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《自慰行為強要の凄惨いじめ》都内私立中学生が被害「校内で拡散された動画」“萎えすぎ”“手止めんな”の暴言

NEWSポストセブン 2024年9月2日 11時13分

「手、止めんなや!」「学校でライブ配信したらおもろいね」──周囲に囃し立てられる中、ベッドに横たわって自慰行為をする少年。問題の動画は、2022年11月に行われた「宝仙学園 順天堂大学系属理数インター中学校」の修学旅行で撮影されたものだ。【前後編の前編】

 動画に映る少年・Aくんは当時、中学3年生。いじめに対して学校側は満足な対応をしてくれず、精神的苦痛により心的外傷後ストレス障害 (PTSD)と診断されたという。宝仙学園とは異なる高校に進学せざるをえなくなったAくんは、「僕のような思いをする子どもがもう出ないようにしてほしい」と真摯な表情で語った──。

 東京・中野坂上にある私立学校「宝仙学園中学校 順天堂大学系属理数インター中学校」は、前身となる女学校を含めると設立100周年に迫る「学校法人宝仙学園」を母体としている。2007年4月に「『21世紀の世界標準』を身につけたグローバルリーダーの育成」をコンセプトに新設されたコースで、海外研修をはじめとしたグローバル教育に力を入れている。学校法人順天堂と学校法人宝仙学園の系属校協定により、2024年春、「宝仙学園中学校 共学部理数インター」から「宝仙学園中学校 順天堂大学系属理数インター中学校」へと名称が変更された。

 Aくんは2020年春に同学校に入学した。中学2年生の6月頃から、複数の男子生徒に嫌がらせを受けるようになったという。

「筆箱や体操着、上履きといった持ち物が失くなるようになりました。筆箱が見つかったのは別のクラスの教室の柱の影だったので、うっかり自分が失くしたとは思えません。また、同級生の男子に階段から突き落とされそうになったり、殴られてアザができたこともあります。局部を蹴られたときは保健室に行って授業を休むほど痛かったです。あとで聞いたところ、加害生徒のひとりが気になっている女子と僕が友人同士だったことがいじめに繋がっていったようです。

 先生には何度も相談しましたが、『長いからもっと短く話せ』『あとで聞く』と返されるなど、満足のいく対応はしてもらえませんでした。殴られたことについても『仲が悪い相手に近づいたのがいけない。どっちもどっち』と言われました。僕は一度も彼に手を出したことはないし、彼のほうから僕に近づいてきたんですが……」(Aくん、以下同)

 事態を重く見たAくんの母親は、2022年6月に担任教師にメールを送った。アザの写真も添付した上で、紛失物のことなど息子がいじめにあっている可能性について共有した。

 しかし当該メールに担任からの返信はないまま、2022年11月、沖縄への修学旅行中に“事件”は起きた。修学旅行2日目の夜、複数の男子生徒がAくんの部屋にやってきた。自慰をするように言われて、Aくんも「さすがにそれは……」としぶったものの、結局押し切られてしまった。自慰をしている最中、撮影されていることに気づき、「さすがにヤバい。やめろ」と頼んだが、その言葉は聞き入れてもらえなかった。

「僕は小学校のときにもいじめられていたせいで、嫌な思いをしても無理やり笑ったり盛り上げようとしてしまうところがあります。みんなに拒否され、孤立することがすごく怖い。

 だから自慰を撮られた翌朝も『後ろいじりたい』と自分のお尻を触る悪ふざけをしてしまいました。そのときも動画で撮影されました」

 孤立することへの恐怖から、嫌なことがあっても断りきれず、その場を盛り上げようとしてしまう傾向のあるAくん。しかし、そんな彼も看過できない方向へと事態は進んでいった。自慰を撮影した動画が学校内で拡散されたのだ。Aくんが把握しているだけでも数十人の生徒が当該動画を視聴した状況になり、そのなかには女子生徒もいた。

 動画については教師も把握するところとなり、修学旅行から数日後、Aくんは担任に事情を聞かれた。しかし、加害生徒に「本当のことを言ったら、どうなるかわかるだろうな」とプレッシャーをかけられていたせいで、思わず「ノリでやりました」と答えてしまった。そして翌週の月曜日、「Aくんのことで話があるので今日中に学校に来てほしい」と連絡が来て、Aくんの父親と担任教師、学年主任、教頭で話し合いの場を持つことになった。

 どんな話し合いが行われたのか。Aくんの父が語る。

「仕事を早く切り上げて19時頃に学校に行くと、担任に『Aくんが沖縄旅行の夜に自慰行為をした。翌朝もお尻に指を入れた。そういった動画が校内で拡散されています。前代未聞のことです』と説明されました。また、『19人の生徒が動画を所持していましたが、それらは削除させました』という報告もされました。

 息子(A)からは何も聞かされていなかったので、全てが寝耳に水です。まずは息子(A)に事実確認をしなければと感じました。本人に話を聞いたところ、『ノリでやった』と言っていましたが、何かを隠しているような印象でした」(Aくんの父)

 前出の通り、かねてより両親はAくんがいじめにあっているのではないかと心配していた。真実が知りたい──。息子のために両親は動き始めた。担任は“生徒たちに動画は消させた”と言っていたが、実際は全て削除されておらず、その気になればすぐに入手することができた。「萎えすぎ」「手止めんな」といった暴言をぶつけられながら自慰をする息子の映像を見て、両親は絶句するしかなかった。

 息子が自らこんなことをするはずがない。それに、たとえ悪ふざけで自慰行為をしたとしても、動画を撮られて拡散されることまで喜ぶ人間がいるだろうか。両親はそう考えたが、学校側はあくまで“Aくんの問題行動”として捉えている様子だったという。

 そして、11月下旬から約2か月間の別室指導が始まった。この別室指導が、Aくんの精神を本格的に追い詰めていった。

(後編へ続く)

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