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草刈正雄(71)が語るこれからの俳優人生「いい意味で期待を裏切って、もっとよくする、おもしろくする。そうして過ごしていきたい」

NEWSポストセブン 2024年8月28日 6時59分

 二枚目から悪役、コミカルな役まで、さまざまな役を演じる草刈正雄(71才)。17才でモデルデビューしてから半世紀以上も活躍し続ける草刈だが、プライベートではどんな顔を持っているのだろうか──。【全4回の第4回。第1回から読む】

普段はぐうたらでウジウジで……

 仕事では強面の武将など、強そうな男を頻繁に演じる草刈だが、プライベートでの“素”は真逆だという。

「家にいるときはボーッとしていますよ。本当に何もしません。ぐうたらで、いつもウジウジと後ろ向きで、心配ばかりしています。つい最近も、目の治療が決まったのですが、それが怖くて怖くて、落ち込んでいるくらいです。逆に妻は前向きで明るい人だから、“もう少し何事も楽しめばいいのに”なんて、よく言われます」(草刈、以下「」内同)

 結婚から36年。家のこと、子育てのこと、すべてを妻に任せてきたという。2010年に77才で他界した母親とは15年ほど同居。咽頭がんや乳がんを患った母に寄り添って看病してくれたのも妻だった。

「女優だった妻とは『華麗なる刑事』の共演をきっかけに12年の交際を経て1988年、36才のときに結婚しました。仕事以外は何もせず、よき夫にもよき父親にもなれなかったぼくを支えてくれたことには感謝しかありません」

 そんな妻は草刈の作品をほとんど見ないという。お互いに干渉しないのが円満の秘訣なのだとか。

 しかし2023年、草刈がNHKのドキュメンタリー番組『ファミリーヒストリー』に出演したときは、

「よかったね」

 と、声をかけてくれたという。

「もう少し、涙を流すなどして共感してほしかったけど……」

 と草刈は苦笑するが、ここぞというときにはしっかり夫の活躍を見て支えあう、夫婦の絆が垣間見えた。

 そもそもこの番組は、各界で活躍する人々の父母や先祖がいかに生き抜いてきたかを国内外や関連人物へ取材するというドキュメンタリー。草刈が出演した回の取材で明らかになったのが、亡くなったと聞いていたアメリカ人の父親が実は生きており、母国で別の家庭を築いていたことだった。

「あの番組は、母の生前からお話をいただいていたのですが、母からは“先方に迷惑がかかるかもしれないからやめた方がいい”と止められていました。母の死後、再度お話をいただき、迷っていたところで娘たちに背中を押され、決意しました。ところが、NHKが調べてくださっても、半年ほど音沙汰がない。企画自体がボツになりかけたとき、ちょうど父方の親族もぼくを捜してくれていて、奇跡的にタイミングが合い、父方の親族に会えることになったんです。ぼくやスタッフにとっても意外な展開が続き、本気で驚いたり涙を流したりの連続でした」

 番組では、人前をはばからず涙を流す草刈が映され、視聴者の共感を呼んだ。このときの草刈こそまさに“素”の彼だったといえる。

 父方の親族とは番組後も手紙のやり取りを続けているという。

常に期待と限界を超え続け、あと10年は仕事を続けたい

 妻や娘たちにも感謝しつつ、草刈が願うのは、あと10年は仕事を続けたいということ。

「この仕事ね、やっぱり好きなんです。これほど長く続けさせてもらって、ぼくは幸せ者です」

 とはいえ今後、どんな仕事がやりたいか、と聞かれると、自主的にやりたいことは特にないという。しかし──。

「人から台本をいただいたとき、“ああ、この人はぼくに、こういうことをさせたいのか”とか“この人はぼくのことをこう思ってくれているんだ”とわかるのが楽しいんです。そして、いい意味でその期待を裏切って、もっとよくする、もっとおもしろくする。これからもそうして過ごしていきたいですね」

 これだけのキャリアを重ねてもまだ自らを“小さい”と語る草刈。いくつになっても謙虚さを失わないからこそ、もっと何かしてやろうと努力を重ねられる。いくつになっても期待と限界を超えられるのかもしれない。

 還暦を超えて第二の役者人生が始まったという草刈なら、これからさらに進化する可能性もある。ますますの活躍を期待したい。

(了。第1回から読む)

【プロフィール】
草刈正雄(くさかり・まさお)/1952年9月5日、福岡県小倉市(現・北九州市小倉北区)生まれ。1970年、資生堂の男性化粧品のCMでモデルデビュー。1974年、『卑弥呼』で映画デビューし、『復活の日』や『汚れた英雄』などの話題作で主演を務める。以後、俳優、歌手、司会者として、活躍の場を広げる。NHK大河ドラマ『真田丸』(2016年)、NHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年)でも話題に。2009年から、教養バラエティー番組『美の壺』(NHK BSプレミアム)でナビゲーターを務める。

取材・文/上村久留美 撮影/政川慎治

※女性セブン2024年9月5日号

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