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暴力団幹部が語る高速道路でのあおり運転被害 相手は「真面目そうな中年タクシードライバー」、幹部がとった意外な行動とは?

NEWSポストセブン 2024年8月4日 16時15分

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、暴力団幹部が語る高速道路事情と、高速でのあおり運転被害について。

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 もうすぐお盆休みがやってくる。今年の連休も自家用車で実家に帰省する家族連れで、高速道路は何キロにもわたって渋滞するだろう。高速道路を走行するにあたりできれば避けたい渋滞だが、それより避けたいのが煽り運転の車だ。

「日常の移動は下道がほとんど」と話すのは暴力団幹部のW氏だ。どこにいくにも愛車のエコカーに乗り、高速ではなく下道を使うのは、ここ数年、高速道路の料金の支払いに家族ら名義のETCカードを使った詐欺容疑で逮捕され、有罪判決が出されて収監される暴力団幹部らが出ているからだ。以前はETCカードがなくても、料金所で現金払いもできた。だが首都高は多くの料金所で現金払いを受け付けなくなっているのだ。

 ETCを搭載していない車はサポートレーンに進む。ヤクザの車はそのほとんどがETCを搭載しているが、ETCカードが搭載されていない。だからサポートレーンへと進む。以前はここで現金払いができたが、今はクレジットカード払いしかできない。だがヤクザはクレジットカードを持たない。そもそも引き落としに必要な銀行口座がない。クレジットカードが使えない人は、後日、自宅へ送られる請求書で通行料を支払わなければならない。サポートレーンではそのための面倒な手続きが待っているのだ。

 車の中から手を伸ばし、料金所の男性が差し出す書類に住所や名前を明記する。書いた後は、本人確認のため運転免許証を提示する。そして免許証の住所で間違いないのかと聞かれることになる。ほとんどのヤクザは運転免許証を持っているが、そこに記された住所が現住所の者は多くないと聞く。請求書が送られてきても、下手をすれば宛先不明で戻されてしまう。支払いが未納になれば、すぐに警察が動くだろう。2025年度中にそのほとんどがETC専用になる首都高は、ヤクザにとって使いにくく不便な道路になりそうだ。

真面目そうな中年タクシードライバー

 さて、現金払いができた数年前の連休の昼下がりのこと。W氏は都内から高速道路に乗って千葉方面へ走っていた。道路は渋滞まではいかないが、交通量はそこそこあったという。覆面パトカーに注意しながら、法定速度を守って左車線を走行していたW氏は、「捕まるような無理な運転はしない」主義だ。バックミラーを見ると、追い越し車線を、スピードを上げてぐんぐん近づいてくる車が見えた。「セダンタイプの黒い車で、古い型式だった」。

 近づいてくる車をよく見ると、「天井に提灯がついていてね。都内でもよく見かけるタイプのタクシーだ。成田空港にでも急いで向かっていたのか、とにかくかなりのスピードで走ってきた。追い越し車線のその先にワゴンタイプの軽自動車が走っていてね。あっという間に追いついた」(W氏)。運転していたタクシードライバーは真面目そうな中年男性だったという。

 W氏の目の前でタクシーが車間距離を詰めて軽自動車を煽り始めた。ところが軽自動車は追い越し車線をどこうとしない。「気が付かないのか、どく気がないのか危ないな」とW氏は思ったらしい。タクシーは左車線から軽自動車を追い抜こうとしたが、W氏の前を走る左車線の車が邪魔でうまく追い越しができなかった。ここまでは、W氏もまだ煽り運転とは思わなかったという。

 タクシーはスピードを緩めると、左車線を走るW氏の後ろについた。「前の車と車間距離が十分あいていなかったので、そのまま走り続けたが、今度は俺を煽ってきた。追い越し車線に行こうとすると、タクシーも後ろをついてくる。走行車線に戻ると、スピードを上げて車の前に割り込み、スピードを落とす。完全に煽り運転だ。タクシーで煽るなんて、こいつ正気じゃないなと思ったよ」とW氏。

 追い越し車線にいた軽自動車が隣に並ぶと運転手が見えた。かなり高齢の男性だ。煽り運転をするタクシードライバーも、相手が悪いと思ったのだろうか。煽りのターゲットをシニア男性ではなく、ヤクザというよりヤンチャなイケオジ風に見えるW氏に的を絞っていた。「煽る方も相手を選んでいるのさ。シニア男性なんて煽ったら、すぐに事故を起こされる。ターゲットをオレにしたところから、たぶん常習者だ」とW氏は分析する。

 煽ったり、割り込んだり、蛇行運転したりを繰り返すタクシーに、W氏は車線を変更することなく、前を向いてそのまま走り続けた。「一般人は危ないと思ったら、その場からすぐに警察に通報した方がいい。オレたちはそうもいかないがね。警察の世話にはなりたくないから、やりすごすしかない。いいターゲットを選んだものだ」と話すW氏は、出口が近づいたところでハンドルを左に切り、高速を降りた。

 その後、どうしたのか?と聞くと、「東京タクシーセンターに通報した」という。「タクシー会社とナンバーがわかっていたからね。たぶん何らかの処分をされるだろう。ドライブレコーダーに記録があっても、警察に行くわけにもいかない。でも野放しにもできないからな」(W氏)。

 煽り運転に出会ってしまったら、すぐに警察に通報することをW氏はすすめている。

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