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《サンシャイン池崎の企画が人気に》『みんなの動物園』が保護猫の企画ばかりでも“感動ポルノ”と言われない理由

NEWSポストセブン 2024年8月24日 7時15分

 動物を取り上げる番組で人気を博しているのが、『嗚呼!!みんなの動物園』(日本テレビ系)だ。保護猫をテーマにした企画を放送し、話題を集めている。その人気の秘密、そして、保護猫というつらい境遇にある動物を取り上げながら、“感動ポルノ”と批判されない理由とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 24日夜、『嗚呼!!みんなの動物園』(日本テレビ系)の2時間SPが放送されます。その内容は「預かり生活276日さよなら佐吉…涙の最終回」。これはサンシャイン池崎さんが保護猫預かりのボランティアを行う企画で、「元野良猫で超ビビりの保護猫・佐吉が約9か月の日々を経て譲渡会にデビューする」というシリーズ最終回を迎えます。

「涙の最終回」と掲げられているように感動の結末が確定的であり、視聴者はそれをわかっていて良い意味での予定調和を楽しむ企画ですが、特筆すべきは同番組がほぼ「保護猫」の番組になっていること。

サンシャイン池崎さんのシリーズが6作目であるほか、ヨネダ2000の愛ちゃん、りんごちゃん、アンゴラ村長、ティモンディ・前田裕太さんら芸人の保護猫ボランティアが常にメイン企画として放送されています。それ以外では、時折サブで保護犬の預かりボランティアやトリミング企画が放送されることも含め、事実上の保護猫・保護犬番組と言っていいでしょう。

さらに同番組は31日から放送される『24時間テレビ47』とのコラボを発表済み。MC・相葉雅紀さんとBTS・JINさんの保護犬トリミング企画が予定されているほか、すでにチャリティーランナーを務めるやす子さんも『みんなの動物園』に出演しました。

『みんなの動物園』と『24時間テレビ』は「難しい境遇にいる人や猫・犬を救い、感動の涙を誘う」という主な構成・演出が共通しているためコラボの相性がいいのでしょう。ただ、『24時間テレビ』は2010年代後半から「勝手に『かわいそう』などのレッテルを貼って感動を誘うコンテンツとして消費する“感動ポルノ”」などと批判されることが定番化していました。一方で『みんなの動物園』はそう言われることがほとんどありません。

 保護猫・犬の企画ばかりの『みんなの動物園』が“感動ポルノ”と批判されない理由は何なのでしょうか。

愛情や努力と「お手伝い」のスタンス

 もはや芸人というより「猫タレント」というイメージの強い池崎さんは保護猫を飼っているほか関連団体への寄付を行うなど、猫への愛情は申し分なし。また、番組での保護猫預かりボランティアも、苦戦しながら徐々に距離を縮めていく姿を見せ、「保護猫をコンテンツとして消費する」という印象はありません。愛ちゃんも「キャットスペシャリスト」の資格を持つなど、猫に対する出演者の愛情がしっかり伝わっていることがポイントの1つでしょう。

 一方の制作サイドも保護猫・犬の企画をしっかり時間をかけたドキュメントとして放送。長期にわたって密着し、大量の映像を編集して保護活動の本質的なところを伝えようという姿勢を見せています。預かりボランティアの企画は出演者の負担が大きい構成・演出ですが、スタッフも地道な努力を重ねていることが視聴者にも伝わっているのでしょう。

 さらに、預かりボランティアをするタレントに芸人をキャスティングしていることも批判を受けにくい要素の1つ。猫・犬への愛情をベースにしながらも、ほどよく笑いを加えることでシリアスなムードになりづらく、保護活動そのものへのイメージアップに貢献しています。時にテレビは制作姿勢が「ごう慢」などと批判されますが、『みんなの動物園』は「保護活動のお手伝い」というわきまえた立ち位置で制作しているのでしょう。

“感動ポルノ”と批判されるケースで多いのは「勝手に『かわいそう』などのレッテルを貼る」というケースが多いだけに、「動物のかわいさを見てもらいながら明るく楽しい映像にしていこう」という番組のスタンスは正しいように見えます。

保護企画に過剰な構成・演出は不要

 そしてもう1つ重要なのは、『みんなの動物園』が積極的に保護活動への支援を求めているわけではないこと。

たとえば、積極的に譲渡希望者を集め、募金などを求めるなどのシーンはなく、保護活動全体に強い影響を及ぼすようなことは避けているように見えます。譲渡会にたくさんの人が集まればいいというわけではないため、「何百人も集まった」などと大きな数をアピールしてドラマティックに見せようとしすぎることはありません。

 それでも警戒心が強かったところから、少しずつ人になれてかわいい姿を見せ、譲渡会での出会いを経て、優しい飼い主に迎えられる。そして、預かりボランティアとの別れ……という流れは十分に感動を誘うものがあり、そもそも過剰な構成・演出は不要なのでしょう。

また、『みんなの動物園』がメインでフィーチャーしている猫は飼育数で犬を大きく上回るなど、いくらかの視聴率対策も見えますが、特に問題はなさそうです。

最後に番組全体にふれると、保護猫・犬以外の企画は、まれに「カルガモのお引っ越しに密着」「ペット探偵に密着!」などがある程度。そのため、「“動物園”というタイトルが合っていない」という声がしばしばあがりますが、保護猫・犬メインの放送は「テレビに驚きや刺激より優しさや温もりを求める」という人が増えた令和の世に合っているのかもしれません。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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