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コスト削減にこだわるコンビニジム「chocoZAP」がなぜ? 1か月に及ぶ100人規模の海外出張に踏み切った理由

NEWSポストセブン 2024年9月5日 11時14分

「月額2980円(税別)」という低価格を武器にして一気に会員数を増やしジム業界のトップに躍り出た、RIZAPが展開する初心者向けコンビニジム「chocoZAP」。その価格を維持するために、テクノロジーなどを駆使してコスト削減に向き合っている。後編では引き続き、「chocoZAP」が“異次元の低価格”をどのように実現しているのかについて探っていく。【前後編の後編。前編から読む】

「chocoZAP」は今年5月頃、大規模な海外出張を行った。選抜メンバー約100名を6チームに分けて、それぞれ3泊4日もしくは4泊5日で出張を実施したため、その期間は約1か月に及んだ。中国で開催された見本市を訪れるためだ。その期間、RIZAPグループ株式会社の代表取締役社長・瀬戸健氏も中国に滞在していたという。

 コスト削減にこだわっているはずの「chocoZAP」が、なぜ100人もの大規模な海外出張に踏み切ったのか? 同グループの執行役員である木村仁美氏は、「かかる費用以上の効果を見込んだからです」と語る。

 木村氏は、大手100円ショップを運営する企業に新卒で入社し、バイヤーとしてキャリアを培った。2017年に同グループに入社して、昨年から「chocoZAP」事業における調達業務の責任者を務めている。100円ショップ企業の経験者だけに、調達コスト削減はぴったりの仕事に見える。そんな彼女が、年初に瀬戸社長から「100人規模で海外出張に行きたい」と伝えられたときは、てっきり冗談だと思っていたという。

「あとから『あれどうなった?』と確認されて、本気だったのかと驚きました(笑)。昨年秋に少人数で中国の見本市に行ったとき、社長は大きな手応えを感じたんでしょうね。もちろんお金はかかりますが、意識の高いメンバーで行う海外出張は費用対効果が非常に高いものです。

 それに大勢で見本市に行ったほうが、『chocoZAP』に必要なものが見つかる可能性も上がります。特に若手社員は、お客様に一番近い目線を持っています。そのため社歴や年齢などは一切関係なく、全部署からメンバーをピックアップしてもらい、出張のメンバーを決めました」(木村氏、以下同)

 そうして実現した中国出張。現地スタッフとの交渉のため木村氏が各メンバーに帯同する時間は一部用意されているものの、基本的には東京ドーム30個分以上の広大なスペースで行われる見本市をそれぞれが自由に見てまわる。もちろん、参加メンバーの全員が中国語に堪能なわけではない。

 また、中国滞在中は見本市で見つけた“コスト削減に役立つ”もしくは“お客様に喜んでもらえる”アイテム3品以上を1人6分の持ち時間でプレゼンする場が設けられた。プレゼンされた品の中には、実際に一部店舗で採用されてトライアルに入っているものもある。そのひとつが、出張メンバー最年少、23歳の女性社員が提案した電子ピアノだ。

「防音の問題で楽器演奏を諦めている人は大勢います。自身もピアノに馴染みのある若手社員が『店舗にはすでにカラオケ用の防音設備はある状態なので、ピアノを置いてみてもいいんじゃないか』と提案しました。プレゼンするのは人生初ということで本人はとても緊張していましたが(笑)、社長のゴーサインが出て、即トライアルが決まりました。

 これから一部店舗で導入していきますが、お客様の利用率などのデータ次第では、ほかの店舗にも拡大していく方針です」

 プレゼンの場で木村氏がうなった品には、「chocoZAP」事業責任者が見つけたビニール手袋があるいう。

「フレンドリー会員(料金割引のかわりに店舗運営のサポートを一部担当する会員のこと)の方々には、清掃作業などのときにビニール手袋を使っていただいています。些細な品ではありますが、全店舗で年間を通じて使うとなると、そこにかかるコストはばかにできません。

 事業責任者たちがビニール手袋や布巾を実際に触ってみながら、『厚みはどうだ、大きさはどうだ、荷姿はどうする』などと真剣に検討しているのを見て、自分も良い刺激を受けました。

 提供するサービス内容など顧客満足度にダイレクトに関わってくる部分が“幹”だとすれば、ビニール手袋といった備品は“枝葉”の部分かもしれません。ですが、こういう枝葉を強くすることで、幹も強くなっていくのだと再確認しました」

 言葉が通じない場で実際に動きまわり、「これだ!」と感じる1円でも安い品を探し出して、社長に直々にプレゼンする。過酷ではあるが、こうした経験はビジネスパーソンとして貴重なものと言えるだろう。

「初めはオンラインを使ってもう少し小さな規模で研修を行う案もあったのですが、実際に手足を動かさないと、どうしても自分ごとになりにくいんですよね。今回の海外出張で使ったコストは、将来的に大きなリターンに繋がると確信しています」

 100円ショップ出身の執行役員のもと行われた大規模な海外出張。「1円でも安い品を探し出す」という小さな努力の積み重ねが“異次元の低価格”を実現させる、ひとつの要因になっているのだろう。

(了。前編から読む)

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