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銀メダル・玉井陸斗を飛び込みの世界に導いた“86歳師匠”が語った「頑張りすぎたらアカン」の真意と「4年後への展望」

NEWSポストセブン 2024年8月18日 16時15分

 パリ五輪男子高飛び込みで銀メダルを獲得した玉井陸斗(17)。日本飛び込み界で初めて表彰台に立つ快挙だった。

 玉井を飛び込みの世界へ導いたのは、所属するJSS宝塚スイミングスクールでコーチを務める馬淵かの子氏(86)だ。メルボルン、ローマ、東京と3大会続けて代表となった飛び込み界のレジェンドで、小学1年生の玉井が飛び込みの体験教室に来た際にその才能を見出した。玉井とは69歳差の師弟関係になる。今大会での演技について馬淵氏が振り返る。

「五輪の前、本人に『私にはあんまり時間がないんよ。今回メダルを獲ってもらわんと、あと4年と言われたら困るで……』と脅したんです(笑)。銀メダルを獲った直後には、五輪に同伴していた(馬淵)崇英コーチ【※】から報告の電話が入りました。涙が出ましたよ」

【※中国出身の馬淵崇英氏は、馬淵かの子氏からの誘いでJSS宝塚のコーチに就任。1998年に日本国籍を取得した際に、「馬淵」姓となった】

 一方で、師匠の目から見て「もったいなかった」と悔しがる場面がある。

 男子高飛び込みは6種類の技を行ない、その合計点で競う。決勝での玉井は4本目までは五輪王者の曹縁(中国)と金メダルを争っていたが、得意とする5本目「307C(前逆宙返り3回半抱型)」を失敗して3位に。最終6本目に「5255B(後ろ宙返り2回半2回半捻り蝦型)」をノースプラッシュで決め、99.00の高得点を叩き出した。

「5本目を失敗した時は、心臓が止まりましたわ。玉井君には『頑張ったらアカンで』とずっと言ってたんです。いつもより回転が速くてオーバー(入水角度が完全な形の入水よりも行きすぎてしまった状態)になっていた。いつも通りにやればいいのに……。5本目には自信があるから“金メダルを決めてやろう”と思ったんやと思う。『あんた、頑張りすぎたな』と頭をコツンと叩いてやろうかなと思っています(笑)。でも、こういう失敗は今後に必ず生きるでしょう」

 4年後のロス五輪で金メダルを狙うために重要となるのが進学先だ。

 玉井は現在、須磨学園高(兵庫)3年生で、JSS宝塚で崇英コーチの下で練習をしているが、「飛び込み競技は練習場所が少ないことが課題とされているため、進学のタイミングでどこを選ぶかが重要となる」(スポーツ紙記者)のだ。その点について、馬淵氏はこう言う。

「今年1月、立命館大学が崇英コーチを監督として『滋賀・立命館ダイビングクラブ』を設立しましたが、玉井君も所属すると聞いている。高校卒業後も崇英コーチと二人三脚で金メダルを目指していけるので安心です」

 次のオリンピックではより成長した姿に期待だ。

※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号

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