Infoseek 楽天

パリ五輪が浮き彫りにしたネットの愚 その「中毒度」をチェックしよう

NEWSポストセブン 2024年8月10日 16時15分

 行動様式の変化がメンタルに与える影響は小さくない。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *

 パリ五輪も、いよいよ終盤。日本選手の活躍に声援や拍手を送ったり、惜敗に悔しい思いをしたりなど、寝不足が続いた人も多かったのではないでしょうか。その競技を見るのはほぼ初めてというニワカファンもドンと受け止めて、素晴らしい技や戦いっぷりで感動させてくれるのが、オリンピックの魅力であり懐の深さです。

 今回のパリ五輪では、ネットやSNS上での選手に対する誹謗中傷が話題になりました。具体例を挙げるのは控えますが、一生懸命に全力で戦った選手に対して、何もしていない側が安全圏から言葉の刃を突きさすのは、あまりにも残念で情けない光景です。

 これまで選手側は、ほぼ言われっぱなしでした。しかし今回は、日本オリンピック委員会(JOC)が緊急声明を出したり、関係者やチームメイトが仲間を守る投稿をしたりなど、これまでにはなかった動きも見られます。

 もちろん、ごくごく一部の人がやっていることではありますが、選手に対する誹謗中傷がネット上にあふれたことは、あらためて「ネットの怖さ」や「ネットの愚かさ」を浮き彫りにしました。「人間の怖さ」や「人間の愚かさ」と言い換えてもいいでしょう。ネットを使っている限り、誰もが落とし穴にはまる可能性があります。

「ネット中毒度チェック」で自分の中に潜む危険性を自覚しよう

 ふと気が付いたら、自分もネットのコメント欄やSNSに誹謗中傷を書き込んでいた――なんてことになったら、目も当てられません。お天道様にもご先祖様にも顔向けできないし、家族や友人知人に「じつは、こんなことしちゃって」と話すのは絶対に嫌です。ほとんどの場合、本人はダメなことをしている自覚がなさそうなのも怖いところ。

 転ばぬ先の杖というか、自分の中に潜んでいる危険性の把握というか、そのあたりを目指して「ネット中毒度チェック(別名;ネットに振り回されている度チェック)」を作ってみました。次の5つの項目のうち、自分に当てはまるものはいくつありますか。

その1〈「オリンピック選手に対する誹謗中傷」のニュースを見て、「傷つくぐらいならネットなんか見なければいいのに」と思った〉

その2〈不倫がバレた芸能人などに関して、自分の価値判断ではなく「世間がどう反応しそうか」を基準に意見を決めている気がする〉

その3〈自分は加担しないにせよ、誰かがバッシングされたり炎上したりしている様子を見るのは楽しいし、留飲を下げることもある〉

その4〈相手に面と向かっては言えないことをネットに書き込んだことがある。もしくは、実名なら言えないことを匿名で書き込んだことがある〉

その5〈1~4のようなことは今では当たり前すぎて、ネット中毒かどうかを判断する基準にはならないのではないか……と感じた〉

 4~5個当てはまった人は、重度のネット中毒です。生活も考え方もネット中心になっていることを自覚しましょう。ネット断捨離を行なうなど、今すぐ手を打ちたいところ。そうしないと、こういったそもそもあてにならない診断結果に対してネット上でブチブチと反論するなど、残念な行動を続けて人生を終えることになりかねません。

 2~3個当てはまった人は、自覚症状はないかもしれませんが、十分にリスクを抱えています。なるべくネットから離れて、生身の人間と接する時間を増やしましょう。生活習慣病の予防と同じで、食事や睡眠を充実させることもたぶん大切です。

 当てはまったのが0~1個の人は、自分をそれなりに抑えながらネットと付き合えていると言えるでしょう。しかし、くれぐれも油断は禁物。実生活で嫌なことがあったり気持ちが弱っていたりすると、ネットはすぐにあなたを陥れようとします。

それぞれの項目は、なぜよくない兆候を示していると言えるのか

 それぞれの項目が当てはまると、なぜネット中毒が疑われるのか。簡単にご説明します。

「その1」は、完全に誹謗中傷する側に寄り添った言い種。「いじめられるのが嫌なら学校に来るな」と言っているのと同じです。誹謗中傷する側より見る側を責めているところに、何かきっかけさえあればすぐ弱い者いじめに加担する気配が伺えます。

「その2」のように、自分で善悪を判断することを放棄して、「世間がどう言いそうか」を基準に、というか風向きを見つつ「自分の意見」を決める人は少なくありません。ま、ネットがなかった頃から、そういう人はたくさんいたのかもしれませんけど。

「その3」は、いわば人間の本能を刺激しているわけで、やむを得ない一面もあります。ただ、そういう自分に対する罪悪感や恥ずかしさを忘れてしまうと、バッシングや炎上や誹謗中傷に加担する人になってしまうまで、あと一歩と言えるでしょう。

「その4」も、多くの人がそういう行為の卑劣さや無意味さを忘れています。そもそも面と向かって言えないことは言わなくていいことだし、匿名じゃないと言えないこともしかり。ネットの魔力に振り回されて、余計なことを書きこむ必要はありません。「その5」に当てはまった人は、ネットが作り上げた価値観にどっぷり首までつかっています。

 ネットもSNSも本来は便利でありがたいツールであり、もはや縁を切るわけには行きません。なるべくいい関係を続けていく上で、このチェックテストが少しでもお役に立てたら幸せです。何の役にも立たないと感じたとしたら、それはあなたがネットと健全に付き合っている証拠。せめて「ホッとしてもらう」ということでお役に立てたら幸いです。

この記事の関連ニュース