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一般人とは違うヤクザの世界の“誹謗中傷” プラカードで“老害”非難、ラップで組長ディスって破門 怪文書では「古めかしい言葉」も

NEWSポストセブン 2024年8月25日 16時15分

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、言葉遣いが一般人とはまったく違う暴力団関係者による誹謗中傷について。

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 世界中のあちこちで、パリオリンピックの出場選手に対し、SNSやインターネット上での誹謗中傷が相次いだ。出場を辞退した選手、メダルの期待を一身に受けながら勝てなかった選手、ここぞという時にミスをしてしまいチームを勝利に導けなかった選手、さらにその胸にメダルをかけた選手たちにも容赦のない中傷が浴びせられた。今回のオリンピックは、これまでより疑惑の判定が多かったこともあり、選手だけでなく審判にも批判が集まったのだ。収まらない誹謗中傷に、大会組織委員会や日本オリンピック委員会は、異例の声明を出す事態となった。

「ヤクザの世界でも誹謗中傷はけっこうある。どこかの組員だろうと思われるXの投稿はよく見るが、どれも表にはほとんど出てこないだけだ」と、ある暴力団組員はいう。一般人からするとヤクザの世界は誹謗中傷だらけのような気もするが、彼らの中で誹謗中傷ととらえるものがあるようだ。

 数年前、渋谷のビルのガラスに一枚の大きな張り紙がされたことがある。書かれていたのは三本杉一家の総長(当時、以下同)について「老害ジジイ」と中傷する文字。三本杉一家といえば、指定暴力団・稲川会の二次団体として業界では名の通っていた組である。その組の総長を「老害ジジイ」と名指ししたのだ。当時の渋谷では、ヤクザと何らかの関係があると思われる若者たちが、総長への非難を書いたプラカードを持って叫んでいたともいわれている。

 事の発端は総長が引き継ぎの際、上部組織である稲川会から毎月支給されていた経費を使い込んでいたことが発覚、その上、他の組織に多額の借金をしていたことが判明したことにある。組は二次団体から降格、その後、稲川会の他の組に加入、総長は令和3年9月に引退となった。各組織に出された引退御通知には、一身上の都合により組織発展に差し障りがあってはいけないという申し出により、「引退」致しましたという旨が書かれていた。

 2016年には、「敵刺(テキサス)」という名前でラッパー兼YouTuberとして活動していた指定暴力団・住吉会系組員が、指定暴力団・六代目山口組の司忍組長をラップでディスり、ヤクザ界隈で話題になったことがある。ことがある。「司(つかさど)れ。忍べないならもう引退。親変えられるなら盃はただの飲み会」と、山口組の分裂で子分らに盃を返されたことを痛烈に皮肉ったのだ。

怪文書に見る誹謗中傷の“言葉遣い”

 山口組分裂時、傘下組織の組員らからは、ラップでディスられたような内容の愚痴を聞いたりもしたが、だからといって大っぴらに言う者はいなかった。それを下っ端の組員が日本最大勢力を誇る暴力団の組長を揶揄したのだ。住吉会としても見ぬ振りはできなかったのだろう、この組員は破門となった。しかしこの組員はその後、組に復帰。2022年2月に覚せい剤取締法違反で逮捕され、現在服役中だ。

 同じような中傷が大物政治家や党の派閥の長に行われたなら、メディアも報道するところだろうが、そこはヤクザだ。メディアが取り上げることもなければ、業界と関わりのない一般人が知る由もない。ヤクザの組長や幹部に対して誹謗中傷が起きるのは、敵対する組同士のいざこざだけでなく、利権や金が絡んでいる場合が多い。だが下手に大っぴらに非難したのがわかればどこで制裁されるか、自分たちの身さえ危うくなる。だから出所不明の怪文書が出回るのだろう。

 二言目には「てめぇ、このヤロー」と怒鳴り、「殺すぞ」と脅すイメージが強いヤクザなら、誹謗中傷も辛辣で感情がむき出しのストレートなコメントが多いのではと想像するが、SNSなどで目にする投稿や怪文書には、「天誅が下る」「盗賊団」「外道」「極道にあらず」といった古めかしい表現や、覚せい剤依存を引き合いに「ポン中」や「ポン引き」といった言葉が並ぶ。

 そこにオリンピックの選手たちに浴びせられたという「ゴミ」「クズ」「クソ」「バカ」「死ね」「人間やめろ」「消えろ」という言葉は、ほとんど見ない。前述した組員は「そんなの毎日、上の者から言われ、子分らに言っていることだ。日常会話みたいなもんで珍しくもなんともない。気にしていたらヤクザとしてやっていけない。まぁ知らないヤツに言われたらキレるかもな」という。パワハラありきのヤクザ世界は誹謗中傷も一般人とは違う。古めかしい言葉が並ぶわけがわかった気がする。

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