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《江戸は2度壊滅した》“南海トラフ”と“首都直下地震”の歴史、起こりうる“同時発生”のリスク「最悪の場合30万人以上の死者が想定」

NEWSポストセブン 2024年8月14日 11時45分

 8月8日の夕刻、宮崎県で震度6弱を観測するなど、マグニチュード7.1の強い地震が発生した。それを受けて気象庁は同日夜に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表。地震発生から1週間ほどは、最大震度6弱程度の地震に注意するよう呼びかけており、まもなくその1週間が経過する。

 同庁はこの南海トラフ地震臨時情報について、「特定の期間中に⼤規模地震が必ず発⽣するということをお知らせするものではありません」と念押ししつつ、「南海トラフ地震の想定震源域では、新たな⼤規模地震の発⽣可能性が平常時と⽐べて相対的に⾼まっていると考えられます。今後、もし⼤規模地震が発⽣すると、強い揺れや⾼い津波を⽣じると考えられます」として、対策を呼びかけている。

 今回の地震で大きく話題になっている「南海トラフ地震」。駿河湾から日向灘沖までの範囲で隣接する2つのプレートが動くことで生じる地震だが、日本は同エリアでの地震を複数回経験してきた歴史がある。名古屋大学の福和伸夫名誉教授が解説する。

「南海トラフ地震の影響は甚大で、過去には歴史の転換点につながったこともありました。1707年には、南海トラフの震源域全体がほぼ同時に動いた『宝永地震』が起きましたが、同年12月16日には富士山が噴火。元禄文化のもと育まれてきた街並みは大きな被害を受け、江戸幕府は社会不安に応える改革を余儀なくされました。

 次に起きた大きな地震は、1854年の『安政地震』。東西の震源域に分かれ、約30時間差で地震が起きました。時間差での発生には注意が必要です。その翌年に起きた江戸の直下地震も甚大な被害を出し、江戸は2度地震で壊滅したんです。幕府滅亡の背景には、続く災害が財政に痛手となったこともあったと考えられます」

 直近で起きた南海トラフ地震は、第二次世界大戦の終結を挟んで生じたものだった。

「1944年12月の昭和東南海地震、1946年12月の昭和南海地震と、震源地の東と西で約2年の時間差で大地震が起きました。前者の地震は名古屋周辺の軍需産業に被害を与え戦況は悪化、日本敗戦の原因の一つにもなったと考えられます」

「南海トラフ」と「直下型」同時発生の可能性

 以上の歴史を踏まえ、福和教授は今後について大きな懸念があると指摘する。

「南海トラフの危険が高まる中で、同時に『首都直下地震』のリスクがある。直下型の地震は100年単位で生じやすくなるというデータがあるが、今年は関東大震災(1923年)から101年の年。このタイミングで南海トラフが起きたら、その前後に直下型がくる可能性も十分にあります。南海トラフ地震では、最悪の場合32万3000人の死者が想定されている。直下型地震はここまではいかない想定ですが、同時に起これば甚大な被害が想定されます」

 巨大地震が生じる可能性が高まっている現状で、福和教授は「国民1人1人が対策を実行に移せているとは言い難い」と警鐘を鳴らす。

「今回気象庁が発表した『南海トラフ臨時情報』は、今回の地震までほとんどの国民が知らなかったはず。防災に関しても、例えば家具の固定も進んでいませんし、まだまだ危機感が足りません。残念ながらこれがこの国の実情です。

 視点を変えると、今回の地震は日本を作り直すチャンスでもある。今だったら多くの人が“自分ごと”として捉えられますから。私が南海トラフを想定して監修した漫画(『マンガで解説! 南海トラフ地震その日が来たら…』、気象庁HP上で公開中)も多くの人が自分ごととして捉えられるようにと考えて作りましたが、今準備をしておけば有事の際に動けるんです。津波が怖いという方が多いですが、津波だけではなく具体的に大地震が起きたら水とか電気とかはどうなるんだとか、まだまだ事前に知っておくべきことは多い。当事者意識をもって備えておくことがこの国を救うことになると信じています」

 8日に起きた宮崎の地震以降、日向灘や大隅半島東方沖では12日正午までに震度1以上の揺れを複数回観測しているという。気象庁は引き続き、最大震度6弱程度の地震に注意するよう呼びかけている。

◆『マンガで解説!南海トラフ地震その日が来たら・・・』は下の気象庁公式サイトで閲覧できます

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nteq_manga/index.html

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