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広岡達朗氏が巨人・坂本勇人に引導「昔の人は今までのプレーができないと言って辞めた。惜しまれながら引退していく。これが巨人の伝統なんです」

NEWSポストセブン 2024年8月21日 16時15分

 プロ野球のレジェンドたちが令和の日本球界に喝を入れていく、本誌・週刊ポストの名物企画「言わずに死ねるか!」球界編の第3回は、広岡達朗氏(92)が登場。現役時代は華麗な守備で魅せる巨人軍の名ショートとして鳴らし、選手兼任コーチとしては巨人V9の礎を築いた。だからこそ、令和の巨人軍に対しては厳しい目線を向けている。【全5回の第3回。第1回から読む】

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 6月26日に坂本勇人が登録抹消されて、ファーストに回されていた岡本和真が本来のサードに戻った。それで巨人は岡本を中心に再スタートを切るのかと思ったら、7月に戻ってきた坂本を再びサードに起用した。こんなのプロの野球じゃないよ。ひとつのポジションを命がけで奪うというチーム内競争がない。そんな野球をして人が育つと阿部(慎之助)監督は思っているのだろうか。

 岡本は巨人の看板選手じゃないのか。それを今度はレフトに回した。内野手が外野を守ったら遊びです。オレなら目をつぶっていても打球を捕れるよ。これで岡本の守備がうまくなるはずがない。首脳陣が都合よく使っているだけ。岡本がキャンプで必死に特守を受けてきた意味が全くない。

 人間は生まれたら死ぬ。それと同じ自然の掟で、若い頃はいい選手でも、必ず衰える。三冠王を獲った落合(博満)がなぜユニフォームを脱いだのか。それは落合が悪いのではなく、自然の掟がそうなっているんです。それをわからずにやっているのが原(辰徳前監督)巨人の野球だった。そこから阿部がどういう形でベテランを干すか。そこが今シーズンの見どころだったはずだ。

 ところがどっこい、ベテランを干すどころかむしろどこまで頼るんだという野球をしている。坂本も若い頃はいい選手だったが、35歳を過ぎれば自然の掟で衰えてくる。もはやスタミナがない年齢なんですよ。それがわかっとらん。本人も首脳陣までもがいつまでもできると思っている。新聞も坂本が2か月ぶりのタイムリーを放ったと騒ぐ。実に情けない。

坂本は辞めればいい

 巨人のエースといわれた菅野智之がリーグ単独トップの11勝を挙げたと騒がれているが、なぜ6番手に出てくるのか。これが今の野球のすべてを物語っている。自分が一番やれるピッチャーなんだったら1番手で投げるという気迫がないと。リーグ単独1位の勝ち星といっても、一流のピッチャーと対戦したわけじゃないでしょう。

 坂本はスタミナがないから、休み休みでしか試合に出ることができない。6億円ももらっている選手がベンチで休んでいるんだから、他の選手も安心してベンチに座っていますよ。これは坂本が悪いんじゃなく、ベンチの指導者が悪い。

 昔の人は今までのプレーができないと言って辞めた。それぐらいプライドがあった。坂本も一刻も早くやめりゃいいんですよ。惜しまれながら去るという言葉を忘れているよ。今の選手はお金を大事にする。3000万円ぐらいなら道を間違えないだろうが、5億も6億ももらっていたら間違うよ。

 坂本には若い時に教えたことがあるし、十分な素質があった。その後も順調に育ったが、年齢を重ねてこうなったら、言うべきことを言わないと伝統が泣く。巨人の伝統は他のチームと違って厳しいんだよ。どんどん新しい選手が出てきて、世代交代をしていく。そして惜しまれながら引退していく。これが巨人の伝統なんです。

 それを使い勝手のいい選手を使い、他球団で育った選手を獲って喜ぶ。バカじゃないか。それでも足りないと外国人選手を獲る。13年間お世話になった巨人だが、最近の巨人を見ていて情けないよ。

(第4回へ続く。第1回から読む)

【プロフィール】
広岡達朗(ひろおか・たつろう)/1932年、広島県生まれ。華麗な守備で現役時代は長嶋茂雄氏と球界屈指の三遊間を築く。監督としては万年Bクラスだったヤクルトと西武を率いて3度の日本一に導いている。

※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号

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