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【レジェンドOBがプロ野球を斬る】福本豊氏、“今季はボールが飛ばない”を論破「バットの芯に当たってへんだけ。芯に当たった打球は遠くまで飛んでますやん」

NEWSポストセブン 2024年8月20日 16時15分

 プロ野球のレジェンドたちに令和の日本球界の課題を聞いていく本誌・週刊ポストの名物企画「言わずに死ねるか!」球界編。通算1065盗塁の「世界の盗塁王」であり、先頭打者本塁打43本、通算三塁打115本などの日本記録を持つ福本豊氏(76)に、今季の「投稿打低」について、どのような見解なのかを聞いた。【全5回の第2回。第1回から読む】

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 今シーズンはどのチームも得点力不足で極端な投高打低。たしかにピッチャーのボールが速くなったとは思うけど、ボクはバッターの打ち方が変わったんちゃうかなと思っている。

 あんなアッパースイングではなかなかボールには当たらへんわな。“フライボール革命”とか言って打球に角度を付けようとしているのか、大きいのを打つことを意識しすぎているのかわからんが、バットが下から出ている打者が多い。あれじゃ速いボールには振り遅れるし、甘い球も打ち損じてしまう。

 昔から速いピッチャーはそういうスイングをさせて空振りを取ってきた。阪急の山口高志や巨人の江川卓がそう。高目の速いストレートを投げ込み、下からバットを出させて空振りさせていた。

 いつの時代も打撃の基本はレベルスイングで振り抜くこと。レベルスイングでストライクゾーンだけ振れば、打率が2割台前半になることはない。ストライクを振らんことにはヒットになりにくいわな。ボールをボンボン振る人は率が悪い。

 もちろん打てない時は練習しかない。ボクが教わった西本幸雄さんがそうだったけど、どうやればバットがレベルに出るのか、徹底的にバットの振り込みをさせられたものです。バットがレベルに出るのか、下から出るのかでは大違いやからね。

今はデータが多すぎる

 長打が出ない時はランナーに出て、走って次の塁を狙うことも有効かもしれん。守備と走塁はスランプがないといわれるくらいだから。昔はランナーに出たら走り、守備でミスをしたら特守を志願した。

 長打が出ないなかで、勘違いしているバッターも少なくない。「ボールが飛ばない」と言う選手もいるが、ボクに言わせれば“芯に当たってないんやから飛ばんやろ”と思うね。芯に当たった打球は綺麗な放物線を描いて遠くまで飛んでますやん。

 要はボールをきちんと捉えなアカンのやから、やっぱりレベルスイングを心懸けるしかないんちゃうかな。それでスイングが速い人は遠くに飛ぶし、遅い人でもヒットゾーンに飛ぶ。捉える確率を高くするには、タイミングよく打つこと。

 ボクも現役時代はシュートを投げてくる右ピッチャーは、シュートが気になってスライダーでやられるケースが多かった。左の変則モーションの永射保を苦手にしていた左バッターは多かったし、右バッターなら右のアンダースローの山田久志はやりづらかったようです。それでも研究して、球の出所を見ていると攻略することができた。

 ただ、今の選手はデータが多すぎるようにも思うけどね。データというカッコいい言い方をするけど、相手の情報が多すぎることでヤマを張るということにつながっているように思う。シンプルにストライクゾーンの球を振る。強い気持ちで相手ピッチャーに立ち向かい、どんどん自分から仕掛けていく。そのほうがええかもしれへんね。ボールが前からやって来るというのは、昔と一緒なんやから。

(第3回へ続く。第1回から読む)

【プロフィール】
福本豊(ふくもと・ゆたか)/1947年、大阪府生まれ。通算1065盗塁はじめ、先頭打者本塁打43本、通算三塁打115本などの日本記録を作った。阪急ブレーブスに20年在籍し、通算打率.291。最多安打のタイトルを4回獲得している。

※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号

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