掲示板に書き込んで交流する人たちの目的が、単なる待ち合わせであれば問題視はされない。だが、前述のような問題が全国で相次いでいる以上、筆者としても相当の気味悪さを感じる。ポルノまがいのことが子供の目に触れるのはやはり気がかりだし、大人であっても時間も場所も好みも無視されて見せつけられたいものではないだろう。

 掲示板に何を書き込もうと言論の自由だし、同好の士との出会いを求めること自体は問題ではない。だがそれが、ところ構わず自分たちの流儀を周囲に押しつけるような、傲慢なやり方でよいはずはない。性的少数者への理解を深めることが現代の常識、とする識者の中には、迷惑行為、犯罪行為に及んだとしても寛大な気持ちを持つべきという意見を表明している人がいるのには、正直なところ驚いた。彼らの権利を認めることと、迷惑行為、ときには犯罪にも問えるようなことを許容するのは全く別の問題である。

 彼らに対して何も言わないから、もしくは注意しないから気づけないだけではないかというと、そういう訳では無いらしい。実際に、そうした現場の治安を守ろうと注意した人たちからは「文句を言ってもやめない、怒ると人権侵害と跳ね返され、こちらはそれ以上何も言えなくなってしまう」という声が上がる。その結果、残念ながら簡単な声かけで注意喚起をしておさまった時期は過ぎようとしている。だから、問題が大きくなってからしか被害を公に訴えられなかったと、前出の銭湯経営者Aさんが言う。

「昨日も今日も、そういう客が来た。あなたたちの権利を認めないわけじゃないが、その前に私の商売をする権利を実際に脅かしているのは誰か、と強く問いたいね。内部から非難の声が出ることを期待するね」(銭湯経営者Bさん)

 銭湯経営者が言うように、彼らと同じ性的志向を持つ人すべてが、迷惑をかけるようなやり方で出会いを求める人ではないことも事実である。ネット掲示板で堂々と具体的な情報交換をしているうちに、自分たちが適切とはいえない場所で適切ではない方法でもかまわず連絡を取り、施設の目的と相反する不適切行為に及んでいる、という事実と向き合えなくなっているのかもしれない。彼らのコミュニティーによる自浄能力に頼む気持ちが社会に残っているうちに、少しでも状況が改善されることを期待したい。

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