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【小泉進次郎氏の総裁選出馬】「50歳までは出馬禁止」と語っていた父・純一郎氏の心境が変化した森元首相らとの会合 同席した田原総一朗氏が明かす「内幕」

NEWSポストセブン 2024年9月9日 7時12分

 過去最多となる候補者が名乗りを上げ、例を見ない大混戦になるとみられる自民党総裁選。小泉進次郎氏が有力候補に浮上した背後には、やはり「父」の存在があった。聴衆を熱狂させる演説、踏み込むタイミングを間違えない勝負勘、そして冷徹な選挙戦略───そうした政治家としての力量で周囲を圧倒した「小泉劇場」が令和の世に甦るのか。【全3回の第1回】

「50歳になるまでは総裁選に立ってはならない」

 候補者乱立の自民党総裁選の行方をじっと凝視している人物がいる。

 かつて国民の支持を完全に失い、支持率一桁まで落ち込んだ森内閣の後を受けて登場し、支持率85%へと奇跡の回復をなし遂げて“自民党の救世主”となった小泉純一郎・元首相だ。

 その純一郎氏が、息子・進次郎氏への「50歳になるまでは総裁選には立ってはならない」との戒めをあえて解き、出馬を解禁した。この恐るべき政治勘を持つ父に、何が見えたのか。

 出馬解禁までの経緯を改めて検証すると、その真意が浮かんでくる。

 純一郎氏が、息子に「50歳まで出馬禁止」を申し渡していることを明かしたのは昨年12月、山崎拓・元自民党副総裁、武部勤・元幹事長、亀井静香・元政調会長らかつて小泉政権を支えた重鎮OBたちと定期的に開いている会合の席だった。

 折しも、裏金問題で岸田内閣が窮地に追い込まれ、ポスト岸田が注目されはじめた時期だっただけに、“進次郎出馬せず”の情報は政界に衝撃を与えた。

 その後も、純一郎氏は「出るべきじゃない」と言い続けた。山崎氏がこう証言する。

「会合では基本的に昔話をしているが、総裁選があるということで進次郎の出馬にも話が及んだ。小泉は今年3月の会合でも5月の時も『出るべきじゃない』と言っていた。理由は政治経験が乏しいからということ。総裁になるのも、総裁選に出るのもまだ経験不足だということです」

 それは自身と同じ道を進もうとする息子への訓戒だったのだろう。山崎氏が続ける。

「小泉自身は若い頃から熱心に政策に取り組み、修練を積んできた。私と加藤紘一と小泉でYKKを組み、当時は経世会(竹下派)が全盛で政界を牛耳っていたなか、それに抗って党の活性化をしてきたと思う。そうやって党務や政治抗争についての経験も積んだ。小泉は当選8回までに大臣を2回やり、総裁選に3回出馬したから、3回にわたって自身の政策を取りまとめた。そんな小泉からすれば、進次郎の経験はまだ十分ではないと見えたのでしょう」

 そこで山崎氏は5月の会合には石破茂氏を呼んだのだという。

「石破は小泉内閣で防衛庁長官として初入閣した後、大臣や党三役を経験し、これまでに4回も総裁選に挑戦した。当選回数も十分。その上、野党も経験している。経験という点で問題なしです。だから小泉の前に呼んだのです。小泉は石破の総裁選出馬について、『経験・識見にプラスして運がなければ、なれないよ』とだけ述べていた」

 純一郎氏の石破氏への視線は冷めていたようだ。

出馬を「解禁」した瞬間

 そんな純一郎氏が態度を変えたのは、7月中旬に行なわれた森喜朗・元首相、中川秀直・元官房長官ら清和会(旧森派)OBとジャーナリスト・田原総一朗氏との会合だった。田原氏が語る。

「森さんと中川さんが『次は進次郎だ』と強く言うから、私が、『あなたは50歳になるまではダメだと言っているが、どうなんだ』と尋ねた。小泉は『この2人が熱心に推してくれて、本人がやるというなら、私は反対しない』と言ったんです。

 小泉が『50歳まで出るな』と言っていた最大の理由は国際情勢だと思う。日本は非常に複雑な立場にあるが、進次郎氏はそこまでの経験を積んでいないから、日本の置かれた状況をよくわかっていないんじゃないかと。50歳過ぎになれば経験が積めているだろうから、それまではやるなという意味です。だが、森さんと中川さんという信頼する2人がやるべきだというのなら、反対はしないという心境の変化でしょう」

 実は、進次郎氏はその前の6月、菅義偉・元首相、安倍派の萩生田光一・前政調会長らと会談し、総裁選について協議していた。菅氏は小泉内閣で郵政民営化を担当した小泉ブレーンの竹中平蔵・総務相の下で副大臣を務めたし、萩生田氏は派閥の元会長の森氏と関係が深い。「進次郎擁立の動きを見て、森さんがオヤジの説得に動いた」(旧安倍派議員)との見方もある。

 父のゴーサインが出ると、進次郎氏は8月10日のラジオ番組で「歩みを進めるも引くも自分で決める」と発言し、本格的な出馬準備に乗り出した。

「進次郎氏は無派閥だが、父の純一郎氏は清和会会長を務めた。森さんたちは進次郎氏を清和会の流れを汲む政治家と見ている。だから総裁選では菅さんのグループの他に、森さんや萩生田さんと関係の深い旧安倍派の議員が進次郎支持に動き、大きな勢力になっている」(同前)

 進次郎氏の支持勢力拡大には、父・純一郎氏の人脈が大きく貢献していることがわかる。

(第2回に続く)

※週刊ポスト2024年9月20・27日号

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