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自民党内屈指の集金力を持つ小泉進次郎氏、政治資金パーティーで年8600万円の収入も報告書に購入者の記載なし 問題視される「20万円以下は公表義務なし」ルール

NEWSポストセブン 2024年8月30日 7時15分

 世論調査では「次の自民党総裁」候補のなかで先頭集団を走る小泉進次郎・元環境相。党内では派閥の裏金問題で失墜した信頼回復のための“新たな顔”として期待が高まっているが、そんな重責が担えるのか。同氏の政治資金を徹底調査して、浮かび上がってきた実像とは――。

3年間とも収支報告書に購入者の記載ゼロ

 一気に自民党総裁選の“本命”となった小泉進次郎氏は、ライバルたちの出馬表明を尻目に、「最も効果的な会見のタイミングを計算した」(支持派議員)とされる。議員在職15年の節目となる8月30日の予定だった会見は台風で9月6日に延期したが、父・純一郎氏のように出馬から一気呵成に旋風を巻き起こすつもりのようだ。

 その進次郎氏がアピールしてきたのが「改革派の旗手」としての姿だ。安倍派の裏金問題に対していち早く「派閥はやめるべき」とぶち上げた。

 裏金問題の対策づくりで設置された自民党刷新本部のメンバーとなるや、「(派閥が)パーティーをやってお金を集めて配る。内閣や党に人事を要求する。そういうことに国民は嫌悪感を持つ」と派閥パーティー禁止を主張。同本部の中間とりまとめ(1月25日)は、〈政治資金の見える化をはかる〉〈政治資金パーティー等の更なる適正化について検討を進めていく〉と党所属議員の政治資金の透明性向上を盛り込んだ。

 改革を訴えてきたのは間違いない。

 だが、進次郎氏自身の政治資金収支報告書を見ると、ある疑問が浮かび上がった。

 党内屈指の集金力を誇る進次郎氏は2022年に12回のパーティーを開催し、約8600万円の収入を得ている。その一方、進次郎氏の収支報告書では2020~2022年の3年間ともパーティー券の購入者(企業・団体を含む)の記載がない。誰から資金提供を受けたか全くわからないのだ。

 これは自民党有力議員のなかでも特異だ。

 本誌・週刊ポストは自民党の全議員の2022年分の政治資金収支報告書を検証したが、パーティー収入が進次郎氏と同水準の約8500万円ある林芳正・官房長官の収支報告書には延べ11(548万円分)の購入者が、同じく約8800万円の遠藤利明・前総務会長の場合は延べ38(1567万円分)の購入者の記載がある。

 自民党議員でパーティー収入が多い上位50人のうち、購入者の記載が0だった議員は計11人(別掲表参照)いるが、収入額が最も多かったのが進次郎氏だ。

「20万円返金報告」の意味

 公表状況に違いが出るのは、現行の政治資金規正法の規定によるものだ。

 同法は、政治資金パーティー1回につき「20万円を超える支払いを受けた者」の住所・氏名を収支報告書に記載しなければならないと定めている。購入者には企業も含まれ、前述の林氏や遠藤氏の収支報告書でも企業の購入者の記載が目立つ。

 進次郎氏のパーティー券を購入したのが個人ばかりというわけでもない。そのことは、進次郎氏の資金管理団体「泉進会」が2021年1月に計画していたパーティーをコロナ禍で中止した際の記載でわかる。政治資金収支報告書では、20万円以下のパーティー券購入者は公表しなくていいが、「返金した場合」は記載しなければならず、この時の泉進会は8社に合計70万円を返金している。そのうち2社が公表基準ギリギリの20万円のパーティー券を購入していた。

 1社は関東の大手スーパー「ヤオコー」だ。同社は「日本スーパーマーケット協会の会長会社として、外国人技能実習生や年収の壁問題などの現場での実態をご理解いただく機会と思い購入した。金額に関しましては、過度にならないよう20万円までの範囲内で社内で一定額を決めて購入しております」(広報担当)と文書回答。もう1社の東京で医療用機器の卸売などを手がける三荘企業は取材に応じなかった。

 政治資金パーティーをめぐっては、安倍派のように収入の一部を記載せずに裏金として議員に配れば「違法」であり、本誌が報じた岸田首相の総理就任パーティー【※注】のように任意団体の主催にして政治資金収支報告書に収支を記載しないのは「脱法」と言える。

【※注/2022年6月に岸田首相の地元・広島で開催された「内閣総理大臣就任を祝う会」が、実質的に岸田事務所の仕切りで運営された資金集めパーティーだったにもかかわらず、形式的に任意団体の主催にし、岸田首相の政治資金収支報告書に収支を記載しない“闇パーティー”としていた疑惑】

 それに対し、進次郎氏の場合は合法ではある。

 ただ、この「20万円以下は公表義務なし」というルール自体が、政治資金の透明性を低め、ブラックボックス化する緩い基準として問題視されてきた。政治資金研究の第一人者である岩井奉信・日本大学名誉教授はこう指摘する。

「20万円以下は公表義務がないため、政治資金パーティーの収入が正確に報告されているかを外部の者がチェックできない。この緩い公表基準は、派閥がパーティー収入を少なく偽って裏金とすることを容易にするなど、政治資金規正法の“抜け道”に使われてきた。たとえば、40万円のパーティー券を購入してもらったとしても、20万円ずつ別名義の購入にすれば公表せずに済み、収支報告書に載らないから外部からはチェックできません」

 パーティー券購入を公表されたくない企業や個人にとっても都合がよく、パーティー券を売りたい自民党議員の間ではこのルールを温存する動きもあったが、日本維新の会と公明党が公表基準を「1回5万円超」に引き下げるべきと主張。先の国会で政治資金規正法が改正された経緯がある。

 政治とカネの改革は、政治家に自らの政治資金の透明度を高める姿勢や覚悟を問われる。その点、無派閥の進次郎氏は、派閥パーティー禁止を声高に訴える一方で、前述の党刷新本部の中間取りまとめでも、「政治資金パーティーの公表基準」に言及はなかった。

オンライン研修会で1500万円

「泉進会」がコロナ禍の2021年に開催したオンライン研修会の問題もある。

 この年、政治資金を所管する総務省は「オンライン形式は政治資金パーティーではない」との見解を出した。そのため、オンライン研修会は政治資金規正法のパーティー規制対象外の「その他事業」とされ、1回20万円超の支払いを受けても公表義務がない。

 進次郎氏も2021年にオンライン研修会を4回開催。計1528万円の収入を得ていたが、政治資金収支報告書の収入欄には各回の収入総額と開催月だけが記載され、会費も参加人数もわからなかった。

 小泉進次郎事務所に聞くと、開催日と時間(各1時間)、1回目は会費2万円、2回目以降は1万円で、総務省に相談して政治資金収支報告書で報告したことを文書で説明したうえで、こう書かれていた。

〈現行の規制を遵守していることはもちろん、新たな形態のものについても監督官庁などに事前に相談するなどした上で、指導に基づいて報告などを行っているにも関わらず、これを「抜け道」と表現し、不当なことを行っている印象を与える記事となる場合には、名誉毀損に該当する〉

 だが、進次郎氏と同様に2021年にオンライン勉強会を4回開き、収支報告書に「その他の事業」と記載していた武見敬三・厚労相は今年1月のBS番組で「違和感はあったが、それしか方法がなかった。法改正しなきゃいけない」と述べ、国会でも「法の穴だ」と追及された。それでも進次郎氏の場合、法改正すべきとの認識はなく、問題視されようとも現行のルールを守ってさえいればいいという姿勢が窺える。

 掲載の表の通り、パーティー券購入者の記載がゼロの議員には、進次郎氏の後見人の菅義偉・元首相や、進次郎氏と当選同期で「四志の会」(※2009年8月衆院選で初当選した同期4人で結成されたグループ。メンバーは、伊東良孝、小泉進次郎、齋藤健、橘慶一郎の各氏)の盟友の齋藤健・経産相の名前もある。

 前出・岩井氏が言う。

「政治資金をガラス張りにして検証可能にするのが趣旨である政治資金規正法には、20万円以下のパーティー券購入者を公表してはいけないとの規定はない。政治とカネをめぐる不信を払拭するつもりがあるなら、20万円以下の購入者もすべて公表し、率先して透明化するのがベストではないか」

 進次郎氏はそうした本気を示せる政治家なのか。

※週刊ポスト2024年9月13日号

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