Infoseek 楽天

事故物件住みます芸人・松原タニシが明かすゾッとした話「森の奥で見た“制服を着せられた木”」「トンネル入り口にあった、髪の毛の束」

NEWSポストセブン 2024年7月31日 16時15分

 霊なんていない──そうかもしれない。ただ、今回紹介する話は実際にあった体験談を聞き、ありのままを書いている。それが心霊現象なのか、勘違いなのか、人の所業なのか……読んだあなたが判断してください。

「ぼくは殺人や自殺、孤独死のあった“事故物件”にばかり暮らし始めて12年になるのですが、そうなると、人が死んだ場所で生活することが当たり前となり、“怖い”と感じることが少なくなります。そもそもぼく自身に霊感のようなものはなく、不思議な経験をすることはあるのですが、霊を見たことはありません。ただ、“霊が見える”というかたに数多くお会いし、話を聞く中で“人の恐怖って何だろう?”と思うようになり、日々その答えを探しているんです」

 と話すのは、“事故物件住みます芸人”の松原タニシだ。めったなことでは恐怖を感じないという松原だが、それでも最近、ゾッとしたことがあったという。

行きにはなかったのに、帰りには…

「場所は言えないのですが、ある廃墟マニアの男性から“ちょっと変わった場所がある”と言われ、関西のとある森の中を案内してもらうことになりました。山道を歩き始めたのは夜11時。30分ほど歩いたところで、彼が突然、“あれ? 話し声が聞こえませんか?”などと言う。でも、真夜中の山中ですから、人がいるはずもありません。ぼくは聞こえなかったということもあり、とりあえず、お目当ての場所へそのまま向かうことになりました。

 どれほど歩いたのかわからなくなった頃、彼が“ああ、これだ”と、懐中電灯を当てました。そこには、首がない女子高生が……いたわけではなく、制服のブラウスとスカートを着せられた木がありました。すると彼は、“おかしいな、先週来たときはスカートだけだったのに、今日はブラウスも着ている”と──しかしその新しく着せられたというブラウスはすでに苔むしていて、近づいてよく見ると、下着まで着せられていました。

 彼が、“もう少し奥に行くと、ほかの制服を着せられた木もあるんですよ”と言うので、さらに20分ほど山中を進むと、今度は冬服を着せられた木や、キャミソールだけ、下着だけの木も……。“う~ん、1週間前に来たときと位置が変わっているなあ?”と首をかしげる彼。一体誰が何の目的で、衣類の配置を変えているのかわからないまま、見るべきものは見たとしてぼくたちは来た道を戻ることに。行きに通った場所にたどり着くと……そこには子供用の体操服を着せられた木が。これは明らかに行きの道中にはありませんでした。となると、たったいままで、ぼくたちのすぐ近くに誰かいたのか?──恐怖に慣れたぼくでも、すぐにその場を離れたくなりました」(松原・以下同)

 後で聞いた話によると、この場所は自殺の名所なのだという。

「行きにはなかったものが帰りにあった、という経験は度々しているのですが、この“制服の木”同様、忘れられないのは宮城県仙台市の葛岡墓園でのことです。墓園の中心にある給水塔を反時計回りに3周すると、女性の幽霊がついてきて、心霊現象が起こると聞いて行きました。

 ぼくはこの給水塔を反時計回りに13周もしたのですが、何も起こらない。この日はあきらめて墓園を離れ、帰りに、これまた心霊スポットとして知られる太白山トンネルに寄ったんです。ここは、死亡事故が多発した場所。せっかくだからトンネルに入って反対側の出口まで歩き、Uターンして入り口に戻りました。すると、入り口付近にある退避場所に長い髪の毛の束が落ちていたのです。“こんなもの、あったっけ?”と同行者と顔を見合わせましたが、誰もが首を横に振る。トンネルに入るときはなかった髪の毛……。もしかしたら、葛岡墓園から“何か”を連れてきたのかもしれないと思いました」

 後日、この話を仙台出身の知人にしたところ、次の告白をしてくれたという。

「私も高校生の頃、友達と葛岡墓園に行ったんです。夕暮れどきに肝試しでね。そうしたら、塔の前に女性が立っていて、塔に向かって手を振っていた。友達が“何をしているんですか?”と彼女に話しかけると、急にこちらを振り返って、ニコッと笑ったんです。なんだかゾッとして急いで逃げてきましたが、彼女は何をしていたのかな」

 いずれも見間違いかもしれない。霊の所業かわからない。というより、人が何らかの理由でやっているのかもしれない。しかし──。

事件のあった場所には負の思念がたまっている

「人の死など、何らかの事件があった場所に人は恐れを抱きます。そんな人々の負の思念が蓄積されると、何らかのエネルギーを生み、それがさらにあるはずもない現象を引き起こしていく……。そういった負の連鎖というものがあるように感じます。

 ぼくは、元禄時代に起きたとされる事件を基に創作された『四谷怪談』が好きなんですが、あれは歌舞伎の作者、四代目鶴屋南北による創作じゃないですか。でも、あの演目を上演するときは、出演者や関係者がいまだにゆかりの神社に参拝に行きます。これは、人が負の思念を作り出し、そこに災いを起こす呪いのエネルギーのようなものが発動するのを信じているからだと思うんです。

 ぼくはこの負の連鎖が生み出すパワーにとても興味があります。事故物件にも似たようなパワーが宿る。人の思いが何かを生み、それが時に人をのみ込み、恐怖を与えるのではないかと思っています」

 人の思念がたまる場所は、墓地や山中、トンネルだけではない。いつもの道にも、職場の一室にも、どこにでもある。うっかり入り込むと、恐怖にとらわれてしまうかもしれない。

【プロフィール】
松原タニシ/お笑い芸人、作家。事故物件に住みつつ全国の心霊スポットを訪れ、実際に経験した怪奇現象をYouTube『ぞわぞわチャンネル』で配信。新著に『恐い怪談』(二見書房)。

取材・文/前川亜紀

※女性セブン2024年8月8・15日号

この記事の関連ニュース