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【レジェンドOBのプロ野球再生案】権藤博氏はCSに怒り「馬鹿げていますよ、どう見ても納得できない。こんな制度を作って恥ずかしくないのか」

NEWSポストセブン 2024年8月19日 11時15分

 プロ野球のレジェンドたちの目に、令和の日本球界はどう映っているのか。本誌・週刊ポストの名物企画「言わずに死ねるか!」球界編では、大物OBたちの率直な見解を聞いた。第1回は権藤博氏(85)。1961年に中日に入団すると、ルーキーイヤーから「権藤、権藤、雨、権藤」といわれるほどの連投を見せた。1年目から69試合に登板(うち先発44試合)。32試合に完投して35勝19敗の成績を残している。全力投球で驚異的な実績を残した権藤氏は、令和の球界が“安きに流れている”との危惧を抱く。【全5回の第1回】

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 そろそろ見直すべき時じゃないですかね。クライマックスシリーズ(CS)ですよ。やること自体が間違っている。143試合もあるペナントレースの意味がなくなるじゃないですか。

 大リーグのポストシーズンを真似た制度だが、ア・リーグとナ・リーグは合わせて30球団もあり、それぞれに東、中、西の3地区があって6つの地区優勝チームがある。これに勝率上位のチームをワイルドカードとして加えることの賛否はあるものの、それでも各地区の優勝チームが主体となった争いになる。納得ができるポストシーズンになっている。

 一方の日本はそれを形だけ模倣して、ペナント終盤に消化試合がなくなるからと6球団のうち3球団も拾われるシステムになっている。たった6球団しかないのに、3球団が“合格”だなんて、馬鹿げていますよ。薄っぺらすぎる仕組みで、どう見ても納得できるものではない。

ペナントはCSの予選か

 今シーズンのパ・リーグはソフトバンクが2位以下を10ゲーム近く離して独走していますが、短期決戦のCSじゃどうなるかわからないですよ。143試合のペナントレースはマラソンみたいなもので、力があるチームが勝ちます。一方のCSは、マラソンで優勝したチームがレース後にトラックに場所を移して短距離で勝負するようなもの。

 これまでも広島や巨人、西武、ソフトバンクのようにリーグ優勝しながらCSで敗退したケースがある。2017年の広島は14.5ゲーム離した3位のDeNAに敗れて日本シリーズに出られなかったが、これじゃペナントレースは何なんだと。予選かということになる。CS出場を決める予選だとすれば、ペナントレースは長すぎるって。

 一方、今季のセ・リーグの首位攻防戦は非常に見応えがある。過去にはペナントレースの最終戦で優勝が決まったシーズンもありますが、そんな展開になるかもしれない。そうして最終戦まで盛り上がってリーグ優勝を勝ち取ったチームが、直後のCSで敗退したらどうですか。

 私たちがやっていた頃は、優勝しなければ2位も6位も一緒でした。それが3球団も喜ぶということになる。喜ぶファンは増えるだろうが、“3位に入ればどうにかなる”という仕組みが、ペナントレースの戦いにまで影響を与えていることが問題なんです。

 シーズン終盤になれば、1位、2位に引き離されたチームが3位狙いの戦い方をするようになる。エース級は上位球団との対戦を回避し、下位球団に当てる。優勝争いそっちのけで下位球団が3位争いをする。3位に入ればいいというルールなんだから、そういう戦いになる。結果、下位チームが優勝争いをかき混ぜるようなことがなくなってしまった。

こんな制度を作って恥ずかしくないのか

 でも、このCSはなくならないと思います。優勝するチーム以外は嬉しいもの。もう各球団はやめられないですよ。

 昔は優勝できなければ、2位のチームでもV逸の責任を取らされたものだが、半分のチームがなんとなく責任を取らなくて済む。3位と4位がえらい違いになるというだけで、1位も3位も変わらんわけです。3位以内を期待するファンが球場に来るから球団も増収が見込める。経営者もおいしい。

 でも、プロとしてお金をもらって優勝を目指してやっているわけです。フロントが戦力を集め、監督は預かった戦力で優勝を目指し、選手も頑張る。それが最後まで優勝を目指さないならプロ失格じゃないですか。

 制度を改めるにはファンの声しかないですが、2位、3位のチームのファンがCSを喜ぶからなくならない。(1位のチームに)1勝のアドバンテージを付けても何の意味もない。ハンデをつけるなら10ゲーム離れたら10勝のアドバンテージを出さないといけない。でも、それだと4勝すればいいというCSは成り立たないわけです。そんなバカげた試合をやっているということ。

 こんな制度を作って恥ずかしくないのかと思うが、みんな思っていないわけです。楽なほうに流れるんですよ。優勝しなくても、とにかく3位に入ればいいんだからね。“秋にどんなドラマが起きるか”などと言っているが、悪いけどこんなのはドラマとはいわないんですよ。

(第2回へ続く)

【プロフィール】
権藤博(ごんどう・ひろし)/1938年、佐賀県生まれ。1961年に中日に入団。ルーキーイヤーから「権藤、権藤、雨、権藤」といわれるほどの連投を見せた。1年目は69試合にして35勝19敗、310奪三振、防御率1.70で新人王、最多勝、最優秀防御率を獲得。新人ながら沢村賞にも輝いた。2年目も登板61試合、30勝17敗で2年連続最多勝を獲得した。3年目は右肩痛により成績が急落。それでも45試合に登板し、10勝12敗で220.2イニングを投げ、88奪三振、防御率1.29だった。監督としては横浜を率いて1998年に日本一に輝いている。

※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号

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