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【現役生活38年】三浦知良(57)、サッカーへの変わらぬ情熱「今は辞める理由が見つからない」 ポルトガルの日々を糧に「また鈴鹿で結果を出したい」

NEWSポストセブン 2024年8月8日 10時59分

「キング」──尊敬と親しみを込めてこう呼ばれる三浦知良(57)は、サッカーとともに人生を切り開いてきた。尽きぬ情熱、希望はどこから生まれるのか。現役生活38年目、7月から鈴鹿に復帰した“キング”は肉体と向き合い、走り続ける──。【カズ密着・前後編の後編】

サッカーに対する情熱は昔とまったく変わらない

 カズがブラジルから日本に帰国したのは、1990年7月のこと。プロリーグのスタートにあたって、フラグシップとなるカズの存在が必要と懇請されてのことだった。

 その後、Jリーグのトップスターとして、日本代表のエースとして、日本サッカーを牽引していく。プレーだけでなく、システムの改善、選手の待遇向上などいち選手の立場ながら次々と変革の狼煙をあげていった。

 1994年にアジア選手として初めてイタリアセリエAに挑戦。1997年のアジア地区最終予選ではワールドカップへの出場権を獲得する原動力となる。しかし、1998年のW杯フランス大会直前、メンバーから除外された。「日本をワールドカップに連れていく」と掲げてきたパイオニアの出場は叶わない。

 それでも、サッカーへの情熱を一度として失うことなく、指導者としての道を選ぶこともなく、現役プレイヤーであり続けることをひたすら追い求めてきた。

「サッカーに対する情熱は昔とまったく変わらない。練習ゲームでも紅白戦でも、自分が思っていたようなゴールがあげられれば、ああ、まだこういうプレーができるんだ、これぐらい強いキックが左足から出るんだと喜べる。まだ練習も若い選手とまったく同じようにできるし、気力も衰えてない。今は辞める理由が見つからないですよね」

ポルトガルでの1年半は全然ダメ

 もちろん、身体の軋みは至るところで起きている。筋肉や持久力の衰えがないはずもない。だが、数値上は至って健康だ。

「人間ドックはもちろん、毎月のように身体の検査をしています。肝臓、膵臓、前立腺、脳といつも数字を細かく見ている。特に心臓は心配で、チームの診断だけでなく自分でも検査に行く。でも、過去のデータと比べても悪くなってないし、先生からは『20代だ、大丈夫』と太鼓判を押されますよ。

 毎日朝晩、血圧も自分で測っています。たぶんそんな現役選手いないでしょう(笑)。僕も40代までは健康診断以外で血圧なんて測ったことはなかったし」

 シーズン中はアルコールを一切口にせず、ひたすら身体を鍛え、労り、整える日々。ポルトガルでも、鈴鹿でも、レジデンスと練習場、試合場を往復するだけの毎日。自宅に帰れば自分で洗濯し、掃除もするという。

「結局、どこで暮らしてもやることはほとんど同じ。サッカーを軸にして、その街で暮らす人と出会い、練習場に向かい、鍼をうち、超音波治療で深部をマッサージしたりと、身体をメンテナンスして次に備える。まあ、ほとんどの生活時間は、練習と試合への準備に費やされているわけです。

 自分の身体をいかに万全の状態でピッチにもっていけるか。僕のルーティーンはどんな場所に行ってもびっくりするくらい不変だし、そういう環境を自分で作り出してきたんです。よりよいサッカーをするために」

 そんな規則正しい“合宿生活”を倦むことなくもう何十年も続けてきたのがキングカズなのだ。

「たしかに合宿みたいだけど、サッカーをできる環境を与えてもらっているということ自体、幸せでしょ。みんなに助けられて、支えられて、楽しいですよ。

 もちろん、出場時間は少なくなっているし、結果も思うようには出ていない。ポルトガルの1年半にしてもプロとしては全然ダメだと思う。だけど自分の人生にとって、ポルトガルのサッカー文化、生活を味わえたすごく大きな1年半だった。その日々を糧にして、また鈴鹿で結果を出したいし、ひとつでも多くゴールしたい──今はそれだけしか考えていません。その希望も情熱も自分の中からまったく消えていないんです」

(前編から読む)

取材・文/一志治夫 撮影/関めぐみ

※週刊ポスト2024年8月16・23日号

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