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【令和の小泉劇場へ】進次郞氏を待ち受ける“権力闘争の修羅場” 総選挙に勝つために「首相経験者への引退勧告」「裏金議員に刺客擁立」など大胆な戦略も

NEWSポストセブン 2024年9月11日 6時59分

 過去最多となる候補者が名乗りを上げ、例を見ない大混戦になるとみられる自民党総裁選。小泉進次郎氏が有力候補に浮上した背後には、やはり「父」である小泉純一郎・元首相の存在があった。3回目の総裁選出馬で「自民党をぶっ壊す」と宣言し、本命だった橋本龍太郎・元首相を党員票で圧倒して勝利した純一郎氏。その政治家としての資質は、進次郎氏に受け継がれているのだろうか。【全3回の第3回。第1回から読む】

常道を超えた判断

 小泉純一郎氏の政治家としての真価は、首相に就任してからより強く発揮されたと言ってもいい。

 2003年総選挙では、自民党の比例代表の「終身1位」を保障されていた中曽根康弘・元首相と定年制の例外とされていた宮沢喜一・元首相を強引に引退させることで「世代交代」を印象付け、2005年の郵政解散では、「政治生命を懸ける」と自ら推進した郵政民営化法案が自民党内の造反により参院で否決されると、衆院を解散、造反議員に刺客候補を立てて“粛清”する冷酷さを見せた。

 山崎拓・元自民党副総裁氏が語る。

「これは憲政の常道を超えた判断ですよ。郵政民営化法案が否決されたのは参院で、衆院では可決されている。しかし、参院の解散は憲法で認められていないからと衆院解散に打って出た。亀井静氏などは『憲法上できるわけがない』と猛烈に反対したが、それでも踏み切った。

 この判断、決断、実行力は凄いとしか言いようがない。しかも、反対した自民党議員を公認しないで刺客候補まで立てるという前代未聞のやり方で、反対派の多くを落選させた。大胆不敵な政治決断を取れるのが、小泉の凄味だった」

 郵政造反組の1人で、刺客を立てられて出馬を断念した熊代昭彦・元自民党代議士もこう振り返る。

「参院は解散できないから、衆院解散で国民に問うというアイデアは天晴れとしか言いようがない。刺客まで立てたのはやり過ぎだと思うが、今は総理大臣としての小泉氏を評価している」

 こうした国民に芝居を見せるような純一郎氏の政治手法は「劇場型政治」と呼ばれ、この選挙で自民党は300近い議席を得て大勝する。

 純一郎氏に進次郎出馬容認を求めた中川秀直・元官房長官は当時、自民党国対委員長として郵政民営化法案成立の一翼を担い、森喜朗・元首相はこの選挙で「自民党は国家・国民のためになることならば、必要な改革を思い切って実行できる党だ」と訴えて清和会を自民党最大派閥に押し上げ、“キングメーカー”と呼ばれるようになった。

 息子の進次郎氏に期待を託すのも、父の政治家としての資質、何をやるかわからない大胆さを受け継いでいると感じているからだろう。

裏金議員に刺客を

 その純一郎氏は、進次郎氏が出馬する総裁選で具体的にどう動くのか。

 本人は、総裁選で田中真紀子氏という強力な援軍を得ていた。今回、父が進次郎氏の援軍となれば、「小泉父子劇場」が始まる。

「小泉純一郎は総裁選に絶対口出ししません。それは小泉の信念です。親が出て行って子供を応援するなんて、彼の美学ではありえない」と山崎氏は語るが、進次郎氏の出馬をめぐって父の盟友たちが動いたこと自体、総裁選の背後に純一郎氏の大きな影が見えている。

 進次郎氏もそれを感じているのではないか。

「進次郎は演説も、政治手法も小泉元総理の背中を追っているように見える。総裁選では議員票の確保は必要だが、総選挙を見据えて国民へのアピールを重視するのではないか。国民の支持、つまり選挙で票が取れるということが総裁選の議員票獲得にもつながるとわかっているはず。

 総理になった後も、大胆な解散戦略を練るでしょう。総選挙に勝つために、それこそ小泉総理の時のやり方を見習って麻生(太郎)さんら総理経験者に引退勧告を突きつけたり、裏金議員の象徴的な選挙区への刺客擁立を真剣に考えるのではないか」(自民党中堅議員)

 進次郎政権が誕生すれば、早期解散という見方は山崎氏も同じだ。

「もし進次郎が総理・総裁になるのであれば、ただちに解散総選挙を断行して親父同様に当面、自民党を救う存在になるかもしれない。しかし、仮にそうなったとしても、進次郎政権は長続きしない可能性が高い。それこそが、親父が指摘していた経験不足です」

 権力闘争の修羅場をくぐっていない進次郎氏には、政治家としての“凄味”を身につけるには、まだ経験が足りないと見ているのだ。

 進次郎氏が総裁選に勝ち、「自民党の救世主」になれるか──。それは首相経験者への引退勧告でも、刺客作戦でもいい。父のように党内から猛反発を受けてもやるのだという修羅場を覚悟し、自民党が本当に生まれ変わると国民に示すことができるかどうかにかかっている。

(了。第1回から読む)

※週刊ポスト2024年9月20・27日号

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