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自民党総裁選出馬で一躍“時の人”小林鷹之・前経済安保相 豊富な資金力の裏に財務省元次官や有力OBからの支援

NEWSポストセブン 2024年8月31日 7時15分

 無名の議員から自民党総裁選出馬で一躍“時の人”となったのがコバホークこと小林鷹之・前経済安保相だ。「新しい自民党」をアピールするが、彼を支えているのは岸田政権と同じ面々ではないかという疑念が拭えない。

 衆院当選4回の49歳。最有力候補の小泉進次郎氏のライバルと見られ、党内では「決選投票が小泉進次郎vs小林鷹之の40代KK対決になれば盛り上がる」(若手議員)と期待が高まっている。

2022年の収入は2020年から倍増

 小林氏は財務省キャリア官僚出身のエリートだが、出馬会見で「普通のサラリーマン家庭で育った」と強調した。しかし、資金力を見ると決して「普通」とは言えない。

 小林氏の政党支部と政治資金管理団体「鷹之政経フォーラム」の政治資金収支報告書によると、2022年の政治資金の繰越金は合計約1億2000万円以上にのぼる。

 とくに2021年、当選3回で岸田内閣の経済安全保障担当相に抜擢されると急速に集金力を増やし、党本部からの交付金を除いた2022年の収入は6912万円と、2020年に比べて倍増した。

 その小林氏の支援者には、複数の財務省有力OBがいた。

 個人献金の金額が突出しているのが小手川大助氏だ。理財局次長、IMF(国際通貨基金)日本代表理事などを歴任し、現在は複数の企業の社外取締役などを務めている。

 小林氏は財務官僚時代、理財局総務課課長補佐を務めたが、当時、上司の理財局次長だったのが小手川氏だ。小手川氏は2007年にIMF理事に就任してワシントンに赴任したが、同じ年、小林氏も在米日本大使館の二等書記官としてワシントンに赴任。大使館の財務担当としてIMFの仕事をサポートする立場にあった。

 小手川氏が退官した後も、2人の関係は続いた。

 2022年9月、「株式会社安全保障産業強化機構」という会社が設立され、翌年1月に小手川氏は同社の会長に就任している。同社の取締役で、都内のコンサルタント会社社長の松本洋氏は、設立の経緯をこう話した。

「近年、ドローン技術など軍と民のデュアルで日本が中国などに後れを取っている分野があるが、もともとは日本の技術で、日本メーカーのエンジニアが破格の条件で中国に引き抜かれ、技術流出した結果です。安全保障産業強化機構はそれを防止し、日本の技術を守るために立ち上げたファンド。小手川君とは東大法学部時代からの友人で親しくしている。私とは問題意識を共有していて、会長をお願いしたのです」

 小林氏も会社設立を歓迎したという。

「小林さんは小手川君が財務省時代に上司と部下という関係で、『私が可愛がっている政治家がいるから』と紹介された。小手川君には人を見る目があり、彼が優秀な人材だと認めたのが小林さんなのです。民間のファンドですから、政府から何か支援を受けるということはありませんが、会社を設立してから、私と小手川君、小林さんで会合し、会社設立を報告したら、小林さんは『おお、いいじゃない』と歓迎してくれました」(同前)

 小手川氏に寄附の理由や小林氏との関係について尋ねると、こう答えた。

「小林さんとは、(財務省時代に)一緒に働いていた。その彼が、財務省を辞めて政治家を目指すとして、私のところに来て、本当に土下座をして、支援をしてほしいとお願いしてきた。それから月に25万円を献金している。身近にいた人から助けを求められたから出しただけで、何も見返りなどを求めているわけではないし、やましいことはない」

消費増税派の元大物次官も

 もう一人、財務省の大物OBが小林氏に寄附していた。毎年10万円、3年間で30万円を寄附しているのが丹呉泰健・元財務事務次官だ。退官後、読売新聞グループ本社監査役、安倍内閣の内閣官房参与などを務めた後、「財務省OBのドン」が就くポストとされる日本たばこ産業(JT)会長を務めた。現在も社外取締役を務める大垣共立銀行を通じて丹呉氏に質問しようとしたが、「こちらから(丹呉氏に)お繋ぎすることはできません」(広報部)との回答だった。

 財務省取材が長いジャーナリストの長谷川幸洋氏(元東京・中日新聞論説副主幹)は、「この2人の財務省OBが小林鷹之氏に献金している意味は大きい」とみる。

「丹呉氏と言えば財務省応援団として安倍政権に消費税引き上げを求める論調を取った人物。小手川氏は“財務省の広報局長”と呼ばれ、これはという記者を見つけると自分が主催するワインの会に入れて関係づくりを進め、懐柔してきた。その2人の支援を受けているということからも、小林氏が財務省直系の政治家と見ていいでしょう」

 さらに、小林氏の政党支部には、財務省の外局である国税局OBからの献金もあった。小林事務所に聞くと、「職場の先輩としてお世話になったご縁で、継続的に私の政治活動をご支援頂いています。特に見返りを求められたことはなく、頂いた献金については法令に則って適正に処理しています」と文書回答した。

 岸田政権は財務省と足並みを揃えて防衛増税など国民の負担増政策を進め、岸田首相は“増税メガネ”と揶揄された。小林氏が総裁選に勝利すれば、“財務省お抱え総理”が誕生し、財務省主導政治が続く懸念が拭えない。

 出馬会見に同席した24人の議員の顔触れを見ても、世襲議員の多さが目立つだけでなく、財務省出身の小森卓郎氏や経産省、総務省OBら官僚出身者が6人を占めた。

 自民党を刷新するには足かせが多そうに見える。

※週刊ポスト2024年9月13日号

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