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《83歳にして大河ドラマ出演決定》俳優・石坂浩二、若さを保つ秘訣はプラモデル・プロ野球・料理 終活は「する気はない。なるようになりますよ」

NEWSポストセブン 2024年8月10日 15時59分

 来年のNHK大河ドラマ『べらぼう』への出演が発表された俳優の石坂浩二(83)。今年で芸歴66年となったが、昔からの印象は変わらぬまま、その演技と存在感は年々深みを増している。そんな石坂浩二に「老い」への向き合い方を聞いた。【前後編の後編。前編から読む】

プラモデルとプロ野球

 昔から多趣味で知られる石坂浩二。12年連続で二科展入選など画家としての評価も高いが、特に力を入れるのが「プラモデル」だ。

「15年ほど前、団塊の世代が一気に定年退職を迎えましたよね。その時、女性はいろいろな趣味があるけど、リタイアした男性は自宅でぼんやりして孤独感に苛まれると話題になりました。

 そこで何かできないかと思いついたのがプラモデル。みんな子供の頃に通ってきた道だし、高齢男性が抱える孤独感を少しは解消できるのでは、と考えたんです」(石坂・以下「 」内同)

 同世代を元気づけるため、2009年にプラモデルのサークル「ろうがんず」を結成。現在は最年長の86歳以下、14人のメンバーが在籍して展覧会など精力的に活動している。

「グループ名は『老眼』から取りましたが、年に2回の展覧会で会場のテーブルを運ぶことが体力的にしんどくなってきた。それで『老眼なんてどうでもいいから若いやつを入れよう』となって、40代を2人入れました」

 東京生まれの石坂は意外にも生粋の阪神ファンだ。『べらぼう』で共演する渡辺謙(64)とは阪神ネタで盛り上がるという。

「謙さんは甲子園近くに連泊して試合を見ることもあるそうです。今年の阪神は去年の“アレ”と違って伸び悩んでいますが、私はタイガースの独特な雰囲気が好きなので、負けてもそれほどガックリしない。むしろ上手くいきすぎてもモヤっとするし、苦労もまた“味”として楽しんでいます」

 ひとつのことをずっとやり続けるよりも、いろいろなことを少しずつやることを好む。プラモデルやプロ野球といった“昭和的”な趣味を持つ石坂は「僕はアナログなものが好きなんです」と語る。

「絵を描くのも戦時中の疎開先で始めました。スマホはあまり使わず、家の電話は不在時に出られないので、大切な連絡は必ずファックスしてもらいます。相手には嫌がられるけど、ファックスなら確実に見ますから」

「どうしたって老いる」

 矍鑠とした生活の土台には「家」がある。何より落ち着くのは自宅で台本を読んでいる時で、家にいる時は台所に立って料理に腕を振るう。

「中学生の頃に母が病気になり、私が料理を始めたんです。金田一シリーズでは牛肉ばかり食べたがる市川監督のために毎回頭を悩ませながらお昼ご飯を作りました。

 映画『私は貝になりたい』(2008年)では中居(正広)くんが減量で苦しんでいたので、オールアップの日にカツカレーを振る舞った。いまも家では毎晩妻の分まで私が出汁から取って作ります。知ってます? いい鰹節は味が段違いなんですよ。妻はそこまで拘らない人だから、我が家は私がいなくなったら妻が困るんじゃないかな(笑)」

 妻は「ろうがんず」のメンバーでもあり、夫婦でプラモデル作りを愉しんでいるという。

 仕事もプライベートも充実する一方の石坂だが、年々、大事にするようになったことがある。

「大切なのは『肯定』と『否定』を半分ずつ持つこと。たとえばテレビや芸能界を50%は肯定するけど50%は否定します。肯定がないと落ち着けないし、否定がないと変化や進化が生まれません。これは仕事に限らず、人生のあらゆることに通じる考え方だと思います」

 自らの「引き際」をどう考えるのか──。石坂は少し間を置いて、「その問いは本当に難しいですね」とつぶやいた。

「いろいろなことを少しずつ辞めるのか、一度に辞めたほうがいいのか。難しい問題だからあまり考えないようにしています。とはいえ、これから体にガタが来たらどうするかは考えておく必要がある。ただ、どうしたって老いていく。うまくいっていることや流れには“逆らわないほうがいい”と思うようにしています」

 最近、「終活」という言葉が定着し、人生の終わりに向かって準備を進める人が増えてきた。だが、石坂は無関心だという。

「団塊世代がどーんとリタイアしたから、その人たち向けの話題で『終活』が出てきたのでしょう。私の周りで終活の話をする人はいないし、している人も知りません。僕もする気はないし、まぁ、なるようになりますよ」

(了。前編から読む)

※週刊ポスト8月16・23日号

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